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空間の賢者と勇者に選ばれし魔王  作者: 砂糖キビ
第一章始まりの旅偏
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第二十四話 堕天使と魔王

 カマエルはカチャカチャと音が聞こえ目が冷めた

「起きましたか、紅茶を用意しておきましたよ」

 起きるとグレイノアが紅茶を差し出す。

「…ああ、ありがとな」

 寝起きで頭が回らないカマエルは感謝を述べて茶を飲もうとする。そしてカマエルは違和感に気付く。

「………俺の家真っ二つになっていなかったか?」

「俺が修復しておきました」

 グレイノアが自分の分の茶を飲みながら答える

「?とき戻し魔法でも使ったのか」

「いえ、実は転移する前からずっと切れた状態で魔法で空間を固定して帰ったあと修復しました」

「すげえな、俺と戦いながらずっと魔法維持していたのかよ。ていうかお前武術も魔術も同じぐらい得意だろ」

「ええ、特に空間魔法は得意魔法でして」

「それで俺と技術も同格とかばけもんだろ」

 そう言ってカマエルは肩をすくめた。

 そしてグレイノアを改めて見返し、カマエルはあることに気づいた。

「…お前もしかして神の使徒か」

 神の使徒とは端的に説明すると異世界人の別名だ。この世界に来る異世界人は必ず神の意思によってこの世界に連れてこられる。神の意思によって連れてこられた異空の人間。故に異世界人は神の使徒と呼ばれているのだ。そして、それはグレイノアも例外ではなかった。

「よくわかりましたね」

「道理であったときからセレリア様の気配がするわけだ。お前、転生者だったわけね」

 カマエルは納得とばかり頷いた。

「そうです。故に私はあなたを仲間にしたかった」

「なるほど、主から私のことを聞いたわけね。知ってんならさもう少し言い方どうにかならないのかよ」

 カマエルが戦いの会話を思い出返しながら、呆れ顔で抗議する。

「まあ、言い過ぎたのは自負しています。しかし俺はあなたにしっかりと自分に向き合ってほしかったのです」

「確かにね。俺もあれくらい言われないと、お前の言う事に耳を傾けない自信があるね」

 カマエルはグレイノアの説明に納得した。

「ええ、俺の言葉に耳を傾けてほしかったので」

「お前にはかなわんな」

「さて、俺達の勇者を紹介するので着いてきてください」

「お前じゃなかったの」

「俺に勇者は向いていませんよ」

「そうか〜?」

 カマエルは不思議そうにグレイノアを見つめた。

………

「紹介します、彼はカマエル、彼はとてつもなく怠惰だけど強いから頼りになりますよ」

 グレイノアの紹介はとてもひどかった。

「カマエルだ。よろしく」

 しかしカマエルは気にせず頭を下げる。

「俺の仲間を紹介しますね。今、キッチンで俺のために紅茶を作っている銀髪の美女が俺の部下プラチナ、一番右の席に座っているのが聖女ルシリア、その左に座っているのがきなこ、ルシリアに今紅茶を出したのがバセデ、そして一番左に座っている厳つい男が戦士ガンダルです」

 グレイノアが順番に紹介していく。

「よろしくお願いします」

 プラチナがスカートを少しつまみ優雅にお辞儀した。

「仲良くしましょうねカマエルさん」

 ルシリアは微笑んだ。

「よろしくでありんす」

 きなこも丁寧にお辞儀する。

「フォフォフォ、合うのは初めてですね。バセデです。あなたの話は魔王城でよく聞きました」

 バセデもお辞儀する。

「よろしく、ガンダルだ。グレイノアが言うほどの強者なら今度手合わせを願いたい」

 ガンダルは座ったまま軽く会釈した。

「そしてテーブルの奥の左に座っており、今何故か、とても無口な彼が新しい勇者イヴァイルです」

 グレイノアは最後に自分の親友を紹介した。

「…久しさしぶりだな」

 イヴァイルは目をそらしながら罰が悪そうに言った。

「…あっああ、ひさしぶりだな」

 空間が沈黙に覆われる。皆も急に気まずくなったため何も言えなくなり、ただ気まずい時間が過ぎていく。

 しかしここでグレイノアが沈黙を破った。

「あ〜、辛気臭くてやってられませんね。まあこうなるだろうって分かっていましたが、いくら私が空間魔法が得意でもここまで重たくなった空間はどうにもできませんよ。という訳で解散です。ほかの人たちにもやることありますしね」

