第二十五話 聖女は執事が好きらしい
「お〜いグレイノア〜」
カマエルが大声で呼びながら、礼儀もクソもなく遠慮なしになんの前触れもなくドアを開いて部屋の中に入ってきた。
「なんですか。カマエルさん」
しかし、こういうところは大人のグレイノア、気にせずプラチナに茶を出させる。
「いつ出発すんの?もうかれこれ一週間だぜ」
カマエルが質問する。
「一週間しかたって無いじゃないですか」
グレイノアが時間感覚がおかしい返答をする。
「チッチッチッ、時間は有限なんだぜ」
カマエルが当たり前の事をいう。
「それが今までずっと怠けていたカマエルが言うことですか?」
グレイノアが呆れた口調で言った。
「グハッ。お前、さらっと俺の急所を刺すよな」
カマエルがわざとらしくお腹を抑える。
「実を言いますと、前回の勇者パーティーが我ら新勇者パーティーに会いに来るから待っとけと国王に言われていまして」
少し茶番を挟んだがグレイノアがしっかりと理由を説明する。
「お前、王の言う事とか聞くんだ」
カマエルが信じられないという感じでみる。
「いえ、勇者の先輩として学びたいことありますので」
まあ、グレイノアが誰かの指図を聞くはずもない。
「なるほど」
カマエルも納得した。
「あと、イヴァイルに負けて逃げた勇者先輩達を見てみたくて」
グレイノアは不敵な笑みを浮かべ本音も話した。
「性格悪」
カマエルはあまりの腹黒さにドン引きした。
「でも、あまりにも道草食っているので、出発しようと思います」
「なんで道草食ってると思うんだ」
カマエルは聞き返した。
「魔法で先輩勇者の場所を把握してるので」
グレイノアがさらりとヤバいことを言った。
「ストーカーかよ」
思わずカマエルは突っ込む。
「あいにく私はプラチナがいるのでそれはありえません」
「お前、本人がいる前で堂々と言うのか…」
「当たり前じゃありませんか」
「何が!」
カマエルは思わず全力でツッコんでしまった。相手にしたら負けなのに…
………旅の支度はあっという間におわり。
「という訳で出発です」
グレイノアが毎度の事出発の合図をする。
「また家を離れないといけないのは寂しいですね」
ルシリアは悲しそうな顔をした。
「フォフォフォ、私が転移魔法でいつでも家に帰れるようにしましょうか」
バセデが提案する。
「ほんと!嬉しいわ」
暗い表情は一変、ルシリアは「ぱあー」と輝かせる。
「うう、幼馴染が青春だなんて」
きなこはそんな二人の姿をみて感動の涙を流した。
「ルシリアって中年好きなんですね」
グレイノアがさらりと爆弾を投下した。
「お前、時々笑顔で堂々とからかうよな」
カマエルがまたもやドン引きした。
「ハッハッハ、旅に恋愛は付き物よ」
ガンダルは寛容的だ。
「まさか、バセデお前が恋するとはな」
イヴァイルは感嘆している。そして五者五様の生暖かい視線をうけ、
「うぅ、みんなに微笑ましい目で見られて恥ずかしいです」
とルシリアが顔を手で覆う。
「フォフォフォ、わしもこの歳で恋するとは思いませんでしたよ」
バセデも少し気恥ずかしそうだ。
「朗報です、二万歳で初恋は世界初ですよ」
グレイノアはさらに爆弾を投下する。
「フォフォフォ、嬉しいのやら悲しいのやらですぞ」
バセデもこれには微妙な顔。こうして旅は再開していく。




