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コーンフリーク  作者: 角野
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「でんでらりゅうば」と「でてくるばってん」その③

私は教室を後にして慣れないこの学校を歩き始めた。編入する気は特にないが変化したいという潜在意識が行動へと移してしまった。行く前に教室にあった小型の警棒を手に校内を歩いていると、所々に爪でひっかいたような跡があることに気が付いた「これが来訪者…?」耳を澄ませると遠くの方から大きな足音が聞こえ、そっちの方向へと歩き角を曲がると咄嗟に後ずさりをした。そこには手と腕が異様に長く体は不健康のような細さで、頭には何かの骨のような物を被っており爪は30㎝以上の長さがある化け物がいた。その化け物は手が重いのかズルズルと引きずりながら歩いており、その際に床や壁には深く鋭利な爪痕が付いていた。これが「来訪者」なのだろうか。もうこの時点で諦めてしまいたかったが無事に逃げ切れるとも思えずその化け物の後ろを音を立てずに着いていった。すると向こうは気が付いたようでこちらを振り向くとゆっくりと追いかけてきた。しかしあまり速度は出ないようで自分の2分の1くらいのスピードで近付いてくる。時間を止めながら逃げれば容易にまくことが可能だった。その考えは甘かった。奴の爪が伸びたかと思うとこちらを追尾し始めたのだ。それもかなり精度が高く些細な身体の方向転換にも順応していた。その爪はまるで生き物のように空中を這い壁を削りながら一直線にこちらへ迫ってくる。「っ……!」反射的に横へ飛ぶ。直後さっきまで自分の首があった位置を爪が空気ごと裂いた。あまりにも速い。本体は遅いのに攻撃だけが異常に速い。一瞬だけ時間を止め、その隙に進行方向を変えると階段の方へ走り出した。時間が動き出した瞬間背後から嫌な気配が走る。振り返らなくても分かる。爪はまだ追ってきている。「嘘でしょ……!」あり得ない。時間を止めて距離を取ったはずなのにもうここまで迫ってきている。まるで「未来の位置」を知っているかのように最短距離で軌道を変えてくる。壁を蹴り無理やり軌道をずらす。爪が床に突き刺さりコンクリートが爆ぜた。ただ逃げているだけでは確実にやられる。途端に脳が急速に回転する。本体は遅い。だが攻撃は速くしかも追尾する。ならあの爪を切るか動かなくすればいい。握り直した警棒にわずかに力を込めた。そして後ろを振り返ると爪めがけ警棒を投げつけた。すると爪は警棒に絡みつき木の棒のようにいとも簡単にへし折った。その様子を見ていた自分に爪の先が向き間を空けずに襲い掛かる。時間を止め回避する。爪は壁に突き刺さりしばらくは抜けそうになかったので本体の方へと走り出した。おおよそ逃げているだけでは永遠に追尾されるだけなので本体を叩く他方法はない。本体へ近付くと後ろから爪が追いかけてきていた。もう壁から抜けたらしく先ほどよりも速かった。途端に私は画期的なアイデアを思いつく。時間を止めつつ本体へと全速力で駆け抜けていく。これまでの思いが走馬灯のように頭に走った。これまで私は変化に対して冷笑的だったのに変化を好んだ。あまりにもバカみたいな人生を送っていた。今まで変わりたくても変われない自分を「あえて変わらない自分」として誤魔化し続けてきた。つまらない人生を送ってきた。だからここで変わるしかないし、ここで変われないなら今後二度と変われない。私はここで「変わるしかない」廊下を突き進むと本体が見えた。先程の場所からはあまり移動しておらず絶好のチャンスだった。背後から襲い掛かる爪、そして目の前には正体不明のおぞましい化け物。近付くのはとてもじゃないが恐ろしく絶対にしたくない行為だがやるしかない。倒す方法はこれしかない。本体にギリギリまで近付き爪との距離も近付ける。距離にしてホントに30㎝くらい。時間停止。今度は1.7秒止めることができた。爪と本体の板挟み状態から抜け出すにはあまりにも十分すぎた。爪が来訪者を貫き来訪者はガクンと頭を下げた。それ以降動くことはなく教室へと歩いて行った。そういえば他の生徒は何処へ行ったのだろう?静寂さが不気味だった。少しかすった腕を抑えながらトボトボと歩いていると後ろを何かが掠めた。それはダーツだった「誰…?」後ろを振り返ると倒れたはずの来訪者がゆらりと動いていた「まだ仕留められてなかった…」すると来訪者の身体が浮き上がると中身が消えたようにストンと落ちた。そこには聖フィーリス女子学園の制服を着た人物がいた。生徒なのだろうけど明らかに雰囲気が違う。目には暗視ゴーグルのような物をつけて髪は地面に着くくらい長いツインテール。しかも赤色。腕には何かを射出するような道具をつけている。