第十六話 魔王が勇者になる
「おお、ここが噂通りほんとに美しいな」
イヴァイルは自分の目の前の光景に感嘆の声を上げた。
今、グレイノア一行の目の前には神の泉があった。神の浄化魔法が常時発動していることで世界一、清らかな泉である。そのきれいさは、かなりの深さのあるはずの泉の底がはっきり目に見えるぐらいだ。
場所は世界で二番目に大きい世界樹の中で、世界樹の周りにユニラセアがあることもあり、普通では入ることができない場所なのだが、前回グレイノアがこの国を救ったお礼にこの泉に行きたいと言ったため、今特別に案内させてもらっている。
それに加え、周りでは、空間を漂っている自我がない精霊たちが小さく点滅して、あたり一面にはツタと苔に覆われた大樹の壁があり、泉の中心には刺さった神々しく発光している聖剣、この3つが神の泉をより美しくしている。
「フォフォフォ、私もここまで美しい景色は初めて見ました」
バセデもこの景色を堪能しているようだ
「しかしやっぱ嫌な感じがするな」
イヴァイルは少し顔をしかめる
「フォフォフォ、それは私達が悪魔である以上仕方がないことです」
そう、ここは神の泉神聖な空間善人には癒やしの効果があるが悪魔などの邪悪な存在には精神を苦痛に与えるのだ、
「ほう、獣人が人間を連れてきたと言うことは彼らは勇者の剣に挑戦するということか」
光龍王が見定めるようにグレイノア達を見つめる。光龍王はこのときグレイノアがさっきまで一緒に話していた謎の羽の生えた人間だと気づいたが、言いつけどおり知らないふりをした。
「そうです、彼らは魔人二万をたった五人で殲滅しました。きっと優秀な勇者になること間違いないでしょう」
獣王が光龍王の言葉を肯定する。獣王の目は絶対に抜けるだろうと自身に満ち溢れていた。
「さて、ついたところですし、引きなさいイヴァイル」
グレイノアは来てそうそうイヴァイルに命令した。一応みんなが鑑賞する時間を与えたが。
「は?」
グレイノアの考えつかなかった命令に思わずイヴァイルは硬直した。
「いやいやまてお前ならまだしも何で俺がだよ!俺みたいな世界最恐の魔王が勇者の剣を抜けるわけないだろう」
イヴァイルが大慌てで手を左右に激しく振り否定する。
「大丈夫ですよ」
「なにがだ!」
イヴァイルはこの一連の会話に少しめまいがした。
「お前じゃなくてイヴァイルだったとは、しかしあの自信のなさ本当に大丈夫なのか?」
獣王がイヴァイルの自身のなさに心配になり思わずグレイノアの耳元でこっそり尋ねた。
「俺もなれると思うけど俺は勇者にはなりたくないですからね、それに大丈夫だよ俺はイヴァイルなら絶対になれると思いますよ」
グレイノアは獣王の質問にきっぱりと答えた。その顔には何やら企みがありそうだが、いつものことだなにもないのだろう。
「…信じるからな、死んだら祟るからな」
グレイノアの自身に満ち溢れた言葉に「お前が言うならワンチャン行けるのではないか?」と思い。胸が高ぶったイヴァイルはそう言って勇者の剣に手を掛けた。
イヴァイルの手が剣に触れた瞬間、剣は凄まじい光を帯びた、その光は癒やしの光イヴァイルにとって精神を蝕む光だった。案の定同じ悪魔のバセデは苦痛の表情をしている。だが不思議とその光はとても心地良かった。自分の感覚が麻痺したのかと思った。
「うまく言ったな」
その光景にグレイノアがニって笑い呟いた。
「さあイヴァイル剣を抜け」
イヴァイルは言われるがままに剣を抜いた。剣はイヴァイルの腕とともにゆっくりと持ち上がった。剣をすべて抜き終わった瞬間、イヴァイルは一面真っ白な見知らぬ空間にいた
【ほう、今回はかなり強そうなものが勇者になったな。期待しているぞ今度こそあの邪神に引導を渡のじゃ】
