「混在」する「カオス」その②
上越あんなちゃん拉致誘拐事件
およそ3年前、上越あんなちゃん(推定細胞年齢9歳)が下校途中何者かによって誘拐され3か月間行方不明になった事件である。当時上越あんなちゃんの両親である「蛟竜 夏海」(現聖フィーリス女子学園学園長兼理事長)と「上越 昭二郎」(前暁国財務大臣)に対して身代金目的の電話がかけられており犯人は「8億円」を要求した。二人は178億円相当の金塊や貴金属を詰め約束の場所へ向かったが時間になっても誰も来ることはなく、その3日後に上越あんなちゃんが無残な姿で岸辺に浮いているところ発見された。犯人は結局わからず何の手がかりもなく今も捜査が行われている。上越あんなちゃんは「突然変異型能力者」だった。上越あんなちゃんの実年齢は17歳程だったが、16歳の時に突如として発現した上越あんなちゃんの能力である「年齢操作」と「細胞復活」そして「不老不死」の暴走によって年齢が変化。当時はおよそ9歳程の見た目をしていた。自分も上越あんなちゃんの事はよく知っていた。彼女の能力はあまりにも強力かつ魅力的なので生まれた時から保護対象となっていたらしく、自分が隊長になった時にも前の隊長や上からしつこく言われたのを今でも思い出す。この事件後、保護対象能力者の監視が一気に厳しくなった。その事件が今回の集団と関係していたのだ。「…はぁ」あまり気乗りしないがあの人物に話を聞くしかなさそうだった。
翌日
「…失礼します」聖フィーリス女子学園学長室に中目の姿があった。「お久しぶりですね…中目さん」「はい…本当に」ソファに腰を下ろすと目の前の人物に目を向ける。「あの…お元気ですか?」「えぇ…この学園の経済状況も安定し更なる好調の兆しを見せています…」「それで学長…この集団のことなんですが何か知っていることはありますか?」「えぇ…うちの娘の事件の日によく現れるんです…何かのボランティアなんでしょうかね」「本当に知らないんですか?」「知りません…私はあの事件以来娘の事を考えなかった日はありません…しかし風化させないためにこんな奇妙な行動はしませんしさせません」「そうですか…」「それで中目さん…娘の事件で何かわかったことがあるんですか?」「いえ…しかし今回のこの集団と何かしら関係があると考えています。もしかしたら捜査していくうちにわかることがあるかもしれません」「そうですか…では引き続きお願いいたします」重苦しい空気から逃げるように部屋から出てホテルへ戻る。かなり手詰まりになっているが少ない共通点を繋ぎ続けるしかない。関係者に当たってみる方法もあるがそうなると今回の集団の事から大きく外れてしまう。一旦は集団を調べつつ事件との関連性を調べるしかなさそうだ。3時間後、決定的な情報が入る。何と駐車場の防犯カメラに集団の顔が映っていたのだ。しかもその人物が全国指名手配中の逃亡犯である「荒川 キンジ」という連続強盗致傷犯だったのだ。確かに奴には炎を出せるしその炎の威力はかなり強力。全捜査員にこの男の捜査をするように命じる。こうなれば中目も動き方がわかってくる。この「荒川 キンジ」に関するすべての情報を搔き集め監視カメラ映像を調べる。すると何と昨日聖フィーリス女子学園内で奴の顔をした人物が映りこんでおり、それ以降出てきている様子は無く現在も学園内に潜伏している可能性がある。至急学園長にこのことを報告し学園全体の警備を強化させ中目も学園へと向かった。20分後、学園に着くと全生徒が学園内から出ていた。今日は臨時休校にして生徒を学園内から如何なる事情があろうとも強制的に下校させたという。「中目さん…例の件…本当なのですか?」「はい…全監視カメラ映像をチェックしましたが奴がこの学園内から出ていません。今も潜伏している可能性が高いかと」「そうですか…ではよろしくお願いいたしますよ」異様な静けさを放った学園内全域の捜査が始まった。