「現在」の「原罪」その②
カンナキ
その頃監視室では職員が状況を冷静に監視していた。
「『傲慢』『強欲』『色欲』『嫉妬』『暴食』『憤怒』『怠惰』の脱走を確認」
「ただいまより館内全域を特別警戒プロトコルZに指定。直ちに7名の行動を沈静化させよ。場合によっては生死をも厭わない」
館内全域は赤い光に包まれけたたましくサイレンが鳴り響いた。
「緊急指令繰り返す緊急指令。館内全域を特別警戒プロトコルZに指定、繰り返す館内全域を特別警戒プロトコルZに指定する。館内にいる職員は直ちに武器を持ち対処せよ。対象を必ず生かす必要はない。やむを得ない場合は射殺を許可する。繰り返す射殺を許可する」
ノイズ混じりのアナウンスが終わる。
「施設長はどうされますか」
「これから地下モノレールで幹部達と移動する。ここにいる隊員達は危険と判断次第全員退避後、施設全域を自爆させろ。もうこうなった以上能力者一人一人の生死は気にしてられん。」
「了解しました。全員に伝える。全員は全勢力をあげて応戦せよ。もし協力的な能力者がいる場合、その能力者の協力をあおげ。これから館内全域は特別警戒プロトコルZに移行する。繰り返す」
施設長は安全な脱出ルートで地下モノレールに乗り込むと施設をあとにする。
システムルームに到着した7人の子供達はお互いの顔を見合わせるとまるで全員面識があるような不思議な感覚に襲われた。
しかしそんなこと今は気にしない。
7人はシステムルームに突入し全システムを司るコンピューターを破壊した。
7人は様々な部屋に突入すると全てを破壊した。
今までの閉塞的な場所で自分達の人生を縛ってきた大人たちへ復讐するかのように、全てを破壊して邪魔する大人を蹂躙していった。
そして施設長室へ入るとそこは何もなかった。
部屋の中を調べまわっていると遠くから足音が聞こえた。
そして大勢の銃を持った職員が突入し決して逃げられることのない一斉銃撃を始めた。
7人の子供達は何十何百もの銃弾を浴び死亡した。
職員は子供達の遺体を回収すると即座に焼却をした。
これをすることによって復活の恐れは無くなる。
職員達は安心しきった様子で子供達が燃える様子を見ていた。
20分後子供達の遺体が妙な動きをしだした。
子供達の遺体はミミズのように這いずり周り出した。
次第に一つの塊となり成人男性ほどの肉体が形成される。
その姿はあまりにも禍々しく見ただけで恐れ慄いてしまう風貌だった。
「……全員構えろ!撃て!!!!!!!!!」
その「人物」に一斉に銃撃を行うが弾は全て弾き返され職員は全員死亡した。
「…………」
形成された人物は施設の中を目的もなく散策し始める。
しかしどこかへと明確な目的を持って歩いているようにも見えた。
「それ」は外へ出ると深い山へと入り、それ以降誰も姿を見なかった。
それから12年後
新星の尊はどこか遠くから異質で強大な存在を感知した。
それはあまりにも禍々しく神々しい。
これに危機感を覚えた新星の尊は仲間を集め山へと向かった。
山は生命の気配を感じさせないほどの静寂に包まれており、木々は枯れとてつもない腐敗臭が鼻を突いた。
しばらく歩いていると「それ」はいた。
「それ」は瞑想するかのように苔むした岩に胡坐をかいていた。
「お前か……お前は何なんだ!」
「……俺は罪だ……俺は罪である」
仲間達が武器を構える中、新星の尊は歩み寄り対話を試みた。
「お前は何者だ」
「俺は罪だ……私は贖うべき存在」
「いいかよく聞け。これからお前が変な行動をしたら攻撃をする」
「……それでいい」
「わかった……じゃあ一つ聞きたいことがある」
「なんだ」
「お前は何者で何なんだ?この山の惨状はお前がやったのか?」
「……私はただここにいる息絶える運命の生命を導いただけだ」
「なら…そうだな……お前の名前はなんだ?」
「私は『罪』そのもの」
「…………なら裁くぞ」
「それでいい」
新星の尊は手から光り輝く刀を生み出すと「それ」めがけて振り下ろす。
しかし剣は謎の力で押され「それ」の身体に触れることができない。
「………」
「それ」は立ち上がると急に回し蹴りを食らわせ新星の尊を吹き飛ばした。
仲間達は咄嗟に一斉攻撃を仕掛けるが謎の力で弾き飛ばされてしまった。
後の現場にいた仲間の証言によると、押し返すバリアのような壁を感じたらしい。
新星の尊は立ち上がると10本の指を尖らせ「それ」へと向かう。
「……」
「それ」はどこを向いているのかわからない虚ろな目をしながらノーモーションの予測できない攻撃を繰り出した。
「こいつ強すぎる……!」
