「異次元」の「旅行者」その①
カンナキ
中目はいつものように仕事をしていた。
今日も過剰なまでの業務に天を仰ぐ。
最近は能力者事件ばかりで懲り懲りしている。
どいつもこいつも能力を湯水の如く使い欲望を満たす。
この前はファミレスの料金が払えないという理由で氷をナイフ状にして客と店員を人質にし立てこもるという身勝手極まりないすぎる事件まで発生した。
こういう人間が増えると能力者規制法案が更に厳重なものになっていく。
そうなるとまた仕事が増える。
いい加減己の能力をセーブして欲しいと思いながら資料に目を通していた。
今は「連続埋め込み事件」というのを調査している。
各地で人が壁に埋め込まれた状態で亡くなっているのが発見された事件だ。
容疑者は不明、目撃情報も無し、証拠もほぼ無し。
共通するのは壁に星型に大きく焼けた様な跡が残っていることだけだった。
我々の見解では犯人の能力は「ワープ」
恐らく被害者をワープ中に壁の中に残し殺害している。
まぁ残忍な奴だ。殺害許可は免れないだろう。
こうしていると新たに事件が起こり現場へと向かう。
やはりまた埋め込み事件だった。
「ここまでひどいとなぁ…身元は?」
「渡辺 光23歳。近くの私立大学に通っている大学2年生です」
「大学生…まだ若いのにねぇ」
実は被害者に共通していることがある。
全員近くの私立大学出身もしくは在校生なのだ。
そして「DCクラブ」というサークルに所属している。
この「DCクラブ」とはオカルトサークルの皮を被った「飲みサークル」だ。
度々旅行先で事件を起こしているらしく大学内外からの評判は著しく悪い。
数年前に当時21歳の男子学生4人が当事19歳だった女子生徒を泥酔させた挙句、男子学生Aの自宅で強姦しその後違法薬物によるオーバードーズで死亡させるという事件を起こしている。
当事者達は全員不起訴処分となったがその後全員が謎の死を遂げた。
4人はキャンプ場で違法薬物によるオーバードーズで死んでいたのだ。
当初警察は薬物の過剰摂取による死亡事故だとしていたが現場から4人以外の足跡が見つかると、事件性アリとして捜査した。
しかしそれ以外の証拠は無く足跡もキャンプ場の管理者、もしくはその他の旅行客のものだとして全員事故死として片付けられている。
遺族は抗議したが世間体を考えて抗議をやめたのだった。
中目もその事件を知っている。
何せ自分の妻が当時その大学に在籍していた時に起こった事だからだ。
妻もサークルに所属していたが連続する飲みについて行けなくなり幽霊部員化。
その直後起こった事件ということでかなりヒヤッとしたらしい。
事件後警察から何度も話を聞かれたとのこと。
帰宅後、妻にこの話はしなかった。
基本的には事件内容というのは例え家族であっても伏せる。
余計な混乱を起こさないためだ。
妻には自身の職業を「銀行員」と噓をついている。
自室で今日の事件現場のデータをまとめる。
壁の星型以外周りには何もない。
不気味なくらいに何もない。
しかし今回の事件で容疑者を絞りこめそうなのだ。
容疑者は3人。
一人目は現場付近で何度も目撃されている「田村 トシキ」
二人目は数年前の事件で亡くなった女子生徒の元交際相手「星宮 希来里」
三人目は女子生徒の遺族である「桜 智里」
全員現場付近で必ず目撃されているのだ。
早速我々は3人に聴取を開始した。
しかし3人全員黙秘するという、もう答えを言ってしまっているような状況。
言葉での聴取はこれ以上不可能だとし幻惑を見せる能力者による半拷問的な聴取を行うこととした。ちなみにこの方法は立派な犯罪だ。
能力者は室内に極めて濃度の薄い幻惑ガスを充満させ自らの姿を「女子生徒」の姿に見せ聴取を始める。すると3人は次第に口を割りだした。
3人はとある「能力者」に「DCクラブ」がサークルとして解体されるまで関係者を殺害するよう依頼し監視係として見ていただけだった。
その聴取を元に該当する能力を持つ人物を探す。
しかし該当する能力者は見つからず捜査は行き詰った。
「4人目」であるその能力者が今回の犯人であるとし捜査範囲を拡大させると共に、「DCクラブ」の調査にも乗り出した。




