国…それは演説「憤怒」より VIII
「あなたは、この国の…」
我に帰った私は、やっとの事で言葉を口にする。
「私たちは、この国の''イキノコリ"だ。アンタは」
少し低い声で、ぶっきらぼうな物の言い方をする人だった。
私も自己紹介をしなければ。
「はい、私は、」
「サマヨイねっ!とっても変人だけどよろしくしてやってよ!」
当たり前のように、彼女はそう答えた。
女の人は、怪訝そうに目を細める。
「妙なうさぎだな、私はアンタに聞いたんだが」
私も、おきまりの説明をした。
「それが、彼女の役目なんです。」
「ふーん。で、そっちのウサギは」
彼女の名前を私は知らなかった。これもやはり、おきまりの説明をする。
「私は、彼女の名前を知りません」
「つき物の名前を知らないのか?アンタもアンタで変な奴だな」
特にかにすることもなく、聞き流す。
「まあいい」
女の人は、足を噴水からだし、立ち上がった。裸足だった。
片足だけ足跡をつけながら、私の元へ歩いてくる。あしあとは、すぐに乾いてなくなってしまった。
そしていきなり、勢いよく手を差し出した。
私はその手を握り、握手をする。
「ハナエだ。この2匹は、カシとコイ。私のはコイ、あそこで喋ってるやつのがカシだ」
「「よろしくお願いします!」」
紺色の猫が礼をする。コイさんはメス、カシさんはオスの猫のようだ。
「こちらこそ」
私たちも礼をする。
ハナエさんは不機嫌そうにフンッと小さく息を吐いた。
「えっと…ハナエさん、とあの方のご関係は…?」
「私はあいつの妹。兄妹だ」
「そうでしたか」
すると、彼女が聞く。
「ねえ、何でお兄さん、ずっと話してるの?サマヨイのこと気づいてないの?」
「ああ。あの演説は倒れるまでし続けるんだ。私は一応監修役として、この場で聞いているんだ。で、倒れたらあそこまで行って飯を食べさせて、一睡したらまた始めるんだ。
兄さんはこの国の政治家なんだよ」
そう教えてくれたハナエさんの顔はどこか悲しそうだった。
「なるほどねぇ〜」
彼女は軽く返事をする。
「あ!ハナエ!」
「ロトが倒れました!早く行きましょう!」
突然、コイさんとカシさんが叫ぶ。
バルコニーの方を見ると、確かに男の人の姿がない。
倒れるまで演説を続けるなんて…一体何をそんなに…
とにかく今は早く助けに行った方がいい。
でも、私たちまでついて行っていいのだろうか。
人が2人しかいないとしても、宮殿にはいるのは少しためらわれた。
「分かった、行くぞ」
ハナエさんは走り出す。
「え、いいんですか?」
「いいも何も。アンタ、昼飯食ってないだろ」
「えっなぜ分かっ」
グゥ〜〜〜〜
クゥォ〜〜〜
「「あ。」」
私と彼女のお腹の虫が盛大に音をあげた。
そういえば砂嵐から結構時間が経っていたのだ。恥ずかしさで全身が熱を持つのがわかった。
「フッやっぱり、腹減ってるんだろ?外は砂嵐だ。この国の人でさえあれを恐れて外に出ない。あんな中で昼食とるようなバカじゃないだろ、アンタらは。
ホラ、行くぞ」
私は黙って頷き、ハナエさんの後を追う。ぬいぐるみを踏まないように進むのは意外と難しかった。ハナエさんはスイスイ行ってしまう。
すると、彼女が耳打ちする。
「サマヨイぃ、置いていかれてるよぉ〜」
また体温が上がった気がした。
「あ、真っ赤になった。トマトみたーい!きゃはは!!」
「う…うるさいっ」
私はなんとかスピードを上げようと、必死になった。
人前でお腹がなるのは、恥ずかしいものだととてもとても理解した。




