第四十五話 逆蝠くん
グレイノアはこっそり吸血鬼の国に忍び込んでいた
「さてと、お目当てのものはどこでしょう。あそこですね」
彼はボッチだった歴が長いため独り言が多い。あと普通にイケメンなためいつもの如く周りの視線をとてつもなく集めている。顔が整っている人が多い吸血鬼すらも視線を集めてしまう美貌はもはや逆に人を遠ざけていた
「すみません。一つそのぬいぐるみもらえませんでしょうか?」
グレイノアが指さしたのは白いコウモリのぬいぐるみだった。見た目は子どもが泣いてしまいそうなほどリアルだ。目、耳、鼻、本物と劣らないくらいにはきれいに出来上がっている。名前は逆蝠くんだ。ちなみになぜ名前が漢字なのかと言うと転生者が提案してぬいぐるみだからである。まあ、グレイノアはそういう経緯がないと買おうなんて思うわけないが
「…////はっはい。何個買いますか?」
グレイノアのあまりの美貌に定員さんの顔がポッと赤く染まる。日常茶飯時だ
「二つでお願いします」
グレイノアは満面の笑顔で言った。定員さんは思わずその笑顔で昏倒しそうになったとさ
「ありがとうございました」
こうして目当てのぬいぐるみを買うことに成功したのであった。ちなみにイヴァイルに正面から突撃させたのもこれが大部分を占めていたりする。まあそんなことはイヴァイルも知っていて、そのため今からしっぺ返しが来るのであった
「皆さん。私魔王イヴァイルは吸血鬼と同盟を組みました。そして今から報告があります今私が魔法を打つ方向に人間が一匹紛れています。捕らえろ〜!!」
大きなイヴァイルの声とともにグレイノアの頭上を炎が過ぎ去った
「…ッ、やってくれましたね」
グレイノアは自分を侵入者だとバラしたイヴァイルを忌々しそうに遠目で睨みつける。
「おいおい、お兄ちゃんやってくれたってのはどういうことだい。まさか君が人間なわけないよな」
「きれいにお前の頭上を通り過ぎていったぜ」
「…まあ、みなさんには一度気絶して貰いますね」
グレイノアが面倒だなと思いながらも周りの吸血鬼の脳に一つひとつに膨大な電気を入れ一斉に気絶させる。
「ハア、さいごの最後にバラされました。まあ、自業自得ですが。まあ援軍が増えないうちに帰りましょう」
そう言ってグレイノアは「あと思う少しだったのに」と思いながらも自分お気に入りの羽を広げ、吸血鬼の国から飛び去って行ったのだった。
………吸血鬼城
「…フッ、グレイノアが逃げていくぜ」
イヴァイルはしてやったりとガッツポーズをしていた。よほどグレイノアに一矢報えたのが嬉しかったのだろう。それを見てゼクセルは「本当に同盟を組んでよかったのかな?」と思ったのであった
「お前は報告のついでに仲間の潜入を暴露とは…まあ、よい。それより同盟を組むのならお前の部下をどうにかしろ。人間の国だけならまだしもやつはこっちでも暴れておる」
ゼクセルはそう命令すると、鋭い目つきでイヴァイルを睨んだ。
「ん?ああ、そういやあ野放しだったな」
イヴァイルは完全に彼女の存在を忘れていた。
「ああ、ずっと迷惑を被っておる。勇者なんだろう部下の暴走は上司が止めるべきであろう」
ゼクセルがさらにより強く睨みつけた。
「分かってるさ。あいつはおれがどうにかする」
イヴァイルはやれやれといった感じだ。
「やらなければ、同盟の話はなかったことにするからな!!」
ゼクセルの声のトーンが少し上がった。
「はいはい。それじゃあ、俺はこれで失礼するね」
イヴァイルはさっさと話を切り上げ例の部下を止めに行くことにした。
「ああ、お前のリーダーによろしくと伝えておいてくれ」
ゼクセルは少し安心した。彼は本当に迷惑をしていたようだ。
「おうよ」
イヴァイルも羽を広げて仲間の元にもどるのであった。道中、「どうやったらあいつが納得するかな」と考えながら部下の説得に頭を悩ませながら。
「⋯⋯⋯あいつの羽が一部白くなっているな。⋯⋯⋯勇者になったことで種族が多少変化したか」
ゼクセルは去っていくイヴァイルを見続けながら一人で呟いた。




