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開始5分でサービス終了した伝説のバグゲーに転生したんだが攻略できない!  作者: 那須 儒一
第一章 バグたらけの異世界生活

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第14話 日常

アーシャさんの家に帰り、俺たちはいつも通りの日常を送っていた。


「ダイチー、リリムそろそろお家に帰りたい……」


「リリム、行かないでくれ!」

俺はリリムに抱きつき、まな板のような胸に顔をこすりつける。


「むっぎゃー、離れろー!」


「あらあら、ダイチさんどうしたのかしら?」


「ママ、ダイチってば、帰ってきてからずっとこうなのよね」


「まあ、無理もないわね。私も……スタちゃんとリリムちゃんが生きていて……本当によかった」


アーシャさんも俺たちが帰ってから、

ずっとこの調子だ。


「アーシャさん。俺がベッドで慰めてあげますよ」

俺はアーシャさんの手を取る。


「ダイチさん……

スタちゃん、リリムちゃん。少し、待っててね」

アーシャさんは、涙を拭き椅子から立ち上がった。


冗談で湿っぽい空気を軽くしようと思ったんだけど……アーシャさんもなぜか乗り気だ。


「ダメよママ!」

スターナが俺たちの手を引き離す。


「何がダメなんだ?」


「く……」

スターナは俺の言葉に頬を赤らめる。


「ダイチー、帰りたい! 帰りたい! 帰りたい!」


リリムが床を転げ回り、駄々をこね出す。


「はぁ……分かったよ。でも、心配だから家まで送っていくよ。スターナはアーシャさんと二人でゆっくりしてな」


親子でゆっくり過ごす時間も必要だろ。


「あ……うん……」


「ダイチさん……また今度……ね」

アーシャさんは、名残惜しそうに俺を見つめる。

なんか、スターナを連れ帰ってから急にヒロイン化してきたな。


俺たちの視線を切るように、スターナが前に飛び出す。


「ダイチ、帰ってきたら私がご飯作ってあげるからね!」


「どうしたんだ、急に?

お前、料理なんて作れたのか?」


「ええっと、ママに教えてもらうから!」


「ええ……いらないよ別に……不味いもん食いたくねえし」


「ちょっと、そんなひどい言い草ないんじゃない!」

スターナは、なぜか鼻息荒く怒り出した。


「ダイチは、女心がわからぬ奴だ」

リリムが、したり顔でため息をつく。


「女? どこにいるんだ?」


「ダイチなんて嫌い!」

スターナの右ストレートとともに家から追い出されてしまった。


とりあえずスターナをパーティから外して、

リリムの家に向かう。


「ダイチはスターナのことが好きなのか?」


「好きだよ……どうしてだ?」


「なるほどね……好きな人ほどイジメたくなるみたいなやつか」


なんか、リリムのクセに分かったような口を利いてくるのが少し癪だ。


「リリムに対してもあんまり変わんないだろ」


「それは、リリムも好きということか!」


なんで、テンション上がってんだよ。


「うーん、10年もすれば綺麗な大人の女性になるとは思う」


「今だって充分綺麗だろうが!」


「はいはい。ほら、家はどっちだ?」


「というか本当にリリムの家に行くのか?

一人で帰れるのに……」


「迷子になったら大変だろ?」


「なるか!」


俺がいない間に何かあったらどうする。

――もう、二人を喪うのはごめんだ。


小一時間歩くと、郊外に古民家のような、傷んだ家がぽつんと佇んでいた。


庭にはお墓があった。

そこだけ手入れが行き届いていて、寂れた古民家とは対照的に、少し浮いているように見えた。


「パパ……ただいま……一人にしてごめんなさい」

リリムはお墓の前で、目を瞑る。


俺も隣でそれに傚う。


「よしっ!

