第四十四話 性格は変われる
前回の続き、イヴァイルは吸血鬼の王城に攻め入っていた。そして今イヴァイルは吸血王の前にいる
「…最古の魔王、イヴァイルよ。きさまは一体何をしてにきた」
吸血王が怒りをあらわにしながら問いかけた。かれは吸血王ゼクセル・ヴァンパイア。冷徹な吸血鬼の王である。髪は濃い紫で目は相手を貫くようにに鋭く。普段は冷酷な面持ちだ。そして彼の趣味は生きたままの人間を襲い、血をそのまま吸うことで、その血の飲み方が一番美味なのだそうだ。なのでいつも執事に人間を生け捕りにさせて貰っている。
「そう、緊張すんなって、なあに同盟を組みに来ただけだ。あのうざったらしい邪神にそろそろ引導を渡したい」
イヴァイルは用意された椅子にどっかり座り、おどけた様子で要件を伝えた。
「…そうか。邪神への引導はいつかはやると思っていたよ。だがお前が仲間を集めるとは頭でも打ったのか………いやお前は頭ぐらいでは気が狂わないか」
ゼクセルは真面目な顔で言う。本気でイヴァイルがどうしてしまったのか考えているようだ。まあ、普通なら今この時点でゼクセル死にかけているはずだから…
「いや、リーダーの命令だ」
イヴァイルも真面目に否定する。自分の今の状態が彼にとってありえないことだと分かっているからだ。こう見えて彼は賢い
「…お主にリーダーだとそれこそ異常だ。まさかお前より強いやつが神以外にいるというのか」
ゼクセルの頬に一筋の汗が流れる
「ああ、俺より強くはないが同じくらい強いやつがな。今回の急な突撃もあいつの命令だ」
「………」
ゼクセルはイヴァイルが自分と同じくらい強いと認めたことに絶句した
「まあ、お前の気持ちもわかる。さすがにこれは勇者がやることじゃないな」
「勇者だと、フン、まさか自分を善人とでも言うつもりか?」
ゼクセルはイヴァイルを鼻で笑う。彼はもう目の前に何がいるのかを完全に忘れたようだ
「ん?この情報はお前の城まで届かなかったのか?まあ、いい俺だって適任じゃないと思うさ。だがな聖剣に選ばれてしまったんだよ」
そう言ってイヴァイルは聖剣ノーデンスを見せる。
ヴァンパイア5世は目を疑った。しかし、その剣から放たれる癒しのオーラは地味に吸血鬼の体を蝕み、その剣が聖剣であることを決定付けている
「………なるほど、世界は壊れたか。………いい人生だったな」
ヴァンパイアは憔悴しきったようすで後ろを向き顔を上にあげた
「バグだと思うのは分かっているだが選ばれた以上、あの邪神を本気で殺る必要がある。勇者としてな」
イヴァイルは自分の覚悟を示した。彼は意外と交渉?が得意だった
「勇者は魔王(お前)を倒すのが役目ではないか。ならお前は、勇者として自殺しとけ、大体二世目の吸血王はお前が殺しただろう」
もちろんゼクセルは曾祖父さんである二代目が彼に殺されたことなど少しも気にしてない。彼にとって弱いものは淘汰されるだけ、例え自分の親がイヴァイルに殺されていたとしてもそこまでイヴァイルを憎まなかったであろう。ただ、目の前に勇者になった魔王に試しに嫌味っぽいことを良い反応を確かめるためである。
「そのことは、謝ろう。五千年以上の話しだがそれでもその恨みは確かに忘れられるものではない。すまなかったな。今ならむやみに人を殺したことは間違いだったと思うよ」
イヴァイルも試されていることに気づき取りあえず謝罪した
「…更生したと言うのか。ありえん。お前は魔王だろう?魔王は自分が犯した罪なんてどうでもいいだろう!!」
どうせ、「昔殺した人間なんて覚えていない」とか返されるだろうとおもっていたゼクセルは彼の言葉に本日三度目の驚愕を顕にした
「更生はしてない。昔殺したことなどあんまり深く考えてないし実は取りあえずという感じで謝罪した」
イヴァイルはすぐに自分の思惑を話した。これは話してもこれからの同盟に支障はでないと判断したからだ
「そうだよな。生き物の感性がそんな簡単に変わるわけないもんな」
ゼクセルはイヴァイルが変わっていないことに少し安堵した。実は彼絶対なる悪であるイヴァイルの密かなファンであった。しかし次の言葉でよりショックを受けた
「ああ、だが仲間や孤児院の子どもたちと触れ合って、ああ、弱者とはこういう触れ合い方があったんだなと思ったよ。だから取りあえず謝罪した」
イヴァイルは目を細めて孤児院の子どもたちを思い出しすこし微笑んだ
「…ハハ、そうか。君は変わってしまったんだね」
ゼクセルは確信した。だが何でだろうゼクセルはこういうイヴァイルも悪くないと思った
「ああ、そうだな。いい仲間を持ったんだ」
イヴァイルは満悦の笑顔で言った
「…そうか。今の君なら裏切られたりしないだろう。いいだろう邪神討伐を協力しよう」
ゼクセルは一つの契約書を差し出す。こうやって悪魔みたいに契約と言っていることが彼がイヴァイルに憧れているという証拠であろう。
「ああ、これからは仲良くしようではないか」
イヴァイルは契約書にサインした。こうして悪魔と吸血鬼の協定が結ばれた




