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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

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第15話 進退

ストーリーを進めないまま一ヶ月が過ぎた。

代わりに王都に風呂が普及し、民の習慣として定着し始めていた。


風呂のクラフト費を請求して、1000万円ほど稼いだ。


加えて、住宅クラフトで狭かったアーシャさんの家を、同意のもと改築――それに伴い、冷蔵庫玄関バグは改善された。


最近、バグに当たらない気がする。

思ったよりもまともなゲームだったのか?

いや……ストーリーが飛ぶ時点で終わっているか。


改築後は、2LDK、大浴場付き……。

俺、スターナ、アーシャさん、リリムの四人で暮らしている。


人数のわりに部屋数が少ないじゃないかって?

ヒロインの誰かと添い寝するための、頭のいい作戦だ。


「ダイチ。また馬鹿なこと考えているでしょ?」


「うっ……」

物思いにふけりながらモーニングコーヒーを嗜んでいると、スターナに速攻で見抜かれてしまった。


「いや、寝室をどう分けるかなって」


「そうね……前よりは広いから助かっているんだけど……広さ的に二人ずつで分かれたらいいんじゃない?」


よし、ここまでは想定通りだ。


「みんな、ごめん。

今のクラフトスキルじゃ、この家の広さが限界だったんだ」


――嘘だ。レベルアップに伴い、

既に10LDKの豪邸を建てられるようになった。


「スターナとアーシャは、親子で一緒に寝て、

リリムとダイチが一緒に寝るのがいい!」

リリムが机に手を置き、宣言する。


「駄目だ!」「ダメよ!」


俺とスターナの目が合う。


「ダイチ……私と……」

「俺は、アーシャさんと寝たい!」


スターナが何か言おうとしたが、アーシャさんとの添い寝ポジションを手に入れるため、強引に押す。


「ダイチ……リリムと寝るのは嫌なのか?」

リリムの瞳が潤む。


「私より、ママがいいの?」

スターナもなぜか泣きそうだ。


「別にスターナとリリムのことも好きだ。

二番目と三番目に……」


……なんだ?

……一瞬で空気が凍りついた。

俺、なんかまずいこと言ったか?


ガチャ――

そんな空気を打ち破るように玄関の扉が開かれた。


「聞こえてたわよ。

女性に順位をつけるなんて、

あんた……相変わらず、最低ね」

梓が勝手に入ってきた。


「おい、不法侵入だぞ!」


「なによ、別にいいでしょ。私たちの仲じゃない」


「いつ、お前と仲良くなったんだよ」


「まだ、教室でのこと根にもっているの?

あの時は、数日閉じ込められて、イライラしてたのよ」


「そのわりに、楽しそうだった気がするが……」


「うるさいわね。

それより、ストーリーは進めないの?」


やっぱりその話か……。


「俺はもう、ストーリーは進めない。

これ以上、身近な人の死にイベを踏むのが怖い」


「二人は助けれたんでしょ?

別にいいじゃん……たかがNPCだし」


「この!」

俺は梓の胸ぐらを掴む……そして、離した。


そうだ……俺も転生当初は梓と同じ考えだった。

それが本来正しい反応なんだろう。


「私、元の世界に帰りたいの!

受験もあるし、将来の夢だって……NPC役の私じゃストーリーを進めれないから、助けてよ!」

梓の頬を涙が伝う。


「ダイチ、進めてあげようよ」

スターナが俺の服の袖を引っ張る。


スターナは何も分かっていない。

もし、クリアして元の世界に戻れたら……俺はお前たちと一生会えなくなるんだぞ。


「ダイチさん。今は進めるだけ進めて、終盤にさしかかって考えればいいじゃない」


アーシャさんは、俺を諭すように微笑む。


「はぁ……わかったよ。

リリムはそれでいいのか?」


「うむ。よくわからんが、みんながそれでいいなら、いい!」

リリムは両腕を組み、尊大な態度で返事をする。



次のストーリーってなんだっけ?

バグオラのクソなところは、あらすじもなければ、次の目的地もミニマップに表記されない。


しかも、ストーリーが飛んだせいで、会話やイベントの流れで目的地を察することもできない。


……ええっと、確かナージャ王女との添い寝イベントだったよな。


あの時は黒騎士だの死にイベントだので余裕がなかったが、今思えばナージャ王女ってかなり可愛かったよな。


しかも巨乳だ。


少しだけ期待している自分がいる。

あの時は楽しむ余裕なんてなかったから。

今回は甘い雰囲気を堪能できそうだ。


「さあ、梓行くぞ!」

俺は梓をパーティーに加えた。


「なんか、急に乗り気になっていない?

キモいわよ……」


梓から手厳しい一言が飛ぶ。



王城に入ると、ストーリー開始のテロップが視界の半分を占める。


【チャプター4-3 英雄の帰還】


視界が真っ白に染まり、ナージャ王女の姿を象っていく。


「ダイチ様……お待ちしておりました。

御身は貴方様のもの、英雄の子を私に授けてください」


「ああ、俺でよろしければ……」

ナージャ王女の絹糸のような髪を手ですく。


俺は、今度こそナージャ王女の胸に手を伸ばした。



「ふぎゅっ!」

何者かの腕が、俺の首を締め上げる。


しまった。スターナたちをパーティー解除するのを忘れていた。


スターナが俺にヘッドロックをかけ、

両手をリリムと梓が固める。


「ダイチ様……どうされたのですか?」

ナージャ王女は不思議そうに首をかしげる。


もしかして、王女には三人が見えていないのか?

パーティーメンバーがいるにも関わらず、いない体で話が進む――ストーリー上のご都合主義展開か。



「なんて力だ……」

レベルは圧倒的に俺のほうが上なのに、

三人を振りほどけない。


「ダイチ、私以外の女に触れたら許さないわよ!」

スターナが耳元で囁く。


両腕にリリムと梓が触れているのは、ノーカンなのか?

そうツッコミたかったが、首が締まって声すら出せない。


「ダイチ様……やはり他に想い人がいるのですね」

ナージャ王女が何を勘違いしたのか、ストーリーが進行し始める。


「……そうですか……残念です」


ナージャ王女は泣きながら部屋の外に出ていってしまった。


待ってくれ――ナージャ王女!

せめて……胸だけでも……触らせてくれ……!


【ナージャ王女の誘いを断ったため――Bルートへ突入しました】

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