 と言ってグレイノアは部屋を出る。みんなもグレイノアに続いてバラバラと部屋を後にした。

「…カマエル、後でさしで話そう」

 イヴァイルがカマエルとすれ違う際に耳打ちした。

「…」

………カマエルが自室のベランダで休んでいたところイヴァイルが入って来た。

「…担当直入に聞くお前魔王だろ」

 カマエルが聞く。

「…ああ、そうだ」

 イヴァイルは少し沈黙したあと覚悟を決めたのか正直に話した。

「まじかよ〜魔王が勇者になれんのかよ〜」

 カマエルは自分の感情より大げさに驚いた。

「不正とか疑わないのか」

 イヴァイルはそう言って星空を見上げた。

「お前、不正なんかする悪魔じゃなかっただろ」

 そんな魔王とは対極的にカマエルは陽気に笑う。

「…お前俺のこと憎くないのか。昔の事とはいえ俺はお前をボコボコにしたあと部下に救われて退却するのを嘲笑いながら、お前の大事な部下を殺したんだぞ」

 イヴァイルが重苦しそうに言った。

「はっ、お前がそのことを気にかけるとか、お前めっちゃ変わったな。まあ、そりゃ憎いけどよ。でもなグレイノアに教えてもらったんだ。いつまでも過去に縛られちゃいけないってね。それに今は人間を導き、邪神を倒す勇者なんだろう、だから昔のことは水に流すよ」

 カマエルはニッと笑った。

「そうか。お前は強いな」

 つられてイヴァイルも笑う。

「やめてよ。俺はグレイノアに言われなくちゃ何も変われなかった堕天使だぜ」

 カマエルが恥ずかしそうに頭を掻く。

「なら、俺と同じだな。そうだ!なあ今夜一緒に酒飲もうぜ。あいつが教えてくれたお気に入りのバーがあるんだ。これまた、うまくてよう」

 イヴァイルが先日のバーの話を自慢気に話す。

「いいね。人間の酒なんて久しぶりだ」

 二人はそう言って満天の星空の中一晩中飲み明かした。

 この一週間であったこと

「ワイバーンだ」

 国中は急激なるワイバーンの襲撃にパニックになっていた。

「おいおい、入国して一週間も経ってねえのにこの国は騒がしいな。いつもこんな感じなのか」

 イヴァイルが慌てる国民を見下ろしながら呟く。

「そんなら、ここまでパニクってませんよ」

 グレイノアが呆れ半分で訂正した。

「それもそっか」

「これ、多分勇者補正だな。なんかしらんけど勇者がこの国に来ると必ず竜が襲ってくるんだ。ていうか今までミニ竜が集団で襲うぐらいなのに、今回はワイバーンかよ。いつもより過激だな」

 カマエルも呆れた目でワイバーンの群れを見た。

「1,2,3,………全部で十五体ですか。竜の襲撃イベントは神が意図して引き起こしていますからね」

 三人はこんな状況でも冷静だ。するとガンダルが勢いよくドアをあけ入ってきた。

「三人とも!!状況はもう把握していると思うが集団でワイバーンが攻めてきた。俺達も戦いの準備は出来ている。後はリーダーの命令だけだ!!早く指示を」

「そうですね。俺が五体倒しますんで、イヴァイルとカマエルも五体ずつ倒しましょう」

 グレイノアがガンダルの要望通り指示を下す。

「「了解リーダー」」

「は?」

電砲 グレイノアの前に魔法陣が出来上がり、ワイバーン五体の頭を一気に撃ち抜く。

ファイア イヴァイルはヴォイドを抜き、炎の斬撃を飛ばし、三体を殺す。三体の内、一体は頭を切られ、一体は腹を真っ二つにされ、一体は首をスライスされた。

 そしてイヴァイルはノーデンスも取り出し、転移で一瞬でワイバーンの所に行き残り二体の首を吹き飛ばした。

「ハハ、これが勇者パーティーの主力」

 そう言ってカマエルも負けじと剣を二本取り出し、ワイバーンの元へ転移し、鱗がとても硬いで有名なワイバーンを五体全てを一瞬でハムのように簡単にみじん切りにした。

「なっ、なんと。まさか私の協力も必要ないとは」

 ガンダルはあまりの驚きにあいた口が塞がらなかった。

 この光景は国王までも衝撃をもたらした。

「ほっ、報告。ワイバーン勇者達によって一瞬で撃破」

「見ればわかる。そうか。今回の勇者はこれほど強いのか。取りあえず今回の討伐の報酬をたんまりとやってやれ」

 国王が命令を下す。

「りょ、了解しました」

 報告しに来た兵は大急ぎで王室を後にした。

「はあ、これがほんとに人の実力なのか」

 国王はどっかりと椅子に座り、もう一度さっきまでワイバーンが飛んでいた場所を見て呟いた。

 今回の件は一生後生に語り継がれたらしい。

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