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10.視点交換

第一章の締めくくりとして視点を変えて振り返ってみました。

 わたしの名前はアリウス、お父さんと二人暮しをしているわ。

 だけど最近、家族が増えたの。

 ある日の事なのだけど、お父さんが山から帰ってくると人を抱えていたのよ。


「お父さん、わたし人は食べないよ!」

「いや、食わせないぞ?」


 お父さんはとても強いので、魔物じゃ飽き足らずに人まで狩ってきたのかと思ったけど、どうやら勘違いだったようね。


 なんでも喰われかけていた所を拾ったとかで、拾われた人を見てみると初めて見る髪の色をしている。


「髪色が分からないよう炭でも付けているのかな」

「いや地毛のようだぞ、起こしてみないことには分からん」


 確かに起こしてみるしかないと近づいた所で、やっと気づいたのだけど、この人の腕がない。


「お父さん! 腕が」

「ああ、そうだった処置を手伝ってくれ」


 お父さんはいつも大切なことが抜けている気がするけど、今はそれどころじゃなかった。


 よく見ると前腕(足でいう所のスネの部分)の骨が見えてしまっている。

 遺跡から見つかるもので手足が切断されても再生する薬があるらしいが、当然こんな村にあるはずも無いので出来ることは限られてくる。


「やっぱり切るしかないの?」

「そうだ、鉄板を熱しておいてくれ」


 町にでも行けば遺物の薬の模範品が売ってるでしょうけど、行く時間もなければお金もないので、やはり焼いて止血するくらいしか方法はない。

 幸いと言うべきか意識がないので、下手でもなければ死ぬ可能性は低そうだ。


 キレイにした鉄板を火にかけて、お父さんの方へ行くと斧を用意して二の腕を縛っているところだった。

 今まで、解体とかしてるのが似合うと思うことはあったけど、ごめんなさい、本当に違和感がなさすぎて、腕を切ろうとしてるのに、何してるのか忘れる所だったわ。


 近づいて、腕をどう切るのか聞いてみると、肘や肩で切ると後が綺麗になるけど、他の所で切ると骨が出て大変らしい、今回の場合だと肘で切るらしい。


 既に鉄板は赤く染まっていて準備はできている、その事を伝えると最後まで見守るつもりだったけど、追い出されてしまった。

 別に助けるために切るのなら気にしないのに、やることが急になくなったので、ふと先程の光景を思い出すと今になって吐き気が込み上げてくる。


 今夜、眠れるかしら。




 日が照りつけている中で水汲みを終わらせて、そろそろお父さんのご飯が出来上がる頃だろうから、その前に今日もあの人の様子を見に行ってみる。

 既に日課になっていると言っても過言では無いほどに通っているし、今日もいつもと変わらない寝顔を見て終わるのだと思っていたけれど、ドアの先にはいつも見る光景とは違うものが広がっていた。


 思わず、なにも言わないまま飛び出してお父さんに伝える。


「お父さん、あの人が起きてたよ!」


 お父さんを連れてあの人の寝てる部屋に着いたのでドアを開くと悲鳴が聞こえてくる。

 何かあったのかしら? もしかしてお父さんがエプロン姿だから解体されるとでも思ったのかしら、なんてそんな訳ないか。


 あの人は何か喋っているけど何を言っているか分からない、遺跡から見つかった文献によると、大昔は地域によって違う言語があったらしいけど、私たちの言葉は古代文明から統一されたままだし、もしかして古代人より昔の人が何かしらの方法で蘇ったのかしら?


 お父さんが言葉は分かるか聞くけど、相手も言葉が違うことに気づいたのか、落ち込んだ顔をした後に何故か覚悟を決めたような顔をしている。

 古代人だって表情は豊かなのね、もしかしてこれって凄い発見なのじゃないかしら。


 古代人さんがお父さんに向かって頭を下げるのを見て、思わず目を見開いてしまった。

 さっき覚悟したように見えたけど、ここまでの覚悟だったなんて、首を差し出すという行為は相手に自分の所有権を委ねることっていうのは古代から変わっていないらしいので間違いないだろう。

 確かに言葉も通じない古代人が今の世の中を生きていくのは大変だろうから間違った判断じゃないわね。


 お父さんもそこまでされて、さすがに警戒を解いたようだ。

 なら、わたしも近づいて大丈夫だろうし、さっそくご飯を食べさせてあげましょう、言葉もわたしが教えてあげるんだから。




 思い出してみれば、ヨモが来てから長いものね。

 そういえば名前も最近は難しいこと言ってて、聞き取れた範囲で呼ぶと悲しそうにしてたけど、今になって聞き返すと開き直ったように俺の名はヨモだ。なんて言うんだから、この生活にも慣れたのかしら。


 最近は涼しくなってきて過ごしやすいせいか、いつもより早めに到着してしまった。


「ヨモ! そろそろ帰るわよ」


 私はいつも通りにヨモを迎えに来たのだ、まぁ迎えというより古代人観察と称して付いてまわっていたせいなのか、ヨモが居ないと落ち着かなくなってしまったのだけど、それは恥ずかしいから内緒。


 ヨモが片手しかないのに器用に鍬をもっている所を見ると改めて成長したと感じる、最初はよく転けてたし、無いほうの手で持とうとして涙ぐんだりしてたのに、今じゃ隠れて魔法の練習している時に肘先を向けてインフェルノってよく分からないことを言ってるくらいには開き直っているみたいだ。


 夕焼けが見え始めた中で帰り道を並んで歩いていると、チラチラとヨモの方から視線を感じる、そういう事に興味を持つ歳なのは分かるけど、私の顔を見て自慢げに頬を緩めているのはどうにかならないのだろうか。