お墓の掃除をするから、ダイチは部屋で待っていて」


「ああ……」


リリムに言われるまま小さな家に入る。

家の中は寂れていて、壁や窓、家財はどれも修繕して使い回しているような形跡がみられる。


……あんまりいい暮らしをしているとは言い難い。

俺は、部屋の隅にあるベッドに腰を下ろす。


積み上げた板に布団を敷いただけの簡素な作りだ。


「ダイチ、終わったぞ。

今夜はリリムはパパと過ごすから……

送ってくれてありがとう」


力なく笑うリリムは、どこか寂しげに見えた。


「リリム……嫌じゃなければもう少しここにいてもいいか?」


「むふふ。リリムのミステリアスな部分に惹かれたんだな」


「まあ、そんなとこかな。

お父さんが、亡くなってから結構経つのか?」


「もう、五年になる。

あとパパっていっても……血は繋がってない。

孤児だったリリムを拾ってくれたんだ」


「ここは、その人の家だったのか?」


「うん……生活は苦しかったけど、帰る場所があるのは落ち着く……」


「その気持ち、わかる気がする」


「でも、ダイチたちといたら……ここに帰って来なくなりそうで……それが嫌なんだ」


リリムにとってはここが帰る場所だもんな。

今まで、パーティ編成で縛ってきたのは……我ながら最低だった。


「リリム……悪かった……」


「今日のダイチはいつも以上に気持ち悪いの。

でも……謝ることはない。帰りたいけど帰れない……それなら、ダイチたちのところにいてもいいって、リリムは自分を正当化していた。

帰らなくて済む理由をダイチに押し付けていた」


リリムの声がかすかに震えていた。


そうか、リリムはこの場所に縛られていたのか……でも、パパと呼ぶぐらい慕っていた人だ。

当然なのかもしれない。


「それぐらい、俺が背負ってやるよ。

お前を帰さないように、パーティ編成で縛ってやる」


「ダイチ……でも、たまにはお参りしたいのだ」


「その時は、いつでも俺が一緒に行ってやるよ」


「むふふ。ダイチは面構えは極悪人なのに、意外といい奴だな」


「俺の面ってそんなに酷いのか?」


「うむ、性格の悪さが外面にまで滲み出ているの」


まじか……。


「ダイチ……今日はここで泊まっていくか?」


「そうだな。意外とここまで遠かったし、お言葉に甘えようかな」


ファストトラベルさえあれば……何度そう思ったことか。


「それじゃあ夕飯の支度をするから」


「ああ、頼む」


俺はその間に、トイレをクラフトして……ステ振りやクラフトツリーを確認するか。


おっ……これいいじゃん!

クラフトメニューを操作して、リリム家の庭にあるものを作る。



「ダイチー、もうすぐご飯ができるぞ!」


リリムが外に俺を呼びに来た。


「って……なんじゃこれ!」


リリムは腰を抜かし、地面に座り込む。


立ち上る湯気、環状に並べられた岩――白濁した湯船。


「どうだ? 露天風呂っていうんだ」


「おい! 人の家の庭に、何を勝手に……」


「リリム、気持ちいいぞ?」


「うう……入りたいけど、裸は嫌なのだ」


「女の子みたいな反応しやがって」


「リリムは女の子なのだ!」


……ったく仕方ない。

パーティー→リリム→装備→外見変更→スク水選択。


流れるような操作で、リリムの衣装をスク水に変更する。


俺は、被服クラフトも習得したから、衣装もいくつか作っていた。



「な、なんじゃこれ!」


紺色のスク水、胸には『りりむ』の文字が貼り付けられている。


制作陣……わかっているねえ。


「まあ、俺の世界の湯着みたいなもんだ。

そのまま入れるぜ」


「なんか、恥ずかしい気もするが……裸よりマシか……よしっ! うっひょー!」


リリムは飛び上がり湯船にダイブする。


「おい、それはマナー違反だからやめなさい」


「なっ、お風呂にもしきたりがあるのだな」


「あと、泳ぐのも禁止だぞ……」


「なぬっ!」

既に平泳ぎの体勢に入ってたリリムがしゅんとする。


「……まあ、いいか。

礼儀作法は気にしなくていいや。

好きに泳いでいいぞ!」


「やったー!」


リリムは泳いだり、飛び込んだり、

縦横無尽に遊び回っていた。


こんなに楽しそうなリリムを見たのは初めてだ。


はしゃぐリリムを横目に、俺は夜風を浴びる。


そういえば、夕食のことをすっかり忘れていた。

冷めてしまうけど……体は温まったから、それでいいか。

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