8
更新が遅れてしまいました、申し訳ないです。
でも初めての対人戦で心境だとか、
作戦を考えないといけなかったり難しかったのです。
騒動のなかで悲鳴を聞き流し、血にまみれた男を守るように鍬を構える者がいる。
俺である。
鍬を構えたまでは良かったのだが、考えてみれば人との戦闘経験なんてなかったと思い出した、相手は武器を持っているのだから喧嘩のように殴りかかる訳にも行かないだろう。
喧嘩ではないのだから斬られて終わりだ。
既に身体の震えは止まっているし覚悟も決まっている、そのせいか肉体が強化でもされたような気持ちになっていたけれど、1を倍にしても所詮は2なので圧倒的に経験が足りない、勇気と蛮勇は違うのだ。
お互いに動かない状態が続いている、と思っていたのは俺だけだったようだ。
「怖いんなら楽にしてやるぜぇ」
振り下ろされた刃を必死に鍬で受けるが片手じゃ押し負けて勝ち目はない。
なんとか足で蹴り返しでもして劣勢を覆したいが、そんな余裕もなければ運良く当たっても相手は下がらせることはできない。
相手を吹っ飛ばしまわっていたバルトリウスさんの凄さが、する側になって改めて理解する。
それなのに俺のせいでと、改めて自責してしまうが今はそれどころじゃない、盗賊達に囲まれでもしたら勝ち目はないので、バルトリウスさんをどうにか抱えて逃げるなんて考えは諦めるしかないのだろう。
格好よくなくても俺だって死にたくないし、無様に背中を向けて全力で逃げる。
前向きで下がるよりも、よほど速いし相手の攻撃を受ける技術も力もないのだから、どうせ下がるのなら速いに越したことはないと思う。
距離をとってから鍬を構えた途端に少し落ち着いたのか、鍬を振り下ろしていたら何か変わったかもしれない、だとか民家を盾に奇襲していればなんて考えが溢れてくる。
なぜその考えが今になって出てくるのかと文句のひとつでも自分の頭に言ってやりたいくなるが、必要なときに最適な行動ができるからこそ他より賢く見えて天才なんて呼ばれるのだろうし、凡人は後になってタラレバを言うしかないから凡人なのだろうけど、それが経験になって次に備えるのだろうし、もしそれで天才より良く動けたら努力で勝ったと言って貰えるのか、ただ天才の一言で片付けられるのか。
どちらにしても、今この瞬間に考えられただけ俺は優れているのだと自画自賛でもしないとやってられない。
自分にできる事と、できない事を正確に知ってないといけない、と何かで聞いたの覚えがあるので確認してみる。
鍬を振れる、受け流すだとか技術は無い、この辺りの地形は知っている、戦い方なんて知らない。
考えているうちに盗賊達が迫ってきているが、少なくとも再確認のおかげで迎え撃つなんて無謀なことはできない。
なら俺でも思いつく戦法というと、逃げながらひとりずつ倒していくしかないか。
引き続いて逃走し、建物の影に飛び込んで様子を見る。
「クソ! 立ち向かってきたと思えば逃げてばかりいやがって」
高鳴る鼓動を深呼吸で落ち着かせながら、声が近づいてくるにつれ鍬を握る手に力が入る。
ついに盗賊のひとりが俺に気づかず通りすぎた。
「ハァ!」
アサシンの如く静かに殺っていく、なんて想像は思わず叫んでしまった声で遠ざかってゆくが、見事に鍬は相手の脳天に突き刺さっている。
名前を大地粉砕丸から脳天穿ち丸に変えた方がいいだろうか。
「こっちから声が聞こえたぞ!」
その声を聞いて慌てながら再び物陰に入っていく、気分はさながら場所を特定されないように移動するスナイパー。
「なにがあった! 大丈ぶ」
「セイアァ」
村人を殺めておいて、仲間は心配する自己中心的な奴めに一閃、すでに心のアサシンさんは旅立ったのだ。
ふたりも倒すと自信がついてくるもので、慢心はダメだと心の声が忠告している気もするが俺は勢いが大切だと思う。
さすがに堂々とは怖くてできないので物陰をコソコソと進むと、残りの盗賊達が見えてきた。
数は3人、初手で1人あわよくば2人で残ったのは逃げて待ち受ける必勝パターン、いける気がする。
別の方へ向いた瞬間に駆け出す! が普通に振り向かれて嫌な汗が吹き出る。
「ここに居たぞー!」
足音でバレるという考えは完全に抜けていた、とてもまずい状況である、声でワラワラと集まってきて既に周りは敵だらけ、まさに絶対絶命。
心の声を聞いておけば良かったと今になって後悔。
心は身体のどこにあるか? そんな問いの答えは大抵、頭か胸と言うだろう、考える所という点では頭と答える方が多いかもしれない、俺もそう思っていたが、感に従わずに危険な状況に陥るのだから、心は胸にあるんじゃないかと思えてきた。
もうここまでか、せめて一人でも多く道ずれに、そんな考えたくない最終手段を練っていると賊共の後方より悲鳴が聞こえてくる。
近づいてくる悲鳴に、もしかして強力な助っ人が来たのかも、でもここに居たら仲間と思われて盗賊ごと、なんて慌てふためいていると。
「大丈夫?」
「あぁ、ありがと……う」
そこにいたのは大きな斧を担いだアリウスちゃんだった、……なんで?