こちらをジロリと見つめるとゴーグルをあげ目を凝らすような動作でこちらを見てくる「あれ?学生さん?」「あなたは…?」「あー私は生徒会広報部担当の小津界 未桜といいます!」「小津界さん…?どうしてここに?」「この化け物が学園内でうろついているとの事で退治しに来たんですけど~相当弱ってたみたいで私の出番なしってとこですね~」少し息を整え事の経緯を説明するとわかってくれたみたいで教室まで案内してくれた「そういえばどうして教室の位置がわかるんですか?あそこはほとんどの生徒が行かないし知らない場所だと聞いてるんですけど…」「このGPSでわかるんですよ~!生徒会長の胸についてる勲章みたいなのあるでしょ?あそこにGPS仕込んでるんですよね~」生徒会長…金糸雀ケ原さんのことか「それって」「あー本人は知らないですよ」「ははは…」小津界さんの元無事に教室へと辿り着くことができた「小津界、ありがとうございます」「いえいえ~!では!」小津界さんはエレベーターで下へと降り自分は席に戻った『課題終了を確認。課題達成を確認。これにて課題を終了し九条・サクラザキ・霞氏にはわが校へ編入する権利を付与します。交流会終了後までに権利使用の有無をお聞かせください』こうして今日一日の授業?は終了した「ふ~ん…来たらうちにさ?」「ですが霞さんには家族がいますしあちらの学校での生活もあります。私達が無暗に勧誘できる立場ではないですよ」「……今日一日考えてみます」「それがいいでしょう」金糸雀ケ原さんは私のことをしっかりと考えてくれている。他の大人達とは全然違う。無暗に賛同も否定もしない。私のことを考えてくれる。本当にこういう人に憧れる。一人でホテルに戻り部屋の中で考え込んでいた。思い切って母親に電話してみた。すると夜勤前だったらしく少しだけ話をすることができた「もしもし」「もしもしどうしたの?」「実はさ…聖フィーリス女子学園に編入できるかもしれなくて」すると母親は意外な反応を見せた「あら!すごいじゃない!是非行ってきなさい!」「でも…お母さんは一人になるんだよ」「娘が遠くで頑張ってるって考えたら一人も寂しくならないわよ」「…じゃあ行ってもいいのかな?」「いいわよ!行ってきなさい!学費も何とかするわよ」電話を切り部屋を暗くして少し泣いた。嬉しさというより変動する環境の早さにあまりにも自分が追い付けず無力すぎてだ。私の能力は遅すぎる自分を正当化するために発現したんだと最近は考えている。20分くらい部屋で縮こまっていると扉がノックされた。出てみると神代だった「ちょっと付き合えよ」夜の街に連れ出されるとモノレールに乗り込んだ「どうしたの…」「ちょっとなぁ~」モノレールは進み続けそのうち周囲が海で囲われ出した「海…」「綺麗だろ?これ人工物なんだぜ」「すごい…」海は何処までも続いていた。これは養殖用の巨大プールらしく時折漁じぇ向かう船が見えるのだとか。そして海を渡ると公園へと着いた。モノレールの終点らしい「どうしてこんな場所に?」「ん~?な~んか暗いやつだからさぁ?ちょっとでも明るくなってもらおっかな~って」公園内は静けさに包まれており鳥の声も聞こえない。聞こえるのは遠くで流れる波の音とそよ風が過ぎ去る音だけ「あんさ」「なに?」「…その…もうちょっと一緒にいようぜ…?お前がいると面白いって今日分かったからさ」「…!」「だから…あたしたちと一緒に…この学園で過ごしてみない?生徒会長が勧誘すんなって言ってたけどさ!あたしはお前が必要みたいだからさ!」「神代…」私は気がつくと神代を抱きしめて号泣していた。こんなに人から求めてられたことがないからだ。今まで自分なんかは居ても居なくても変わらなかったし、いないほうが世の為になっていた。なのにこうしていて欲しいと言われるとどうしていいかわからない。だから抱きしめるしか出来なかった「ん~!よし!帰るか!」「うん…!」こうしてモノレールに乗り込み好きな曲を二人で聴きながら都市部の駅へと戻った。そういえば金糸雀ケ原さんと神代はデキてるという噂について聞いたらあっさり認めた。まぁ今の時代変わったことではないから特に問いただすこともないので流した。その後ホテルの自室で編入手続きを行った。次の日学園の学長室にて正式に編入が認められた。こうして私はこの聖フィーリス女子学園の生徒になったのだった。交流会最終日、元母校の教師や他の生徒達は羨むような恨むような目で自分を見ながらモノレールへと乗り込んでいった。少し聞こえた悪口ももう効かない。もう私は「変われた」し「変わり続ける」ことが出来る。これから先もずっと。この場所で「変わり続ける」事が出来る。「編入おめでとうございます!」「おめ~!じゃ!今日はお祝いパーティーしよーぜ!ほら生徒会長!いつもの喫茶店でいいだろ?」「はい!そこにしましょう!」2人に連れられ人で溢れる喫茶店へと入店した。