11 能力測定
「これは…?」
アリアが俺たちの前に持ってきた水晶を見て、ノノがアリアに尋ねた。
「これが、いわゆるアナライズの魔法と同じ効果を持つ水晶…通称『アナライズクリスタル』だよ」
「ストレートなネーミングだねぇ」
「ボクが名づけたわけじゃないからね、ナナちゃん。 元々エクリプス皇国で作られた測定用の水晶なんだよ」
「エクリプス皇国?」
また聞きなれない国の名前が出てきた。
そこはどんな国なんだろうか。
「エクリプス皇国は七人委員会に属している国家の一つで、魔族領の東側を治めている国家です。 アリア姉様の産みの親がそこの出身なんですよ」
「そうなのか?」
「うん、マティア母さん。 元は皇国きっての貴族出身で夢魔族なんだよ。 そして、この水晶を作った人でもあるんだ」
「え、本当なのですか!?」
「本当の話だよ、ノノカちゃん。 父さん…現国王の妻の一人になる前に作ったのがこの水晶なんだ」
アリアの産みの親の作品ってことか…。
なら、ストレートなネーミングもその人が考えたものなのか。
多分わかりやすくするためなんだろうけど。
そんな事を考える俺をよそに、アリアとメルルは、そのまま話を続ける。
「マティア母様が妊娠された時期に、その水晶のいくつかが盗まれたんですよ。 犯人たちは捕まって処分されましたが、盗んだものすべてアッシュ王国をはじめとした人族至上主義国家に渡ったそうです」
「当時、魔族ですら判別不可能にさせるレベルの変身魔法と同じ効果を持った魔道具が向こう側にあったらしく、それを使ってスパイ活動もしていたそうだよ」
「その後は、変身効果を有する魔道具は厳重封印され、相手側もスパイ活動ができなくなりました」
それで今は考えなしの物量作戦に切り替わっているのか。
あいつらの能力次第では、再びスパイ活動が再開されるかも知れない。
気をつけないとな。
「まぁ、とにかく今後のためにキミ達の初期能力をこれで測定しようと思うんだ。 やり方はこうやって水晶に手を置くだけでいいんだ」
と言って、アリアは水晶に手を置いた。
すると、水晶は光を発しはじめて、ホワイトボードのような形をした映像が浮かび上がり、そこになにか文字や数字が刻まれていく。
「これが…アリアの能力か?」
「うん、そうだよ」
浮かび上がったのはアリアの能力。
それをじっくり見ていくと、腕力と体力は低めで魔力はかなり高かった。
典型的な魔法使いタイプのような能力値だった。
だが、属性色という項目があり、気になる記述があった。
「色無し…?」
「ああ、いわゆる利用するにあたっての相性がいい属性色がない場合のみ記載されるんだよ」
「この扱いについては七人委員会所属国家の認識と、人族至上主義国家の認識は異なってますからね」
「確か、アッシュ王国じゃ色無しは無能扱いなんだっけ? 属性色至上主義的な考えもあるって」
マジか…。
向こうじゃそんな考えなのかよ…。
つくづく転移先がこのステラ王国でよかったかも…。
「というか、ナナやノノは知ってるのかよ」
「メルルさんに教えてもらいましたから」
「うん、今ある属性色の意味合いもね」
なるほどね。
メルルに教えてもらったのか…。
それなら多少知っていても納得がいく。
その間の俺は…アリアと致している最中だったしなぁ。
「それで、七人委員会所属国家の認識は?」
「鍛え方次第で、あらゆる属性の魔法や技が満遍なく使える可能性を秘めた存在というのが七人委員会所属国家の認識です」
「人によっては失われた属性色を使えたりできるみたいだよ。 ボクの場合は連続詠唱。 2つの魔法を間髪入れずに連続して使うことができるというやつさ」
そうか、ここでは『色無し』は無能ではなく、可能性の塊というわけか。
人によって別のことも可能な程、鍛え方次第でチートにすらなれるという…。
とはいえ、そこに至るまでが大変だろうな。
即戦力を求めるアッシュ王国陣営は、その可能性の塊を育てる時間すらないという程に追い込まれてるということだろう。
「それじゃ、まずはナナちゃんからいってみようか」
アリアに促され、ナナが水晶に手を置く。
そして、ナナの能力が浮かび上がっていく。
ナナは…属性色が赤、緑、茶、黒…なのか。
「この色の意味は?」
「ああ、アルト君には言ってなかったね。 赤は火を象徴する色で、緑は風、茶は大地や土、黒は暗黒属性的な意味合いだね」
なるほどね。
つまりナナは火属性、風属性、大地属性や闇属性と相性がいいわけか。
能力的には、魔力と腕力が同じ水準ということは魔法剣士的なタイプなのかな?
「じゃあ、次はノノカちゃん」
「はい」
そして、次はノノカ。
属性色は青、緑、金、銀…?
「青と金はなんとなく想像付くけど、銀は…?」
「銀は回復系の魔法を使える証だね。 ちなみに青は水や冷気、金は光、神聖属性だよ」
つまり、ノノは僧侶的なポジションになるわけか。
能力値から見ても精神力が他の能力より一つ飛びぬけている感じだった。
「じゃあ、最後にアルト君どうぞ~」
「よし…」
やや緊張しつつも、水晶に手を置くと…。
「ふぇっ!?」
「おおっ、これは…」
ナナは驚き、アリアは興味津々に映像化した俺の能力を見ていた。
「能力がすべて私たちより一回り高い水準ですね」
メルルが俺の能力が高い水準であることに感心し、アリアのほうは俺の属性色の項目に注目していた。
それもそのはず。
「アルト君は『色無し』。 しかも、ボクとはまた違ったタイプの『色無し』みたいだ」
と、半ば興奮気味に言ったのだ。
しかし、どういうことだ?
アリアと違うタイプの色無しとは一体…?




