第五十三話 とある墓地にて
グレイノア一行は噂の幽霊が出る墓地に来ていた。
墓地の周りは昼間なのに霧が出ており薄暗く、あの塔同様異様な気配を漂わせていた。
「おお、これが幽霊か。意外とかわいいんだな」
ガンダルが近くを漂った。白くふわふわした物体を見て幽霊だと思い捉えようとする。
「いえ、それは動物の精霊です」
グレイノアは「幽霊を素手で取ろうなんて勇敢だなぁ〜」と思いながらガンダルにそれは幽霊ではないことを教える。まあ、この世界のポルターガイストはだいたい幽霊ではなく精霊の場合が多いため精霊も幽霊とあんま変わらないが、
「ああ、どおりで」
ガンダルは幽霊ではないと知った途端すぐに捉えるのを辞めた。一応精霊もかなりレアな種族なのだが、今回は幽霊だけが目当ての様だ。意外とそういう珍しい物が好きなようだ。
「本物はあそこにいますよ」
グレイノアがガンダルの左横を指さした。
「ひっゾンビ」
ルシリアが無意識でグレイノアが指した方向を見てしまい、思わず悲鳴をあげた。
「こっ、これは、グロいな」
ガンダルは腐敗した肉体が蠢いているゾンビの姿を見て少し顔をひきつらせた。
「当たり前だ。死者だぞ、死んだまま動くんだぞ。グロいに決まっている」
それを見たカマエルがガンダルを鼻で笑う。
「そりゃそうか。そんなんじゃなきゃ怖がられねえか」
ガンダルも怖がっていたのも一瞬、すぐにいつもの顔に戻り、ゾンビを観察していた。一方きなこはと言うと、
「うわぁ、人間に生き物に動物、精霊さんたくさんですね」
お化けを敢えて視界に外し、精霊さんだけをみて、全力で現実逃避していた。
「ルシリアさん」
グレイノアが完全に怯えた縮こまってしまっているルシリアに話しかけた。
「はっ、はい。なんでしょう」
急に話しかけられ少しビクッとしたが、すぐに気を取り直した。しかし、ルシリアは聞き逃さなかったグレイノアは自分の事をさん付けで読んだことを
(うわぁ、グレイノアさんが私をさん付けでよんでいます。これは嫌な予感しかしませんね)
ルシリアは思わず顔を引き攣らせそうになる。このチームの中ではグレイノアがさん付け=無茶振りというのが定着していた。
「実は俺さ一回目で、少し出しゃばり過ぎたと思うんですよね」
そんなことは気づいていてもお構いなしに、グレイノアが話を続ける。
「そんなことはありませんよ。むしろ私の代わりに幽霊を祓ってくれて嬉しかったぐらいです」
ルシリアはポーカーフェスでなんとか笑顔を保っているが、心のなかでは
(あなたが出しゃばっているのはいつものことでしょうに)
とめちゃくちゃ毒づいている。ちなみにグレイノアは心の中をスキルで読み取っているため、ルシリアの考えは丸わかりだ。
「そう言ってくれると嬉しいね。でもさ、やっぱり幽霊を祓うのは聖女の仕事ですよね。今回の幽霊退治、ルシリアさんに任せてもいいでしょうか」
グレイノアは胡散臭い笑顔でニコリと笑った。
「はい、いいですよ。私は聖女なんですからそれぐらい当然です」
聖女であるため極力、人の願いを断るわけにはいかないルシリアはいやいやながら承諾するが、心の中では、
(ふざけんな。あなたはサボりたいだけでしょう)
不満と怒りでいっぱいのようだ。まあ、当たり前か。
(グレイノア⋯ルシリアが幽霊嫌いを知ってその所業。さすが、俺の友、俺より悪魔だな)
それをずっと見ていたイヴァイルは心の底からグレイノアの巧妙な話術に感心した。こういう所に感心するのはさすが悪魔と言ったところだろう。
「フォフォフォ、ルシリアさん、私が手伝いますよ」
震えながらも幽霊を退治しようとするルシリアを見てバセデが手伝いを申し出た。
(ああ、やっぱりバセデさんは優しい人ですね)
それを聞いたルシリアは心の底から感動した。
「じゃっ二人ともよろしく頼んだよ」
そう言うと、グレイノアは片手を上にあげその手で荒神を持った。するとそこに雷が落ちる。
「以外です私の攻撃を軽々と止めるなんて。まあ、そんぐらいの実力がないと私を相手にピンポイントで威圧するなんてことしないか。それで、あなたが今回の勇者ですか?」
雷と共に剣を振り下ろしながら落ちて来た女性がグレイノアに問いかける。
「残念、俺はあなたのお目当ての勇者ではなく賢者ですよ」
グレイノアは楽しそうに口角を上げる。少しは骨のある戦いになりそうだと。




