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採れた野菜と肉の塩スープを頬張っているとバルトリウスさんが立ち上がる。
「お前も狩りに来るか?」
いきなりそんなことを言われても、なんて言葉を返したらいいのか分からない。
「いや、急すぎませんか」
「肉はいつも狩りで手に入れているからな、このままだと明日から肉なしのメシを食わねばならん」
「分かりました、俺の真の力を出すときが来たようですね」
そうしてバルトリウスさんの急な提案により俺は狩りに行くことになった。
明日は早朝から出るらしいので早めに寝ることにしよう、思えば片腕だけど大丈夫だろうか、いや俺には二年間の苦楽を共にした愛鍬の大地粉砕丸がついている。
身体も筋肉質になったし今ならあの忌まわしき狼モドキに復讐できるやもしれん。復讐に意味はない、なんてセリフがよくあるけど体験してみて初めてわかる、確かに形には残らないかもしれないけれど気持ちの問題だ。人の原動力は心だと思うしその為に気持ちの整理は大切なのだ、その方法が相手への攻撃であったとしても。
そんな恨みを吐いていると、いつの間に寝たのか気づけば朝だった。
「おう、準備は出来てるようだな」
バルトリウスさんの元へ鍬を抱えて行くとそう言われた、おかしいな鍬について指摘されないのだろうか
「あの、持ってきて言うのも変ですけど鍬ですよ? 大丈夫なんですか?」
「だってその鍬、そこらの武器より強いだろ」
衝撃の事実が発覚した、この鍬の材料はバルトリウスさんが探索者のときに持ってた素材らしく、村に来たときに鍬にしたようだ。
道理で固い土をなんの抵抗もなく掘り返せるはずだ、勝手に名前付けて大切にしてるけど良かったのだろうか。
「そんなに気に入ったんならやるよ、畑も頑張れよな」
なんと! 嬉しさのあまり声が出ない、運を使い果たしてないだろうか、この感謝をどう伝えるかと考えながら山のなかに進んでいくバルトリウスさんを追いかけていく。
バルトリウスさんの武器は腰に小さな斧が数本ついている。おかしくないか? いったい何を狩りに行くつもりなのだろうか、客観的に見ると斧を持った大男と鍬を持った男、山賊の親分と子分にしか見えない。
できるだけ足音を消そうと頑張っているが、普通にパキパキと小枝を踏んだりしてしまいながらも進んでいくと、止まれと合図を出してきた、どこの世界でも止まれのやり方はあまり変わらないらしい。
指さしている方向を見てみると、忘れもしない狼モドキがいた。息の詰まる感覚を覚えながらバルトリウスさんを見ると、明らかに行けと言わんばかりの目で見てくる。
その顔で少し笑いながら顎をクイクイと催促するのは本当にやめて欲しい。ただでさえこの人を相手に断るというのは気が引けるというのに、楽しそうに促されると選択肢が分かった、はい、了解みたいな肯定しか見えてこないじゃないか。
だが復讐を果たす機会であることも確かである。恐怖のせいか身体の動きが悪い気がするが気持ちが既に負けているからだろう、覚悟を決めればいつものように動けるはずだ。
覚悟か……、そう言えば名前を決めたとき覚悟って理由で名乗ったんだったな。思えば未だに間違えを正せずにヨモと呼ばれ続けているが既に慣れてしまって今の呼ばれ方も気に入っている、というより当時の俺は異世界に来たと実感して混乱状態にあったのだろう、黄泉比良坂なんて呼ばれたら恥ずかしくて悶絶ものである。
ぐだぐだ考えていると落ち着いてきた、行動を起こして初めて結果が出るのだから覚悟を決めるしかあるまい。
といっても、あの狼モドキ相手にどうすれば勝てるだろうか。普通に正面から行くには経験が足りないし、奇襲するにも技術がない、腕をやられたときとの違いは覚悟を決める時間があるのと、バルトリウスさんが居ること。
おや? 考える必要は無いのではなかろうか、まさか見殺しにはしないだろうし、もしものときは助けてくれるだろう。ならば突撃あるのみ!
虎の威を借る狐、この言葉を意味を今ほど実感することはあまりないだろう。
安心という覚悟が決まったので鍬をすぐ振り下ろせるように肩に担いで堂々と近づいていく。狼モドキは最初から気づいていたのかゆっくり俺を見て唸り始める。
狼モドキの速さは実感していので的確に鍬を振り下ろせるよう全力で集中する。
警戒しているのだろう、俺の周りをゆっくりと回っている。さすがに背を見せる勇気は無いので常に狼モドキを正面に捉えるように俺も回るのだが状況に変化がない、いや逆にこれは使えるのでは? 背中を見せると来るのが分かっているなら、狙ってきた所を攻撃すればいい。
正しく勝負は一瞬だった、立ち止まった俺の背中の方から突っ込む狼モドキ、その駆け出した音を聞いて全力で鍬を振り下ろす。
「パキャ」
そんな音が聞こえたと思ったら、見事に狼モドキの頭に鍬が突き刺さっていた。
「おおお! やったあ!」
嬉しさのあまり叫んでしまった、初めての殺生は抵抗がどうのとよく見るが頭に刺さっていることに対する気持ち悪さはあれど、達成感しか感じない。
まぁ、憎かった相手という理由や人型じゃないとかもあるかも知れないが、狼モドキのおかげで自信がついたのは確かだ。
「よくやったな」
バルトリウスさんが近づいてきて褒めてくれる。嬉しさのあまり調子にのって更に狩りを続けようとするが、一匹手に入れば十分で狩りすぎても腐らせてしまうらしい。
解体などは血の匂いで獣が寄ってこないように家でするらしい、そうして初めての狩りは成功し帰路につく。帰る途中で遠くに集団が見えた気がしたが猟師だろうか、バルトリウスは強いから一人でも大丈夫なのだろうな。