 今までに分かった事だけど、ヨモは言葉も知らなかった上に古代文明とかの事も知らなかった、本当にとても古い時代から来たのいう可能性が上がったのだ。

 この事を国に伝えたら凄い金額が貰えるだろうけど、ヨモは家族だから売るような事は絶対にしないわ。


 そうして今日も夕食を食べて後は寝るだけと思っていたのだけど、なんと明日はヨモが初狩りに挑戦するらしい、今ごろ眠れずにいるんじゃないかしら。




 朝の冷たい空気で目が覚める、まだ毛布が足りないのだろうか、だけど更に毛布を取りに行くには寒い外へ出ないといけない、温かさの為に寒い中いくのはおかしな気がしてきたけれど、そろそろ目も覚めてきた頃合いだ。


 そう言えば、お父さん達は狩りに行ったのだったか、帰ってきた時に飲めるよう、熱いスープを作ってあげよう。

 そうと決まればさっそく起き上がり準備に取り掛かる、ヨモは何を狩ってくるのかしら。


 スープの様子を見ながら、火の近くで暖まっていると外で声が聞こえてきた。

 2人が帰ってきたのだろう、お父さんが居るから心配はないと分かってはいたけれど、やはり声を聞いて初めて安心する。


 様子を見に行くと、ヨモが悲しそうに肉を焼いている、なんでそんな顔をしているのだろう。

 聞いてみると、解体で内蔵を破ってしまったようだ、私も同じことをした経験がある、思ったよりも内蔵は皮のすぐ先にあるのだ、糞尿のかかった肉を食べるかなんて言うので、思わず嫌な顔をしてしまったけれど、よく見るとヨモの焼いている所は前足なので、汚いものは着いていないはずだけど、臭そうな顔をして食べているヨモが面白いので黙っていよう。




 最近は本格的に寒くなってきた、もうすぐしたら雪も積もり始める頃だろう。

 この時期になると、盗賊とかが村の備蓄を奪いに来たりすることがあるので少し心配だけど、お父さんがいる限り大丈夫だろう。


 私は早朝からご飯の準備に取り掛かっている、料理は女性がするのが普通なのだけど、我が家はお父さんも料理ができるので交代でしていて今日は私の順番なのだ。

 この時期は雪で外に出られなくなる前に準備しないといけない事が多いので、早朝から動かないといけない。


 料理もできたので呼びに行こうかと思ったが、先にお父さんの方から来たようだ。


「盗賊が来たらしい、ヨモを呼んで来てくれ」


 そろそろ来る頃ではあったけど、まさかこの村に来るなんて運の悪い盗賊達だと思う。


 そう言えば、ヨモが来てから盗賊が来るのは初めてなので、慌てた様子で伝えてみると驚いた顔が見れて私は満足です。


 お父さんに言われて、ヨモと小屋に居ることになったのだけど、お父さんは過保護過ぎると思う。

 それよりヨモがさっきから落ち着かないみたいなので、扉は閉められたけど、窓から出れることを教えてあげて誘導すると、覚悟を決めた顔で出ていくので思わず笑ってしまった。


 最近、ヨモをからかうのが楽しくなってきて悪女の気持ちが分かってしまった気がする。


 お父さんが居る限り、ヨモの心配はないので、暇つぶしにヨモが来てからの事を思い返してみる。

 ヨモは本当に何も知らなくて、私と一緒にお父さんの冒険話を楽しそうに聞いていた。

 いつかヨモと一緒に冒険とかしてみたいな背中を合わせて戦ったりするのかな、今頃はヨモもお父さんと一緒に……なぜだろう、とても嫌な予感がする。


 前にお父さんが迷った時は感に頼れと言っていたので、予感に従ってこの物置にあったお父さんの探索者の頃に使っていたらしい、斧を持ってヨモを探しに行く。


 見かけた盗賊を切り倒しながら進むと、どうやら誰かが追われている様だ、お父さんが逃げるはずないし、村人ならここまで追われないだろうし、この中途半端な追われ方はヨモに違いない。


 感を信じて良かったと騒ぎの中心に行くと、やはりヨモが居た。


「大丈夫?」


 ヨモは私を見た途端、目を白黒させていたと思えば急に慌てて、お父さんの事を心配し始めるので、聞いていると何故か話しが噛み合わない。


 なぜかと考えてすぐに理由が思い浮かぶ、お父さんの冗談は分かりにくいから本当にやめて欲しい。

 ヨモに、お父さんが死ぬはずないと伝えると、急に顔が真っ赤になった


 あら可愛い……じゃなかった


 とても落ち込んでいるヨモ連れてお父さんの居るという場所へ行くと案の定、既に解決させていた。


 そうして当然のように盗賊騒動は終わりを迎え、本格的に外は銀世界に包まれた。


 この時期になると喋るくらいしかする事がなくなるのでお父さんの探索者だった時の話しをヨモと聞く。


 初めて知ったけれど、お父さんが進化してるおかげで私も少し力と回復力が強いらしい。

 でもいい事ばかりじゃなくて、進化は限界まで強くなると出来るので、強い私は他の人より限界が遠いらしい。


 そういった話しを興味深々に聞いていると、ヨモが強くなりたがっているという事もあり。

 暖かくなってからヨモと旅に出てもいいと許可を貰った、お父さんもヨモを認めているんだと思うと何故か嬉しくなる。


 目標はヨモと一緒に進化して、お父さんより強くなる。

実はこの物語


起、異世界に来た 承、村で助けてもらう

転、村に盗賊が 結、現実の厳しさを知る


これだけの設定で見切り発車したので

よく即興でここまで書けたなと我ながら驚いています。

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