「奪い」とる「盾」その③
操作された感染者が群れを成して襲い掛かる。すかさずバリアを展開し感染者めがけて投げ放つ。感染者は壁に叩き付けられ動かなくなるがフリートは至って冷静だった「まぁこうなるよねぇ…じゃあもう増援はいらないからかかってかかってきなさいお二人さん」ドージョットはふらつくリーアを背負うとフリートに向かって走り出す。するとフリートは懐に潜ませていた蛇を出すと蛇の口に指を入れ感染させる「いいかい?私のウイルスというのは突然変異するんだ。最近それが多くてねぇ私でも制御不能なのだよ」ウイルスを受けた蛇は体長が12㎝から280㎝以上にまで急成長し手と足が生えた立ち上がったのだ「じゃあお二人さん。私は急用が出来たので失礼するよ…あぁそうそうここにいる感染者達はもう動かなくしたよ、何となく想像していたシチュエーションにならなかったからね。じゃあいつかまた会おうか」そう言うとフリートはガラス張りの天井を突き破りどこかへと消え去ってしまった。突然変異した蛇はこちらを睨むと巨大な拳を振りかざしテーブルを破壊した「お兄ちゃん…私を投げて…私が吸うから」「いや危険すぎる…ここは俺に任せろ…!」ドージョットは船員に妹を任せ操縦室へ逃がすと一人立ち向かう「あーあ…あのバリアお兄ちゃんだけのデータかぁ…まぁあの成長性には期待しているからよしとするか」フリートは蛇につけられたカメラから様子を記録しつつノートパソコンで戦闘データを記録し始める。ドージョットはバリアを展開し蛇の身体を監察する。姿はかなり奇天烈だが先程の威力を見るにいくらバリアを張っていても、多少の衝撃を受けてしまい吹っ飛ばされるだろう。そういえば何故妹は歩き出したのだろうか。今考えるべき出来事ではないが気になって仕方がない。突然変異した蛇はそんな混乱を見抜いたのか、その隙を突くかのように尾になった身体の一部で薙ぎ払うような攻撃を繰り広げる。後ろに倒れよけ何とか回避し正面を向くとその蛇が壁面に張り付き天井に空いた穴に入ろうとしていた。このまま逃がすのはまずいと思い、ドージョットはバリアを投げつけ落とす。蛇は落ちる直前に受け身を取り一気にこちらへと這いずり寄ってきた。この蛇にはある程度の知能があるようで生物学的に取られる咄嗟の行動ではなく、全て思考された結果の意図的に行われている行動であるのだ。こうなると一苦労どころではない。バリアで跳ね除けはしたが再び壁に張り付きこちらの様子を伺う。蛇は壁に張り付いたまま微動だにしない。恐らく動いていないように見せているだけだ。視線だけがじわりじわりとドージョットを舐めるように追っている。「……様子見かよ」ドージョットは小さく舌打ちをした。さっきの攻撃を振り返る。あれは完全に隙を突かれた。つまりコイツは人間という生命の行動を完璧に理解しているのだ。蛇の筋肉が一気に収縮し壁を蹴って一直線に突っ込んでくる。さっきより明らかに速い。反射的にバリアを展開するとバキィンッ!!衝撃が腕ごと身体に伝わりドージョットは後方へ吹き飛ばされた。「ぐっ……!」床を転がりながらも体勢を立て直す。(今の……バリア越しでもこの威力かよ…!)蛇は着地と同時に距離を取る。蛇は追撃せず再び観察を始めた。「……完全に戦い慣れてきてやがるな」ドージョットは息を整えながらゆっくりと立ち上がる。ここで初めて確信する。普通にバリアを張って投げての繰り返しじゃ通用しない。こうしたときによくやっているのは「敵になる」ということだ。奴はこちらが「一撃」を与えない限りは動いてこない。その「一撃」は必ずかわされてしまう。だったら「一撃」じゃなくすればいい。ドージョットは両手を前に突き出した。いつも展開しているバリアは巨大なものを一枚展開させるものだ。だが今回は違い指の腹それぞれにバリアを発生させる。手には10枚の小さなバリアが張られ淡く光る。不安定だが今はこの方法しかなさそうなのだ。人差し指に展開された小さなバイアを蛇に向けて放つ。次の瞬間、今度はフェイントを混ぜた軌道で突進してきた。右へ、左へ、壁を蹴り、天井を蹴り、軌道を変えながら「さーて読めるかなバリアのお兄ちゃん!」だがドージョットは動かない。その場でバリアを構える。「ここだッ!!」蛇が真正面に飛び込んできた瞬間、残されたバリアを一斉に投げ放った。9枚のバリアが蛇の頭部に命中し蛇は悶え苦しむ。蛇は潰された目を抑えながら力任せに自分を探すかのように周囲を散策する。ドージョットは勝機と捉え再び10枚のバリアを展開させ何発も食らわせる。そのうち蛇は抵抗しなくなり身体の力が無くなったのか大きな音を立てて倒れた「やったか…?流石に20枚だぞ…!」蛇はピクリとも動かない。いや違う。「こいつは!抜け殻だ!」天井に目をやるともうすでに尻尾が外へと出て行ってしまっていた「くそ…あいつ逃げたか」フリートは帰還した蛇を回収し記録を終了した「ふぅ~今日はここまでかなぁ~あの二人にはまだまだ戦ってもらいたいなぁ…」フリートはヘリコプターでその場から飛び去っていったのだった。船内の感染者達はもうピクリとも動かず異様なまでの静寂が響き渡る。操縦室にいた船員達は船内の様子を確認するために散らばり約3日の調査により船内に生きた感染者は存在しないということがわかった「まったく…一体海上警察にはどう説明すればいいんだか…船長どうしますか?」「うむ…信じてはもらえんだろうがとりあえず事の経緯を正直に伝えよう。そうだドージョットくんとリーアさんはこの場で避難していたことにするよ。いくら感染者とはいえ元は人間。適切な判断無しで殺したと思われた場合途轍もない重罪になってしまうからね」「すみません船長さん…」「いいんだ…この惨劇は乗客同士で起こしたものにする。ここにいるお前達の殺害行為もこの海の歴史の中に永久に沈めることとする」「ラジャー!」船を陸地に着けるとドージョットはリーアを抱えて船を降りる。最後には船長らに礼をして速やかにその場から立ち去った。そして船は再び海へと出発し二度とその姿を見ることはなかった。遅れてやってきた両親にはこのことは話さないことにした。話したところでろくなことにならなそうだからだ。一先ず妹のことを最優先にまた新たな場所へと向かうとしよう。次は暁という国の「暁の尊」という人物を訪ねる予定だ。彼は物凄いらしい。正直かなり期待している。早く妹の元気な姿を見てみたい。自分達家族は空港へと足早に歩いていくのだった。




