第三十話 グレイノアの過去
『またミスってやんの』『障害者』『誰やお前』『ブサイク』
(…うるさいな)
グレイノアは昔の事を思い出していた。自分が異世界に行く前の悪口を思い出す。
※こっから先は憂鬱になるため飛ばしたい人は飛ばしてください。ただグレイノアが自分が嫌いだったというのだけ理解してください。
…自分は本番で失敗するタイプだった。
いや、本番どころかなにかやろう息込んだら必ずそれをやることが一般的に常識外れで周りから笑われるということだった。
そのたびに失敗したと後悔する。
なのに次の経験に活かす事ができない。
そういう自分が嫌いだった。
努力もすぐに諦める。努力もしないのだから何かに突出することもない。楽な方ばっかに逃げる。自分より下の人を見て心を安心させる。
クズな自分が嫌いだった。
それプラス一般よりも少し常識外れな自分が嫌いだった。
でも、それで前世での人生は悪いことばっかだったかというとそうじゃないむしろ楽しいことも多かった。人との関係も悪くはない方だと自負している。いい友達とも巡り会えた。
でもそれが逆に自分を嫌いにさせ、後悔の渦で苦しめた。このまま友達に迷惑ばかりかけてしまっていいのかと。
死にたいとさえ思った。だが死の恐怖と身近な人が傷つくかもという不安でそれもできない。ずっと自分が嫌いだった。
普通に振る舞おうとするとそれができない。必ずボロが出る。逆に周りに縛られず自分勝手に生きようかと思ったが、それも周りからの視線が気になり萎縮してしまう。
結局何もかも中途半端なままで元から読書が好きだったこともあり、陰キャになってしまう。小学が陽キャだったこともあり、心のセーブも効かず。性格も中途半端そういう人生だった。
何もかも自分が嫌いだった。自分の性格を憎んだ。取り柄がない性格を憎んだ。
それ故に異世界に行けると聞いて真っ先に選んだのが性格を変更することだった。
少し後悔している。でも、自分がなりたかった性格になれて心のそこから喜んだ。これであの惨めな自分を辞められると。
そして彼は自分の現世にいたときの人生を修行することによって記憶の奥底に沈め、完全に過去の自分を閉ざしたのであった。
(だが、いい加減。自分の過去から目をそらし続けるわけにはいかない。向き合わないと)
そしてまた自分の過去を思い出す。自分に言い聞かせる過去があってこその自分、乗り越える先に自分が求める真なる力があると
「ふう、瞑想終了。もう過去に遺恨はなし。さあ新たなる自分を求め、智慧の書を拝借しましょうか」
グレイノアは暗い暗い闇の中一人で不敵な笑みを浮かべた。智慧の書の取得には強い意思が必要だ。だが過去の迷いを振り切ったグレイノアにもうそれは障害になりえないだろう。
彼は必要なもの全てを取り込み強くなる。
過去もスキルも自分も全て取り込む。
それはとても強欲で、とても人のやることは思えなかった。
彼は強くなることに一切の迷いを出さない。それが彼の強みであった。
…闇の中をひたすら歩き一時間ぐらいたっただろうか、相変わらずグレイノアの足は軽い。
そしてグレイノアは闇を抜け、本棚が無限に並べてある部屋についた。
そして今、目の前には一冊の本が台の上に開かれたまま置いてある。これこそがグレイノアが求めていた智慧の書、グレイノアが智慧の書に手に取る。
一瞬にして膨大な量の情報がグレイノアの脳に流れ込む。常人ならば脳がパンクしてもおかしくない量。元賢者のあの老人だってあまりの量に脳がフラッシュバックした情報量。
しかし、グレイノアにとってそんなことは関係ない。グレイノアは何食わぬ顔でその情報を完璧に脳内に収める。脳も異常を起こしていない。
その以上な脳のデータ量はグレイノアのスキルが関係していた。
彼のスキル底なしの読み取り
これは自分が支配した空間の全てを細かく読み取ることができる。
その細かさは上記を逸しており、風向き、元素の数、範囲内の生命体の能力や実力だけではなくその生命体の心の中や記憶まで読み取ることができる。
そのスキルで常に半径20の全情報を読み取っているため、常時膨大な情報にさらされており、たかが世界中の魔法すべてが脳内に入くるなどグレイノアにとって特に問題ないのである。
「ふう、これで全てっと。さてとあの扉からプラチナの不安そうな気持ちが感じられるし、みんなの場所に戻るとしますか」
すべての情報を脳内に収めグレイノアはみんなの場所へと戻るのであった。




