第二十八話 元と新の戦い
イヴァイルと元勇者はしばらく普通に剣を打ち合った。
「……ふむ、そなたの聖火の火は弱いのう。あまり善人の心を持ち合わせていないということか、それとも過去に何かがあったか。しかし、それでは魔王に致命傷を与えられんぞ」
元勇者が忠告する。
「わかっているさ。まあ、こればかしはどうにもなんねえだけどな」
イヴァイルが少し自嘲気味に答える。確かに、悪魔が完全なる善人になるのは確かに不可能だろう。
「しかし、模倣力は素晴らしい。もうすでにわしに教えられすことがなくなったわ!」
そう言って元勇者はイヴァイルを寛大に褒めた。
「そうか、なら100年前お前が唯一俺を傷つけた技で決めてやる」
イヴァイルもそこは褒められて嬉しそうだ。そしてイヴァイルはノリノリで自分の技を見せる。
「なっ、その構えは」
それは100年以上前に元勇者が魔王を倒すために生み出した技の構えであった。
「いくぞ」
剣技・勧善懲悪
一瞬にして元勇者が切りきざまれる。それはまさに自分が作った奥義。イヴァイルが放った技は、動き出しから終わりまで全く持って同じの動きであった。
「グハッ、おみごと」
勝負はついた。元勇者は無数に傷を負ったがこの空間の効果で回復する
「傷を癒す効果が付与されているとは、やはり今回の勇者パーティーは強者揃いじゃのう」
元勇者は疲れたのか床になって話した。
「どうだったか。俺の勧善懲悪は」
イヴァイルが隣で座りながら聞く。
「及第点だ。技術は完璧に模倣されていたが、やはりというか聖火の威力が弱いのう」
「さっきも言ったがそれはどうにもなんねえな。まあ。でも、そこらへんは安心しろ策がある」
「そうか。なら期待しておるぞ。そなたらが魔王を打倒したという報告を受けるのを」
そう言って元勇者は立ち上がり帰って行った。
「…あいつ、最後まで俺が魔王だと気づかなかったな」
イヴァイルはいなくなった元勇者の場所を眺めながらボソリと呟いた。
………カマエルと元剣聖の空間
「…手合わせ、お願いできますか」
カマエルが元剣聖に剣を向ける。
「よかろう。そなたの実力を見せるが良い」
元剣聖もそれに答える。ここは両方とも律儀らしい。
「では」
カマエルが先制を仕掛け勝負が始まる。お互いに相手の技量を見極めようとする。
そして、しばらく打ち合って元剣聖側があることに気づく。
「これは!?伝説の流派、努神二刀流!?」
「え、伝説だったの?」
「言い伝えでは、努力と忠誠心で有名な天使カマエルが作った流派だとか。一体誰から教わったのかい!?」そして元賢者はあることに気づき手を止めた「…ん?カマエル?」
「ああ、バレちゃったか〜。そうだよ俺が天使カマエルだ。まあ、今は堕天使なんだけどね」
そう言ってカマエルは白と黒の四枚の翼を広げる。
「嘘だろう!!あのカマエルが人間に味方したのか」
元賢者はあんぐりとして驚いた。
「まあ、そ言うことなんだよね」
「…そうか。今回の勇者にはそこまでの魅力があるのかい」
「魅力っていうか実力?実際俺さ、グレイノアと戦って一回負けてるんだよね。それよりもさ、お前どこで俺の剣技を見たの?」
カマエルが問いかける。
「昔、一度だけセレリアの信仰者の中でかなりの実力者と手合わせしたことがある。その時の相手が努神二刀流の流派の人だったんだ。確か、シェカマと言う名じゃったのう。その剣技には人の努力の結晶が詰まっており、素晴らしい剣技じゃった。わしも負けてしもうたわい。さて、戦いに関係ないことを話してしまったのう。では、続きと行こうではないか」
そう言って元剣聖はカマエルに切りかかった。勝負は一瞬できまった。
努神二刀流 奥義 神域斬
目にも止まらぬ早さで元剣聖を切り刻む。
「…さすがは流派の源、天晴なり」
ドサッ、元剣聖が力なく地面に伏せる。
「傷口を治して、仲間の元に送るね」
カマエルが傷口に回復魔法をかける。回復魔法人間ならば神などを信仰して神聖魔法にしないと使うことが出来ない、高難易度な魔法。しかし、天使や悪魔などの上位種は当たり前のように回復魔法が使えるのだ。グレイノア?アレも上位種。
「そうじゃのう。わしはもう老いぼれじゃ、そうしておくれ」
こうしてカマエルは元剣聖を仲間の元に送ってやった。
『俺はカマエルの剣術を超えて最強の剣士になるんだ』元剣聖がいなくなった後、カマエルの頭に一人の少年が浮かび上がる。
「…そうか、あのクソガキが………俺の剣技を後世に残してくれてありがとな」
カマエルは誰もいない所でそう呟いた。




