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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

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第16話 Bルート

【チャプター4B-4  監禁】


――絶望とともに視界が開けた。


次のストーリーへと進行したが、すべてがどうでもいい。

ナージャ王女の胸……失ったものは大きい。

もう俺は立ち直れないかもしれない。


ナージャ王女の寝室のベッドの上に取り残された俺――彼女の残した温もりが、微かに布団から伝わってくる。


「よしっ、ストーリーが進んだみたいね!

タイトルが少し不穏だけど……」

梓はそんな俺の気などつゆ知らず、ガッツポーズをしてみせる。


「なんか、甲冑の音がするぞ……」

リリムの言葉通り、鎧を着た兵士たちが俺を取り囲む。


「おい、貴様か!

ナージャ王女に狼藉を働こうとした不届き者は!」


兵士たちは一様に俺に剣を向ける。


相変わらず、スターナ、リリム、梓の三人は認識されていないみたいだ。


「だとしたら?」

とりあえずカッコつけてみせる。


「あんた、なんでそんな強気なのよ……」

スターナが呆れてため息をつく。


「俺のステータスは既に化け物クラス、

俺を倒したいなら、一個師団隊を呼んできな?」


プレイヤー名:ダイチ

レベル186

HP21632  МP123

物理7556 魔法13

防御2005 速度1753


兵士たちが剣を構えジリジリと詰め寄ってくる。


「オラァ!」

兵士の一人の鎧に一撃を見舞う。


0ダメージ……?

もしかして……。


「ストーリー上、戦闘せずにそのまま捕まるやつじゃない?」

梓が俺の代わりに説明してくれる。


「うぎゃあああ!」

俺は抵抗すら許されないまま、

一方的に、兵士たちにボコボコに殴られた。



……ここは……気づけば、どこかで幽閉されていた。

石レンガの床にシルクの寝台――一見牢屋っぽくも見えるが、それにしては作りが豪勢だな。


「ダイチ様、ようやくお目覚めになりましたか……」

冷たい石レンガの部屋に静かな声が響く。


「ナージャ王女……どうしてこんな……」

王女は無表情で、昨日と変わらない胸をしていた。


「ダイチ様が悪いんですよ。

私の誘いを断るから……」


なんか、Bルートの雲行きが怪しい。


「王女様……今からでも俺に挽回のチャンスをください。貴方が欲しいのです」


「ふふ、嬉しいことを言ってくれますわ。

でも、もうAの国王ルートに戻ることはできません」


「あ……それ言っちゃうんだ」

このゲーム……相変わらずメタ発言が多い。

あのまま王女様の誘いに乗っていたら、俺がこの国の国王になっていたのか……。


「ちなみにBルートってなんですか?」


「ふふ、飼育ルートですよ」


「飼育……?」

なんだか、嫌な予感しかしない。


助けを求めようとパーティー画面を確認するが、

俺一人になっていた。


「私が、死ぬまでダイチ様を飼い殺すルートです。

ちなみに他にも追放ルートや堕天ルート、綿菓子ルートがございます」


「あの場面で、王女様の誘いに乗る乗らない以外の選択肢があったか?」


てか、綿菓子ルートってなんだよ。

全然内容がわからねえよ。


「ダイチ様、私と一生ここで暮らしましょうね」


いや、毎日この美貌と巨乳を堪能できるのか、

悪くないかも。


そう思いつつ部屋の隅に目を向けると、白骨化した死体が三体――豪奢な服を着せられ、ガラス張りの容器に保存されていた。


「ナージャ王女……つかぬことをお伺いしますが、あの方たちは?」


俺は死体を指差す。


「ああ、わたくしの夫たちですわ。

最近は歳のせいか、あまり元気がありませんが……」


歳のせいで元気がないってか、死んでいるよね。

俺……やばくね?


「ダイチ様、お父様に少し呼ばれてまして……夜は二人きっきりで愛を育みましょうね」


「ああ、待っているよ」

俺はできる限り平静を装った。


ナージャ王女が出ていった瞬間、急いで部屋中の窓、扉を確認する。


駄目だ――どれも壊せないどころか、触れることすらできない。

本当にこのゲーム、全年齢対象なのか?

こんなホラー展開があったら子どもにはトラウマもんだぞ。


どれだけ強くなろうが、運命ストーリーには抗えないってことか。


拘束されてないのが、幸いだが……

結局、なにもできなかった。


しばらくして、ネグリジェ姿のナージャ王女が俺の部屋に戻ってくる。


死ぬようなことって何をされたんだ?

嫌な汗が背中を伝う。


「ふふ、ダイチ様ったら緊張されているのですね。可愛い♡」


緊張という名の恐怖です。

そう言いたかったが、怖くてやめた。


殺られる前にやるしかねえ。

「死ねぇ! アバズレ!」

俺はナージャ王女をベッドに押し倒し、

頭に拳を振り下ろす!


「ふふ、ダイチ様……いくら言葉責めでも、アバズレは酷いですわ」


ナージャ王女は舌で俺の拳を受け止めていた。


「ひぃ……」


俺は、とっさに彼女のステータスを確認する。


ナージャ王女

レベル3

HP56  МP563

物理23 魔法96

防御5 速度3

特殊衣装:ナージャのネグリジェ

効果:一切の物理攻撃、魔法攻撃を無効化する。


俺は絶望した。


「ダイチ様。この部屋はかつて王を幽閉した際に用いられた部屋――貴方の力はすべて封じられています」


さらに追い討ちをかけられる。

俺は……ここで死ぬのか?


「ダイチ様……私のことが本当に嫌いなのですね」


その台詞曇らせヒロインっぽくて可愛いんだけど……いや、男――大地、ここまで来たら腹を括るしかねえ。


このルートの活路を見いだしてやる。


「ナージャ王女、そんなことはありません。

貴方を俺にください」


俺は土下座をして、彼女に忠誠を誓う。


「本当ですか! 嬉しいです!」


ナージャ王女に飛びつかれ、今度は俺がベッドに押し倒される。


窓からは月明かりが差し込み、体を重ねる二人を照らした。


ナージャ王女が俺の服を脱がす。

彼女の細く冷たい指が俺の鎖骨をなぞる。


「ふふ、ダイチ様のここ……硬いですわね」


もちろん鎖骨のことだ。

大地のダイチは恐怖で縮み上がっている。


「ダイチ様……愛しております」


ナージャ王女の湿った肌が、俺に重なる。

彼女の胸から鼓動が伝う。


誰かに必要とされる。

今まで味わったことのない感覚――孤独だった俺の心をナージャ王女の愛が溶かしてくれる。


このまま、ここで朽ちるのも悪くはない……

そう思い始めていた。


ガブッ!


「ガブッ? ……いででででで!」


ナージャ王女が俺の鎖骨に思いっきり噛みつく。

甘噛じゃない。これは、本気の噛みつきだ。


「ナージャ王女、痛い、痛いです。

やめてください!」


「ふふ、最初はみんなそう言うのです。

数日もすれば、皆、受け入れ動かなくなります」


「それ……単に死んでいるだけじゃ……って痛いっ、痛いっ!」


ナージャ王女は再び噛みつき始める。

俺の体から血が伝う。


「わたくし、鎖骨フェチなんです……きゃっ、言っちゃった♡」


言っちゃった♡

じゃねえよ!


やばい、物理が最強のこの世界――痛みが尋常じゃない。


なまじ、防御力とHPが高いせいで死ぬことすらあ許されない。


王城の離れ――月夜に男の絶叫がこだまする。

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