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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

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第17話 囚われの英雄

鉄格子の窓から夜風が吹き込んでくる。

……肌寒い。ナージャ王女は満足すると自分の寝室へと帰っていった。


傷はというか歯型は残らなかった。

ゲームキャラはイベントシーン以外では傷つかない。


不幸中の幸いではあったが、俺の心の傷は深い。


「ふぇぇぇん。誰か助けてくれー!」


我ながら情けない。

最強になっても、レベル3の王女にすら勝てない。

ゲーム世界の理不尽さを身を以て味わう羽目となった。



「ダイチ……助けに来たよー」


夢うつつ――小鳥のように囁くスターナの声で目覚める。


救いの声を頼りにスターナを探す。


「こっちこっち!」



窓枠の鉄格子にスターナが掴まっていた。


「よくここまで登ってこれたな」


「うん。私、星魔法が得意だから」


「スターナ……助けて……やっぱり、胸は無くてもスターナがいいよぉ」


「聞き捨てならないけど、今回は助けてあげる……てか、ダイチ……意外と充実してそうね」


スターナは俺の幽閉されている室内を見てこぼす。


クラフトスキルは使えたから、三星旅館の内湯とトイレ、トレーニングマシンをクラフトしていた。


「そんなことないって! 早く出してくれ!」


「これに懲りたら、他の女性に脇目を振らないでね。ダイチ、少し離れてて――宇宙そらから飛来する星々よ――我願う、世界の破滅を――我願う、世界の創まりを――我願う、再開を――」


“重力魔法・クライシスメテオ”


世界が暗くなる。巨大な隕石が天を覆い、離塔の上空に墜ちる。


「うぉ!」

激しい熱と風で、崩壊する塔から投げ出される。


“重力魔法・アストロノート”


スターナの魔法で宙に浮遊する。


魔法って、結構便利なんだな。

俺も、少しは覚えようかな。


「スターナ、ありがとう」


「別にダイチのためじゃないから……ダイチがいないと、私が……その……寂しいだけだから」


「はいはい、可愛い可愛い」

いつものツンデレ構文ね。

なんにせよ助かった。


「なによ! ダイチのばか!」


【チャプター4B-4  監禁】 クリア。


ここまでがイベントだったのか。

進行不能バグとかじゃなくてよかった。


あのまま閉じ込められていたらと思うと――ゾッとした。


ふと、視界の端にアナウンスのメッセージが流れる。


『回想が追加されました。サービスシーンをいつでも追体験できます』


むほっ! サービスシーンの回想!

なんか、エロゲみたいな仕様があるんだが。


てか、そんなシーンあったか?

バグで飛んでただけか。



真夜中――我が家に戻ったあと、スターナは俺の腕にしがみつきながら、隣で寝息を立てていた。


可愛い寝顔しやがって。


……と、そんなことよりせっかくだから回想を観ようかな。俺は、視線でメニュー操作して、回想モードを選択する。


『回想:甘い夜は蜜の味』


視界がモヤに包まれ、開けると……目の前に大きな谷間が迫っていた。


「うひょー! こんなシーンあったんだな!

このゲーム、神ゲーじゃん!」


胸の持ち主を見ようと顔を上げると……

「ひぃっ!」


ナージャ王女の八重歯が光っていた。


――ガブッ!


「ぎゃあああ!」

回想ってナージャ王女とのシーンかよ!

しかも、ただ噛みつかれるこのシーンのどこが、サービスシーンなんだよ!


俺は慌てて、メニューを操作しスキップに視線を合わせる。


『スキップ機能は未実装です。代わりに0.5倍速で回想を再体験します』


おい、ふざけんな。未実装ならそんな項目出すなよ!

それに、なんでスキップの代わりに0.5倍速なんだよ!


やっぱりこのゲームはクソゲーだ。

俺はナージャ王女の歯を昨日以上にじっくりと味わう羽目になった。


いや……味わわれているのは俺の方か?


骨に食い込む彼女の歯が少しだけ心地よく感じ始めていた。


もしかして、新たな扉が開かれようとしている?


そんな、馬鹿げた思考は再び強烈な痛みとともに打ち消されていった。

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