表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/89

第18話 現実の定義

柔らかい日差しが、王都の下町に降り注ぐ。


欠伸を漏らす俺とは対照的に、スターナは軽やかにステップを踏んで前を歩いていた。


彼女は夜空を切り取ったような紺色のスカートを揺らし、星柄の模様が煌めいていた。


「あんまりはしゃぐと転ぶぞ」


「別にはしゃいでなんていないし!」


スターナの声は普段よりずっと跳ねていた。


救出してくれたお礼に、スターナのお願いを聞くことになった俺は、大衆食堂へデートに来ていた。


「ダイチ! はやくはやく」


「そんなに急がなくても、食い物は逃げやしないよ」


「逃げるもん!」


彼女は俺の手を引っ張り、傾斜を駆け下りる。


大衆食堂に着くと、俺とスターナは向かい合うように座り、壁に貼り付けてあるメニューを眺める。


店内は下町の住民で賑わっていて活気に満ちていた。


「こんな渋い店がゲーム内にあるとは……」


「ここ、隠れた名店なんだ。

子どもの頃、お父さんによく連れられて来てたの」


メニューに走らせていたスターナの目が、微かに細くなる。


「今日は俺が父親代わりだな」

アーシャさんと結婚して、本当に義父になるのもありだな。

そんな仕様がこのゲームにあるのか分からないが。


「えー、ダイチが父親なんて嫌なんだけど……」


「なんでだよ。親父さんはどんな人だったんだ?」


「うーん。豪快で騒がしい人だった。

あと、手が大きかったの!」


「なら、俺もそうだろ?」


「うーん。ダイチは……うーん」

スターナはあからさまに言葉を濁した。


「はいはい、どうせ俺は女々しくて、なよなよしてますよ」


「そ、そんなことないってば。

ダイチの手が時々大きく感じることもあるし」


「手が大きいってのが、いまいちよくわからん」

包容力みたいなことか?


「てか、そんな話より、早く注文しようよ。

お腹、ぺこぺこ」


「そうだな。なら、俺は回鍋肉定食で」


「私はニラ豚定食!」


「ニラ豚? 聞いたことない料理だな」


「ここ、ニラ豚発祥のお店なんだよ」


実在する料理なのかな。


注文して待っている間、スターナがやたらそわそわしていた。


「どうしたんだ?」


「ううん。私、デートって初めてなんだ。

なんか、緊張するね」

彼女はツインテールを揺らしながら、目線を泳がせていた。


「俺だって初めてだよ」


スターナは俺の反応を見て、いたずらっぽく微笑む。


「確かに、ダイチってばモテなさそうだもんね」


ゲームキャラにまで言われてしまったらおしまいだ。確かに、元の世界では女の子と話す機会すらなかったが。


「ダイチ、ごめんね。

別に傷つけるつもりはなかったの」

スターナが俺の表情を察してか、両手を振り慌てふためく。


「気にしてねぇよ。

モテないのは俺が誰よりも自覚しているから」


「そんなに卑屈になんないでよ。

ダイチだっていいところたくさんあるじゃない」


「例えば?」


「そうね……」

スターナは頭を抱えて考え出した。


「そんなに捻り出さないとないのかよ」


「うっ……ええっと……変態なとことか?」


「それは、良いところなのか?」


「あと、意外と優しい」


意外とという言葉がついているだけで察するものがある。


「ねぇねぇ、逆に私の良いところが知りたい!」


「スターナのいいところね。

ツンデレ、ツインテール、あと絶壁?」


「なんか、それって属性の羅列じゃない?

それに絶壁ってどういう意味よ!」


「人によっては長所に感じるってことだよ。

すべて見方次第だろ」


「なんか、いい感じにまとめているけど、ダイチはどう思っているのよ?」


「てか、注文遅くねえか?

ゲーム内の料理って待ち時間なんてねぇだろ」


「ちょっと、露骨に話逸らさないでよ!」


騒ぐスターナを無視して周囲を見渡す。

料理を運ぼうとしているNPC同士が互いの進路を遮り、スタック……要は、詰まっている。


俺は、仕方なく御膳を受け取り、持ってくる。

香ばしい味噌の臭いと、甘い香りが食欲をそそる。


スターナのニラ豚を見ると、普通にニラと豚肉を焼いた醤油ベースの料理だ。


「それ、名前のまんまだな」


「ダイチ、一口食べる?」


「いいのか?」


「うん」

スターナはそう言って、箸でニラ豚を摘んで俺の口元へ運ぶ。


「はい、あーん!」


「ちょ、恥ずかしいって」


「えっ、いいじゃん。カップルっぽいでしょ?

ダイチの失われた青春を取り戻させてあげるわよ」


「一言余計だぞ」


俺は周囲の目が気になりながらも、ニラ豚を食べさせてもらう。


「ん! うまい!」

醤油とオイスターソースの味が口に広がり、ピリ辛な味わいが舌を刺激する。


「でしょでしょ」


何気ない日常を過ごしていると、ここがゲームの世界だと忘れてしまう。


異世界転生か転移かも分からないこの現状。

今、この世界が俺にとっての現実だ。


NPCなんて雑な表現は良くないのかもな。

彼らにとっては、ここが紛れもない現実なのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