イヴァイルの脳に謎の言葉が響き渡る、そして空間はは神の泉に戻った。手にはしっかり剣が握られている。いまだ剣を抜いた実感がないイヴァイルは試しに一度剣を振ってみる。剣は数千年の相棒のである魔剣ほどではないがイヴァイルの手にとても馴染んだ
「…ほんとに俺が勇者に選ばれたのか」
イヴァイルは思わず呟いたそして目をゆっくり閉じて深呼吸をし、彼は覚悟をきめた
「グレイノアよ俺は勇者について深く知らない。おまえなら俺を真の勇者に導いてくれるか」
イヴァイルは振り返り聞いた。その目は面白い話を聞いてワクワクが止まらない子どものように楽しそうであった。
「どうでしょうね、でも必ずお前を後悔させませんよ」
グレイノアはそう言って方をすくめた。
「そうか、悪魔との契約は絶対だぞ」
イヴァイルはニィ〜って笑う。
「ああ、もちろんその気だ」
こうして後に最強の勇者と言われる勇者イヴァイルが今、誕生したのであった。
「泉をでて宴にもどろう」
グレイノアが世界樹の出口に向かう
「そうだな、終わっていないといいが」
「大丈夫、時間を歪める結界を貼っている」
戻ってみるとほんとに時間は進んでいなかった。それにしても2日連続で祭りがあったにもかかわらず場は一日目よりも賑やかだった。そして獣王と一緒にみんなで二度目の祭りを満喫した。
余談だが今日グレイノアは射的屋でぬいぐるみの景品を当て、プラチナにプレゼントした。そしてプラチナはプレゼントを貰いとても喜んでいた。
日が沈み皆が寝静まった頃
「ふう、やはりプラチナの茶はいい」
「そうなの僕も飲んでいい?」
なにもない場所から声が聞こえた
「ちょっとだけだぞ、ウラノス」
すると精霊が現れグレイノアの茶をのんだ。彼は空間の精霊でグレイノアが契約した精霊だ
「うん、ほんとだおいしいい……それにしてもうまくいったね、まさか悪魔の王が勇者の剣を授かるなんてね。世の中面白いこともあるもんだ」
〜グレイノアが光龍王から許可をとり早速精霊と契約しようとした。
しかし、本来精霊との契約はみずから現れた精霊と契約するのに対し、グレイノアはわざわざ自分から精霊の空間に入り目当ての精霊に話しかけた。
『空間の精霊さん俺と契約しませんか』
グレイノアはぐうたらと寝ていた精霊に声を掛けた
『きみ、人間のくせに君を選んだ精霊を無視し僕と契約しようとは傲慢だな』
起きた精霊は少し不満そうだ
『いいじゃないですか、俺と契約すると面白いものが見れますよ』
グレイノアは気にせず勧誘し続ける
『え〜、そんなに自信満々に言われたら気になるな〜、でも俺、誰とも契約しないって決めたし』
精霊は考え込んだ
『なら、勝負しませんか。どちらがこの2m³の空間をより知り尽くしているか』
ここでグレイノアが魔力で縦1m横1m高さ2mの直方体の囲いを作り、勝負を提案をした
『え〜!いいけど、それ俺が絶対に勝つよ』
『やって見ないとわからないじゃないですか』
勝負はグレイノアの勝ちであった。グレイノアはその直方体の中の風向き、魔素量、さらには分子の数、原子の数、陽子の数、電子の数、中性子の数を言い精霊を打ち負かした。
〜
「言ったろ、面白いのが見れると。それに、勇者になって貰わなきゃ俺が危険を犯して、剣にかかっていた人間にしか剣を抜けない魔法を消した意味がなくなるところだったよ。」
そう戦争がおわりにグレイノアが神の泉に行った本当の目的は神が剣に掛けた勇者の器として最適かどうかの判断するための5つの魔法のうち、一つを消すためだったのである
「それにしてもたのしみだな〜、魔王が人間全員に勇者に従われる姿を見るの」
「ああそうだな」
そう言ってグレイノアは闇の中、邪悪に嗤ったのであった




