第四十九話 ルシリアの怪我
グレイノアは和解させるべく今までのことをリュブナンにはなした。
「えっ、バセデは人間と付き合ったの!?」
グレイノアから一通り話を聞いたリュブナンは目を見開き驚いたあと、バセデに本当かどうかを問うた
「フォフォフォ。グレイノアさん、でまかせはよくありませんよ」
それを聞いたバセデはグレイノアを笑顔で睨みつけた。
「いえ、俺は今ではイチャイチャするほどの仲と言っただけですよ」
グレイノアは嘘はついてないと首を振る。どうやら、リュブナンはグレイノアの話を少し歪曲してしたまったようだ。
「イッ、イチャイチャなんて、そんなふしだらなことしてません」
ルシリアは勢いよく立ち上がってグレイノアに抗議する。
「さすがにそれは無理があるぜ」
それを見たイヴァイルは手を振って否定してからかう。イヴァイルの口は少しニヤけていた
「この前なんか仲良く一緒に新しく買うナイフを選んでたもんな」
カマエルもイヴァイルに便乗してからかう。
「え、夫婦じゃん!!」
そして配慮も遠慮もないリュブナンは思ったことをそのまま口にだした。
「フォフォフォ、死にたいのでしょうか?」
あまりにも無神経な発言にバセデが激怒する。
「やれるものならね!」
そのままバセデとリュブナンは戦闘を始めた。
「バセデさんいつもより殺気立っていますね」
ルシリアがいつもは冷静なバセデが今日はリュブナンと喧嘩していることに疑問に思い首を傾げた。
「まあ、この旅では自分と同じぐらいの実力者と戦う機会がなかったからでしょう」
グレイノアがルシリアの疑問に答えた。
「まあ。大体バセデの相手になれるのはあきらかに格上の俺達か、それ以外はバセデの足もとにも及ばない雑魚だけだもんな。それにこれが昔は日常茶飯事だったよ」
そういうながら今にも喧嘩しそうな二人を見て少し面倒くさそうな顔しながらあくびを一つした。
「カマエルも俺らには一歩劣りますが、バセデぐらいなら一瞬で終わらせる実力持ってますしね。おっと、ルシリアが自分ではバセデにあの感情を引き出すことができないと知り、リュブナンに嫉妬してますね」
グレイノアは正確にバセデを分析する。そして、ルシリアの顔が少し嫉妬の色に塗られたことに気づき思わずニヤけた
「私としては早く付き合えばいいと思うのだがな」
ここでガンダルが堂々と爆弾を投下した。この勇気ある行動にグレイノアも少し驚きである。
「ガンダル?いつまでも子どもに恐怖を抱いているあなたには言われたくないのだけど?」
そして案の定、ルシリアはあきらかに怒気をはらんだ笑顔でガンダルに問いかけた。
「…そっそうだな。すまなかった」
ガンダルはそのあまりの怒気に思わず恐怖して、声が上ずった。
「なっなあ。グレイノア、俺は天使だから知らないけど。両思いは早く、くっつく必要あったりするの?」
カマエルはルシリアの怒気に少し怯えており、それを紛らわすためにグレイノアに話しかけた。しかし、その話題は完全にアウトであり、ルシリアの怒りの標的となりカマエルは思わず「ひッ」と小さく悲鳴をあげた。
「そんなことはありません。人それぞれのですね。俺はゆっくりでいいと思いますよ。まあでも、焦れったいのを急かすのは楽しいですから」
そんなカマエルは差し置かれ、グレイノアは真面目に質問に答える。そして最後の自ら進んで言った爆弾発言に標的はグレイノアに移った。
「グレイノアさん?まさかあなたも私たちをからかおうとしてるわけないですよね?」
そういうルシリアの顔は笑顔だった。だが、目が完全に座っていた。
「もちろん、からかおうと思っていますよ。人の恥ずかしがる姿は密の味♪ですからね〜」
しかし、グレイノアはルシリアの怒気を気にせず正直に自分の思っていることを話す。
「お前、よくルシリアの怒気を平気で受け流さるな」
怯えも恐怖もしないグレイノアを見てガンダルは思わず感嘆の声を上げる
「俺はいつだって半分は必ず冷静ですから」
そう、今のグレイノアには恐怖は心配は一切しない、いつだって冷静だ。半分は
「?どういうことだ?」
ガンダルはグレイノアの途中の言葉を疑問に思った。いや誰もがグレイノアの「半分は」という言葉を理解できなかったであろう。
「どういうことでもいいではありませんか」
しかし、グレイノアはこれ以上教えないと言わんばかりにガンダルの質問を適当にごまかす。
「そうだね。正直グレイノアのことなんてどうでもいいし、それよりもそこのルシリアちゃんて言う女性は何で生きてんの?確実に毒を纏った拳で心臓を貫いたと思うんだけど」
すると、いつの間にか喧嘩は終わり、仲間の輪の中に混じっていたリュブナンが聞いてきた。
「え?私って、本当に心臓貫かれてたの?」
ルシリアは目を仰天させた。正直ルシリアはリュブナンの顔が恐怖の笑みに変わったあとに、いつの間にか別の所に移されていて、そのときには体はもう元通りだったから何があったのか全然わからないのだ。
「ああ、確実に貫かれてたぞ。絶対に死は免れないと思っていたからな。まあ、だがカマエルが急いで俺達が戦いに巻き込まれない所に移してくれた後に見たときにはもうどこにも貫かれた後はなくなってたけどな。カマエルはなんか気づいたか?」
ガンダルはルシリアの問いかけを肯定し、あの時の状況を的確に話した。
「⋯いや、俺も一瞬のことで気づけなかったな。まあ、きっと神の加護だろ。聖女だし、死んだけど神によって生き返されたとか」
カマエルはなにか意味ありげに始めは沈黙していたが、首を捻りながら自分の予想を話す。
「なるほど、やはり神様は素晴らしいのですね。今もなお、自分を生贄にささげているのにしっかりとたかが一人のために自分の能力を使って信者を生き返らせるなんて」
ルシリアはカマエルの適当な予想を本気で信じて、今日、ニ回目の祈りを捧げた。
(自分を生贄?もしかしてこいつが崇めているのは⋯いや、まさかな)
カマエルは心の中で彼女が崇拝する神に思いあったのだが、もうその神を信仰するものはいるはずもないと思い直して、自分の考えを打ち消した。