「全員聞け。相手は炎を使う能力者だ。もしも接触した場合、不用意に攻撃せず相手の動きを見ろ」「はい!」「そして避難し遅れた生徒がいたら近くにある出口から避難させろ」「はい!」こうして捜査が一斉に始まった。学園内に怪し場所は少ないが隠れられる場所は多い。ただでさえ多い教室数と部屋数。さらに広大な土地の中にあるいくつものサークル部室と施設、そして天に浮かぶ庭園もある。これだけ隠れられる場所があると捜査も骨が折れる。だが全部屋調べることはしない。監視カメラ映像には18階に上がったのを最後に奴の姿が映っていない。なので18階を探すのが一番いい。18階へ向かい部屋を片っ端から調べていくとどこからか物音がする。そこは資料室だった。「………ここか」資料室の中へ入り銃を構え慎重に進むと物音が近づく。慎重に進み物音の方に銃を構えると制服の違う雑なツインテールをした少女が座り込んでダンボールを漁っていた。「ん………?ひぇぇぇ!!!撃たないでくださいぃぃぃ!」「あぁ君は………生徒さんか…今学校から下校命令が出てる。さぁ帰ろう」「す…すみませんん!今すぐ帰ります!」すると資料室の外からヒールのような足音が聞こえ咄嗟に少女の腕を引いてしまった。「乱暴しないでくださいぃ!」「静かに…」少女は口を抑え目を瞑り震える。外の足音は資料室の前でピタリと止まり扉を開ける。「…」中目は飛び出ると銃をその人物に突きつける。「…!!」「お前は!荒川キンジ!!!」「くそぉ!!!」キンジは手から緑色の炎を出し逃走した。「っくそ!熱い!おい君!今すぐ逃げなさい!」「は……はいぃ!」少女は膝の関節を忘れたように走り外へと逃げて行った。「まて!」キンジの付けた炎の跡を辿っていくと逃げ去るキンジの後ろ姿があった。すかさず指先から煙を噴出させ足に絡め転倒させた。「お前を拘束する!」「ここで捕まってたまるか!」手のひらに炎を溜め一気に放出させると中目は寸前のところでよける。「………お前か?黒服の集団は!」「そうだよ………だがな!俺一人じゃないぜ!まだまだいるからな!」キンジは雄たけびをあげると足に炎を纏わせ蹴り技を繰り出す。回転と炎の勢いは凄まじくかわすのが精一杯だった。しかし中目はロマンに欠ける男である。普通の能力者作品ならここで能力で応戦するが中目は違う。炎と共に回りまくる足を普通に銃で撃ち抜き行動を止めた。「うぐぁぁぁ!!!」「さーて拘束するからな」懐から取り出した超鋼鉄素材の手錠を付けると外へと連れ出し護送車に乗せ連行した。学園長にこのことを報告し捜査を終えようとした時、とある3人に呼び止められた。「中目さ~ん!」「あぁ君たち…それとさっきの」「あ…あの先程はありがとうございます」「無事でよかったよ」「それで?集団のことわかった?」「まだ全部わかったわけじゃないけどこれからわかり始めると思うよ」「あっそ~よかったぁ」「それで…どうかした?」「ねぇちょっと頼み事あるんだけどさぁ?」「やっぱりやめませんか?退学どころじゃないですよ!」「いーの!バレないって!こいついるし!」「えぇ…私の能力はそんな悪用のための道具じゃないですよぉ」「………能力?もしかして3人能力者なのかい?」三人の能力と相談内容を聞くと即座に却下した。「だめだ。不法侵入な上に危険すぎる」「じゃあうちらだけで行くもんね~!」「だめだ!やめなさい」「…はーい」そういうと三人は学園内に入っていった。今回の捜査は一旦ここで中断し本部へと戻り報告資料を纏め荒川キンジの尋問にシフトすることとした。いまいちスッキリしない終わり方だがまだ終わった訳ではない。これからが本番だ。様々な出来事が繋がり始めている感覚を覚え未だに胸騒ぎがしているようなしていないような。不気味な気配に気を取られながら聖フィーリス女子学園に背を向けた。




