第二十六話 過去の勇者
グレイノア一行は国境付近に差し掛かっていた。
「なあ、どこに向かってんのか教えてくれないか」
イヴァイルがグレイノアの後ろから聞いた。
「ドワーフ王国です」
グレイノアが端的に答える。
「あの洞窟に住み着いてる奴らか」
イヴァイルの彼らへのイメージはとてつもなく酷かった。
「そうです。まあ、用があるのはその国ではなく洞窟の奥にあるものですけど」
「…智慧の書か?」
イヴァイルが顎に手を当てながら問いかける。
「そうです。あの本なら俺の脳の代わりになる」
「確か、すべての魔法を書き留めている本で別名賢者の書、能力はスキルや魔法の効力をあげるだっけ」
「そうですよ」
「へ〜グレイノアは賢者になるのか」
ここでカマエルが会話に割り込む。
「もう賢者ですよ。魔法を百個覚えましたからね。それよりあなたは剣聖を持っていますか」
「もう持ってるぜ。確か、空間を切ることで手に入れることができる豪剣の勇者バージョンだよな」
「そうそう、勇者系職業スキルの入手条件で一番簡単なやつです」
「ほんと、神が決めたにしてはは他より入手条件簡単にしすぎだよな。まあでも、この勇者系職業スキルは聖女を除いて勇者の仲間にならないと下位互換のスキルしか手に入らないしな〜」
そう言ってカマエルは天を見上げあくびを一つした。
「…なあ、空間を切るって簡単なことだっけ」
ガンダルは話のスケールに追いつけずにいた。
「絶対に違うでありんす」
自分と同じ状況であるきなこが全否定した。
「ふふ。ガンダルさん、きなこちゃん、ここでは常識は早めに捨てたほうがいいですよ」
そう言うルシリアも賛同者を得られて嬉しそうだ。
「「…そうか(でありんすか)」」
しかし、そんなことは知らずきなことガンダルは前の化け物どもに呆れた。
「空間を切るのを簡単とは今年の勇者パーティーは強者揃いのようですのう、元勇者よ」
不意に後ろから声がした。
「そのようじゃのう。元剣聖よ」
後ろを振り向くと予想通りそこには元勇者パーティーがいた。
「ヒャヒャヒャ、その上今回はお偉いさんたちのようじゃ」
しっかりと元賢者、現在迷いの森の魔女もいる。
「あ、敗北者」
なんと珍しいことにグレイノアが出会い頭に元勇者達を煽った。
「ヒャヒャヒャ………誰がじゃ!!」
一番短気である元賢者が切れる。
「やれやれ、生意気な小僧じゃのう。国の命令も無視したようだし」
元勇者は肩を竦めている。
「二週間も迷子になられちゃねえ」
グレイノアは更に煽る。
「わしゃ、迷子になっておらんぞ。それにいざとなったら転移魔法でお前らの所に行けるわ」
すかさず元賢者が言い換えしてくる。
「じゃあ、一週間もわざと寄り道していたのですか」
「ウグッ、生意気な!」
グレイノアの的確な反論に賢者は声をつまらした。
「まあまあ、本当のことじゃ。それより挨拶していませんと、始めまして私たちは前勇者パーティだ。左から順に勇者、剣聖、賢者となっておる。よろしくな新たなる英雄たちよ」
そう言って元勇者は握手も求めた。
「え、思っていた以上に老いてた」
ここで、カマエルがつい口を滑らせ爆弾を投下した。
「失礼ですよ。カマエルくん。始めまして俺達が現勇者パーティーです。俺は賢者のグレイノア、さっき老人扱いしたのが剣聖のカマエル、そして今俺の右にいるのが勇者イヴァイルです。よろしくお願いします」
しかし、ここで先程までさんざん元勇者達を煽っていたグレイノアがカマエルを注意し、丁寧に挨拶を返した。
「いや、初めの一言が『あ、敗北者』にはいわれたかねえよ」
カマエルが突っ込む。
「同感だ」
イヴァイルもカマエルに同調する。
「それもそうですね。さて、じゃあ勝負をしましょう」
グレイノアは急に不敵な笑みをうかべ、同時に空間が移される。
「「「「え?」」」」
その場に残されたガンダル、プラチナ、ルシリア、きなこが呆然とした。ちなみにバセデも残されたが彼はいつも通り冷静に佇んでいただけだった。




