第十八話 奴隷商
道中イヴァイルは今まで頭の片隅で考えていた事があった。しかし、それが全然思いつかずグレイノアに問いかける。
「なあ、グレイノア。この聖剣の名前何にすればいいと思う」
そう悩んでいたのは聖剣の名前だ。イヴァイルは自分の魔剣ヴォイドのように聖剣にも名前をつけようと必死に脳を張り巡らせていたのだ。
「ふっそろそろ聞いて来る頃だと思っていました。こんなこともあろうかと一つ考えて置きましたよ」
あまりのも用意周到なグレイノアの言葉にいヴァイルは「まるで未来が見えている様だ」と思った。
「じゃあ、それにする」
「即決ですね」
イヴァイルが躊躇なく答え、その躊躇のなさにグレイノアが少し呆れた。
「グレイノア様」
するとここでプラチナがグレイノアの袖を引っ張る。
「なんだい。プラチナ」
グレイノアが「珍しいな」と思いながら振り返る。
「…奴隷商」
「…そうですね。プラチナ。あなたは、あの奴隷たちを助けてやりたいんですね」
グレイノアはすぐにプラチナの言いたいことを理解する。それはまさに心を読むが如く素早い理解力だ。
「なら俺がその奴隷商とやらを燃やしてやろうか」
グレイノアの言葉を聞いてイヴァイルは不吉な黒い炎を右手から出す。
「別にいいですけど、俺が今から指定する人は殺さないでくれないでしょうか」
グレイノアが条件を出す。
「例の助けたいやつか?ほんとお前は優しいやつだな。あと指差しじゃわからん」
イヴァイルはヤレヤレと肩をすくめた。
「無実だが敗戦国や別種族と言う理由で捕まって無理やり奴隷にされたやつらです。あと指さしたやつは光らせでおきます」
言われると同時にイヴァイルとグレイノア以外の目には何人かの奴隷が赤く光った。
「済まないがお前の幻覚魔法は効かないぞ」
イヴァイルはすぐにグレイノアが言う見えない光を幻覚魔法だと見抜いた。ちなみにここで言う幻覚魔法は、グレイノア考案で、この魔法は相手の脳に干渉して、ありもしない電気信号を脳に流す魔法である。なので一般の虚像を作る幻術とは作る違いこちらの幻覚魔法は電気魔法の系統なのである。ちなみにイヴァイルに効かないのは普通に魔力の壁で脳への干渉を抵抗しているからだ。
「ええ、知ってますなので抵抗を解除してくれませんか」
グレイノアはさも当たり前のように脳に干渉させろと言う。
「やだよ。解除したら脳の情報を読み取るんだろう。お前の能力は知らないがなんとなくわかんるんだよ」
イヴァイルは頑固拒否した。当然だ脳を干渉されたら幻覚が見えるようになるだけではなく記憶まで見られてしまうのだから。
「仕方がないですね。なら口で説明したます。あの……の人と……の人と………わかりましたか?」
仕方が無さそうにため息をつきながらグレイノアは丁寧に説明した。
「ああ分かっった、他は全員殺していいんだよな」
イヴァイルが念のため確認した。以外にも悪魔は用心深い、多分契約を重んじる種族だからなんだろう。
「ええ。でも急に人を殺すのはさすがにまずいので、きなこさんの幻術を囮にしてもいいですか」
「何すればいいの」
きなこが食い気味に聞いてきた。奴隷の中に獣人もいると知ってきなこもやる気満々のようだ。
「ここは獣人に人権が無いからきれいな獣人を見ると奴隷商は問答無用でその獣人を奴隷にしようとするのです。だからきなこさんの幻術を一人で歩かせて奴隷商が襲って来たところを助けるなら、奴隷商を潰した言い訳になります」
グレイノアがきなこの役割をわかりやすく説明する。
「なるほど、でも無実にはならなりませんよ」
ルシリアが淡々と言った。
「別にいいです。それより大事なのは周りがどう見るかと言うことです。奴隷商のことを好きな人はいないから、仲間の獣人のために命を張ったという口実があれば皆から悪い目では見られません。完璧でしょう」
そう言ってグレイノアは得げに胸を張った。
「衛兵はどうするのですか?」
あまりにも適当な作戦に思わずルシリアが眉を潜める。
「もちろん!全員気絶させます。衛兵は命令されただけで無実の人ですからね殺すのは悪評が出ます」
ルシリアの質問に簡単に全兵士を相手に逃げるや殺すではなく全員気絶させるという言葉にルシリアは二人が怪物なのを改めて思い知った。
「悪評なんて出回っていいだろ」
イヴァイルがめんどくさそうな顔をする。
「だめです。なぜなら私はあなたを勇者にしないといけないのですから、悪評なんて出たらみんなから尊敬される勇者にはなれません。あと勇者ですから人前で拷問は控えてください。さすがに相手が奴隷商でもやり過ぎは悪評を生みます」
グレイノアは優しく悪評が出回ってはならない理由を話す。それを聞いたイヴィアルは少し嬉そうな顔をした。
「そうかよ。俺のためにね…分かったお前の条件で戦ってやるよ」
イヴァイルは舌なめずりをした。ちなみにこの会話は防音結界で誰にも聞かれていないし、存在感を薄める効果があるので誰にも見られていない。