次なる攻撃の手段を考えていた時、「それ」は急激に体が小さくなったと思うといつの間にかどこかへと消えてしまったいた。
「くそ逃げられたか」
この出来事を新星の尊は次のように記録した。
『新潟県半田市穂高山にいた正体不明の生物は特殊なバリアのようなものを発生させ一切の攻撃を寄せ付けない能力を持っている。それ以外にも能力の存在の可能性を仄めかす発言もしていたことから、複数能力持ちの可能性あり。発見し交戦する場合十分注意せよ』
この頃は能力者による人権問題が各地で騒がれており、その社会の流れにより能力者が犯罪や事件を発生させても簡単に対処することが出来ずにいた。
そこで政府機関は新星の尊率いる「12星雲隊」に依頼して解決していた。
しかしその活動にも限界はあるためレベルF以上の能力者の対処を任せていた。
今回のようなレベルZに分類されるような能力者対処には全員を集めて現場へと向かうが、レベルZがそもそも異例である。
この事件を皮切りに各地でレベルH以上の能力者事件が多発した。
新星の尊は応援へと向かう毎日を送っていた。
それから更に3年後
26歳になった新星の尊の能力に変化が見られ始めた。
それは能力の「減退」である。
半年前娘が産まれてからというもの能力の精度が明らかに落ちたのだ。
例えば前まで4個の能力を同時かつ細かい威力調整を行うことが出来たが、今は4個の能力を同時使用する際にまともに制御出来る能力は2個が限界だった。
すぐさま「12星雲隊」を集結させ引退を表明した。
娘の能力が完全開花するまで「花園」という代役を立たせた。
それから日に日に能力が薄れ体力も急激に落ち始めた。
まずいと感じた花園は再生復元能力で癒し何とか命を繋ぎ止めた。
治療のおかげか体力も順調に回復し能力操作も出来るようになった。
その後はとくに何も変わらない毎日を送っていた。
しかし突然12星雲隊の一人から3年前に見失った「それ」が見つかったと報告が入り、至急現場へと向かった。
そこには何もおらず辺りを見回すと12星雲隊が自身の周辺を取り囲んでいた。
「どういうつもりだ」
すると12星雲隊はぐにゃりと地面に溶けると一つに纏まり一人の女性を形成した。
「……!」
新星の尊は全能力のリミッターを開放し右手に電撃を放つムカデと毒を吐き出す蛇を纏わせ、戦闘態勢へと入ると形成された女性へ拳を振るった。
女性に拳が当たるがダメージは無いようでケロッとしていた。
ムカデと蛇も使用したが効いている様子はなく飛び上がり距離を取る。
「こいつまさか……あれと同じような感じか!」
左手首を鰐に変え追加で燃え滾る鎖を巻き付け勢いよく突っ込むと、右手と左手の同時攻撃を繰り出したがそれも効かない。
新星の尊の特徴である「生物」をベースとした攻撃が一切通用しない。
すると奥のほうから「それ」が現れた。
「久しぶりだな……!」
「お前は……裁く者」
「新星の尊だ……」
「それ」と「女性」はお互いを見つめると突然身体を合わせ始めた。
「おいおい……場所選べよな」
しかしそれは性行ではない。
「融合」だった。
二人の身体が混ざり合い凄まじい閃光を放った。
閃光が止み目を開けると一人の少年のような生命体になっていた。
「はははははは!!!!ようやく俺が復活だぁ!!!!!!」
少年は大きく息を吸うと天に向かって大声を放つ。
すると辺り一帯は急に暗闇に包まれ星が輝く夜空へと切り替わった。
「なんだと……!」
「はーあ!俺の能力を見せてやる!この下等人類め!」
少年は右手を天高く突き上げると少年に数多の星々が降り注ぐ。
「これが俺の能力!!!!星々の操作だ!!今この瞬間!この空に浮かんでいるちっぽけなな星共は全部俺の武器に等しい!お前のような限りある生命の能力など俺の力に比べればカス同然!」
「くそ……こいつはレベルZ以上だな……」
「今ここでお前と戦ってもつまらぬ……20年待ってやる!20年経ってこの俺に勝てるように強くなるかお前より強い者を用意しろ!それまでは一切の手出しはしないことにしてやる!」
そう言うと少年は宇宙へと飛び立った。
「お前の名前は……!」
「そうか…教えてやる!俺の名前は!!!!!!イエス・■■■■・アルケミストだ!よく覚えておくんだな!尊族の愚か者である新星の尊よ!」
アルケミストが完全に飛び立つと空は晴天に変わっていた。
実感は未だにない。
この果てしない20年も今この瞬間短く感じる。
今はとにかく20年を有意義に使う方法を考えるしかなかった。
ただひたすらに後悔しながら。




