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07 そのころの私たち (Side ナナ)

「はぁ…、これ以上落ち込んでも仕方ないよね」


 私、高槻(たかつき) 七海(ななみ)とその双子の妹の野乃香(ののか)は、今の時間帯まで落ち込んでいたようだ。

 何せ、私達は朝の登校途中で突然この世界に巻き込まれた形で飛ばされ、さらに巻き込まれた者は元の世界に戻れないという絶望的な事実を突きつけられたのだから。

 私達の家族は仲が良く、充実した生活を送っていたからなんだと思う。

 ただ、九重(ここのえ)有人(あると)お兄ちゃんは、高校2年になってから理不尽ないじめを食らい、退学に追い込まれた経緯があるためか、家族に会えないショックはあるものの立ち直りは早かったようだ。

 トイレを済ませた後には、お兄ちゃんの姿はなかったからアリアお姉ちゃんの部屋で今後の生活面などで話し合うつもりだろうと思う。


「七海、メルル王女様を呼びませんか?」


 同じくなんとか立ち直ったノノこと野乃香(ののか)が、私に呼びかける。

 確かに今は私たちのみ。 この王城の事など全く知らない。

 だから、一度メルルちゃんを呼んで案内してもらうことにしたら…。


「あ、ナナさんとノノさん。もう大丈夫なのですか?」


 丁度、メルルちゃんが戻ってきた。


「うん、まだショックは残ってるけど、これ以上落ち込んでもいられないしね」


「ご心配をおかけしてすみませんでした」


「いえ、こちらこそショックになるような事を伝えてしまいましたから」


 こちらに気を使うように発言するメルルちゃん。 しかし、どこか様子がおかしかった。

 疲労感と何らかの怒り的な感情が見え隠れしていたように思えた。


「案内するまえに、一つだけ新たに判明したことがあります」


 どうしたのかと聞こうと思ったが、先にメルルちゃんが口を開いた。

 新たに判明したこと…。 転移関連なのかそれとも…。


「アッシュ王国の召喚ターゲットは35名。 その中にアルト兄様をいじめていた主犯格がいたようです」


「な…っ!!」


 報告を聞いて、私たちは驚愕した。

 まさか、アッシュ王国にお兄ちゃんをいじめた主犯格…安地(あずち) 平斗(ひらと)が召喚されていたなんて!

 あいつの両親はいわゆるお偉いさんだが、一種のDQNとも呼べる家族であり、文部科学省に属する父親も相当だが、母親は息子に甘く、彼女を通して息子の悪行をもみ消していた。

 取り巻きも親が警視庁の人物だったりで、抗議や通報しても効果がなかったのはこれに要因があった。


「それで…お兄様は?」


「アリア姉様の部屋でお休みになってます」


 アリアお姉ちゃんなら安心かな?

 本当は私たちがお兄ちゃんを支えなきゃいけないのにこの体たらくだしね。

 あの人も責任を感じてるし、少しの間はお兄ちゃんのことはアリアお姉ちゃんにお任せしよう。


「では、お城の案内をしましょうか」


「はい、お願いします」


 私たちはひとまず、メルルちゃんと共にお城の中を探索した。

 書斎や広間、各王族の部屋や客人用の部屋、兵士さん達の兵舎など案内してもらった。

 もちろん、お部屋以外のトイレも教えてもらった。

 私たちの世界と同様、洋式の水洗トイレだったのは驚いたけど。


 一通り案内してもらった後、書斎でこの世界の歴史とか魔法の系統や属性とかも教えてもらった。

 その歴史の内容によると、アッシュ王国の他にも人族至上主義の国があるが、ほとんどがアッシュ王国の属国となっており、圧力によって仕方なく兵を派遣しているとのこと。

 それによって、いくつかの国が滅亡し、アッシュ王国に吸収されおり、あの国が大きくなった要因もそこにあるという事も教えてくれた。


 魔法においても、属性が色で判別しており、今でも存在している属性は7つある。

 まず、火を象徴する【赤】。

 次は、水、冷気を象徴する【青】。

 風を象徴する【緑】に、大地を象徴する【茶】。

 聖なる属性の【金】、反対の暗黒を象徴する【黒】、回復魔法の証である【銀】の7つだそうだ。


 ただ、アリアお姉ちゃんは【色なし】らしく、敵対国のアッシュ王国にとっては無能の証だそうだが、ステラ王国や他の七人委員会所属国家は万能に扱える存在であるとのこと。

 また、同じ【色なし】でも失われた属性や各種遺失技術も使える存在も過去にはいたんだそうだ。

 そのことについては、アリアお姉ちゃんが知っているそうなので後で教えてもらうことにしよう。


「もう、こんな時間かぁ」


 私は時計の針を見た。

 時刻は午後6時を回っていたのだ。


「時間の感覚も私たちの世界と一緒なんですね」


「ええ、これに関しては数百年前の最初の転移者から教えてくれたものですから。 あの水洗トイレもそうですよ」


「マジですか…」


 さらなる事実を知って開いた口が塞がらずに居た。

 それを察してか知らないけど、メルルちゃんはすぐに話題を変えた。


「と、とにかくそろそろ食堂に行きませんか? お腹もすいてるでしょうし」


「あ、そういえばそうだったね」


「転移してから何も食べていませんでしたね」


 そう言われてなんとなく空腹感を感じた。

 確かに転移してから落ち込んだり、勉強したりで何も食べていなかったからなぁ。

 道中、三人でトイレを済ませてから、食堂へ足を踏み入れた。


「あ、メルル、そこのお二方もお食事かな?」


「はい、エリーゼお姉様。 して、あそこにおられる方々はもしや…?」


「ああ、私や兄様たちが見つけ、保護した転移被害者の方々だ。 …ってそこのお二方?」


「ナナさん、ノノカさん、どうしました?」


 エリーゼと名乗った人が保護したという集団の一部を見て、私たちは固まった。

 なぜなら…


「お父さん、お母さん!?」


「な、七海! 野乃香!?」


「え!? 七海ちゃんと野乃香ちゃんがいたの!?」


有人(あると)お兄様のご家族まで!?」


「えええっ!?」


「な、なんと…!!」


 そこにいたのは、私たちの両親とお兄ちゃんの家族の人たちだった。

 それを知ったメルルちゃんとエリーゼという人も傍らで驚いていた。


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