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08 家族との再会

「ん? なんか食堂が騒がしくないか?」


「そういえば…。 いつ立ち直ったのかわからないけどナナちゃんとノノカちゃんの声も聞こえるね」


アリアと俺は、目的地である食堂へ近づいた際に何やら騒がしい声が聞こえてきた。

その先の食堂にはナナやノノの声もあった。

俺がアリアとヤッてる最中に立ち直ったのか。


「あ、お兄ちゃん、アリアお姉ちゃん!」


色々考えてると、食堂からナナが飛び出してきた。


「ナナ、どうしたんだよ。 そんなに慌てて」


「とにかく食堂に来て! 私たちもびっくりして上手く説明ができないから」


「あ、ナナちゃん待って!」


ナナに腕を引っ張られながら食堂に入る俺。

アリアも慌てて付いていく。

そして、食堂に入った瞬間、俺は目を疑った。

当然、視線を感じた向こう側の人物も同じ感情だったのだろう。

なぜならそこには…


「父さん、母さん…それにおじさんたちも…?」


「有人…なの?」


「なんと、有人君もか…!」


なんたる奇遇か、そこには俺の両親と姉、そしてナナやノノのご家族がいたからだ。


「も、もしかしてご家族の人?」


「ああ、そうだ。 まさか家族も巻き込まれてたなんてな…」


「ボクもびっくりしたよ。 でも、今回の相手国の召喚実行者が高い魔力もちだからこうなる可能性もあっただろうけど」


アリアも俺の言う事に多少驚きはしたが、冷静さを取り戻した。

確かにあの時、巻き込まれる人数は召喚実行者…いわば術者の魔力に応じると言っていた。

今回の術者の魔力がかなり高い人物がやったのであれば、家族ごと巻き込まれても不思議じゃない。


「まさか、ここで家族が集うことになろうとは思わなかったな。 だが、これも奇跡なのだろう」


「ええ、私たちもそうです。 二度と会えないと思ってましたから」


ノノはそう言って、おじさんに駆け寄り涙を流した。

あとからナナも同じように涙を流して喜んでいた。


「ナナちゃん達も家族に会えたことにうれし涙ね」


「そうだな。 俺も同じだよ。 二度と元の世界に戻れないって聞いたから」


「ああ、父さんもここの王族の方にそう聞かされたよ。 そんな中での再会だからな」


「それで、アルのとなりにいる女性も王族の方?」


姉がアリアに気付き、聞いてきた。

俺が答える前に、当人が自己紹介を始めた。


「そうです。 ボクはアリアード・エル・ステラ第六王女です。 気軽にアリアと呼んでください」


「ボクっ娘王女!?」


「落ち着け、姉さん!!」


変な所で過剰反応する姉を諫める俺を尻目に、アリアはさらに話を進める。


「ご家族の再会は喜ばしいと思います。 ですが、喜んでいられないお知らせもあります」


「ん? どういう事ですか?」


不穏寄りに持っていった話題に母さんは不安げな表情で聞いてきた。

ああ、俺がショックを受けたアレを報告するのか。

確かにこういったことは早い目に教えたほうがいいこともあるだろうし。


「今回の相手国が実行した召喚ターゲットの35人の中にアルト君をいじめた主犯格と取り巻きがいたのです」


「…!!?」


それを聞いて俺の家族や双子の姉妹の家族は固まった。

まさかあいつらがこの世界に召喚されてたなんて思わなかったのだろうし。


「本当なのか、七海?」


おじさん達がナナに尋ねる。


「うん、私もメルルちゃ…いや、メルルーナ王女からそれを聞かされたから」


「私もです。 ショックと同時に怒りを感じました」


ナナがおじさんの疑問に答えると、ナナの隣に居たノノも同様に答える。

雰囲気が一気に悪くなる。

俺をいじめた主犯格に対する怒りが食堂を支配していた。

…と、そこに


「だが、逆にいえば奴等が異世界に召喚されたことが、転落フラグになるかもしれないぞ」


父さんがこう切り出した。


「えっと、それはどういう?」


気になったのか、アリアは父さんに尋ねた。


「奴等が権力を持っていたのは、奴等の家族の力が大きかったのです。 いわばここに召喚となれば、巻き込まれない限りその家族の力を振りかざすことができないということです」


「そういえば、ナナちゃんが言ってましたね。 アルト兄様いじめの主犯格の家族は権力の強い職についてるって」


「アルト君自身も言ってたね。 それだけでなく取り巻きの一人が警察のお偉いさんを家族にもってるとも」


「そう。 環境が異世界へと変われば、その権力は無意味になると思います。 特に王政が強い国ならば」


ああ、そういう事か。

クラスメートの多くが見てみぬ振りをしたのもあいつらのバックであろう家族の権力という名の圧力もあった。

だが、異世界に召喚されたことで、その権力は意味がなさなくなる。

アッシュ王国は王や大臣の権力が強いから、それに逆らえばどうなるかは想像がつかない。

とはいえ、安心するのはまだ早い。


「あいつが最強の能力を引っさげた場合は? それによって下手したら王国を乗っ取る可能性もあるし」


安地(あずち) 平斗(ひらと)が自分の思う通りにしなければ気がすまない性格であることは痛いほど身に染みて理解している。

いくら王族が強くても、その性格に最強の能力が与えられたらそれさえもひっくり返す可能性だってある。


「それは、多分…判明される能力次第だね」


アリアも疑念を抱いたのだろう。

発言も、どこか不安を感じさせるものだった。


「どういう事でしょうか?」


「異世界の人間は、身体能力はボク達現地人よりは高い。 そこに『異界集団召喚』の術の際に能力が付与されるけど、能力はアナライズの魔法を使うか、その魔法と同じ効果を持つ水晶球に手を添えるまで分からないからね」


母さんの疑問に対するアリアの答えが全てなのだろう。

確かにあの時、能力も付加されるとは言っていた。

そして、それは識別魔法を使うまで分からない。


「アルト君たちにもそこらへんの説明をしておくべきだったけどね…」


アリアはそう締めくくった。

多少、重い空気が漂っていたが…


「ま、とにかく今は食事にしようか。 向こうにまだ幾つかのファミリアを飛ばしてるし、そのうち分かるでしょ」


と、アリアが手をパンと叩きながらそう言った。

そしてようやくありつけた食事は、かなり美味だった。


だご、安地(あずち) 平斗(ひらと)をはじめとしたいじめの実行犯たち数人がすぐに転落していくことは、食事中の俺たちに知る由はなかった。



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