店内は思っていた以上に騒がしかった。食器の触れ合う音や女子の弾むような笑い声、そして店員の軽快な呼び声。それらが混ざり合って不思議と居心地のいい空間を作り出している。「ほらほら霞!何ぼーっとしてんのさ!主役なんだから好きな物頼めよ!」神代が大げさにメニューを叩きながら笑う。「これでもいいんですか……?」「いいからいいから!」向かいでは金糸雀ケ原さんが穏やかに微笑みながら紅茶を口にしていた。「いいんです。今日は祝う日ですから」その言葉に胸の奥がじんわりと温かくなる。私のために人が祝い私が祝われている。それがまだ少しだけ信じられなかった「それでさ」神代が急に真面目な顔になってテーブルに肘をついた。「これからの話ちゃんとしとこーぜ」空気が少しだけ変わる。周囲の喧騒はそのままなのにここだけ静かになったような感覚。「そうですね…あの来訪者みたいなのは今後単体で出るとは限りません」金糸雀ケ原さんが淡々と言う。「複数出現あるいはより強力な個体。十分に考えられます」「だよなー。今回のもさあれ普通にやばかったし。だってあれ学園が用意したものじゃなくてマジに来たやつだからなぁ」神代が肩をすくめる。「霞。お前能力なかったら普通に詰んでたよ」その言葉に思わず視線を落とした。「……でも、まだ全然使いこなせてない」私なりの正直な言葉だった「時間を止める」それだけ聞けば物凄く強い能力だけれど、実際は持続時間は短いし精度も安定しない。何より自分の判断が遅い「だからさ」神代が言葉を被せる。「そこを鍛えりゃいいんだろ?」顔を上げるとまっすぐこっちを見ていた。「強くなろうぜ。一緒にさ」軽い口調なのに不思議と重みがある。金糸雀ケ原さんも静かに頷いた。「あなたには素質があります。ですがそれだけでは足りません。環境も、仲間も、そして覚悟も必要です」一瞬言葉に詰まったがもう逃げる理由はなかった「……私、ちゃんと強くなります。強くなりたいです。変わるだけじゃなくて……変わり続けたいです」そう言った瞬間、自分でも驚くくらい言葉がしっくりきた。神代がニヤッと笑う。「いいじゃんそれ。かっけーな」「では決まりですね!」金糸雀ケ原さんがカップを置いた。「これからは生徒としてだけでなく戦力としても期待しています」「うわー重っ」「ライアあなたもですよ」「え、マジで!?巻き込まれた!」思わず笑ってしまった。さっきまで泣いていたのが嘘みたいに自然に笑ってしまった。店の外はいつの間にか夜が深くなっていた。窓の向こうも街の灯りが揺れている。ここから先何が待っているのかは分からない。怖さがないわけじゃない。でももう私は一人じゃない。それだけで少しだけ前に進める気がした。「よーし!じゃあ締めにデザート頼もーぜ!」「まだ食べるんですか?」「当然!」「ほどほどにしてくださいね」騒がしい声に包まれながら私はふと窓の外を見た。夜の街はどこまでも広がっている。そのどこかでまたあの来訪者みたいな化け物が現れるのかもしれない。でも今度は逃げない。この場所でこの人たちと一緒に。私は変わり続ける。そう心に決めながら再び笑い声の中へと戻っていった。

一方その頃

聖フィーリス女子学園の最高機密エリア「ディアボロ」には尊の姿があった「お久しぶりです学園長」学園長以外の教員は一斉に頭を下げ来訪を迎えいれた「尊様、貴方にとって必要な人材を3名確保しています」尊は手渡された資料を見ながら能力を見ていた「金糸雀ケ原・アテネ・イリア…生徒会長か優秀ですね。能力は回復機能のある翼と光る矢かぁ。神代ライア…新入生。能力は電気。ギターの演奏によって強化や性質の変化を行うことができるか…あとは未確認の能力。九条・サクラザキ・霞、編入生…珍しい。能力は時間停止⁉最近の若い子は強いですね~」「その3名の他にも劣りはしますが能力者やフィジカリスト達も多く在籍しております。もしものことがあった際には存分にお使いください」「いや使いませんよ。彼女達も命だ。彼女達に戦うという意思がない限り私が無理を言って戦わせることはないです」「……そうですね、では今後も育成を続けてまいりますのでよろしくお願いいたします」「こちらこそ、じゃあこれ今回の寄附金です。直接お金を作ってしまうとだめなので今回も宝石や貴金属に変えておきました」「毎度ご丁寧にありがとうございます。それではまた」「最近寒暖差激しいんでお身体に気を付けて」そう言い立ち去ると宝石と貴金属が入ったショーケース4箱を教員に預け学園長は資料を片付けると何処かへと向かう。向かう先は研究室。研究室の奥へ進むと一つの巨大なカプセルの中に一人の女の子が紫色の培養液に使っていた「あなたを必ず目覚めさせてみせます」そう呟くとカプセルに手を当て想いにふけっていた。

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