表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コーンフリーク  作者: 角野
PR
11/40

「でんでらりゅうば」と「でてくるばってん」その①

「社会で殺人行為が正当化されたら貴方達は何人殺されてから殺人を行いますか?」これはうちの高校である私立門松乃丘高校で行われた倫理の授業で実際に学生達に問われた内容である。これに多くの学生は「百人目」や「数千人目」など多くの者が殺されてから殺人を行うと答えた。しかし一人の生徒は違った「一人目」教室の空気がわずかに軋んだ。誰かが小さく息を呑む音がした。笑う者はいない。ただ数秒遅れてざわめきが広がる。「……それはどうして?」教師が静かに問い返す。答えたのは窓際の席に座る目立たない生徒だった。名を呼ばれることも少なく成績も下の上。だがその目だけは妙に澄んでいた。「何人殺されてからって前提が間違ってると思います」淡々とした口調だった。「誰かが一人でも不当に殺された時点でそれはもう社会として壊れてる。だからその時点で止めないといけない」「……つまり、お前は殺すのか?」教師の声は試すようでもあり責めるようでもあった。生徒は少しだけ考えてから首を横に振った。「違います。殺人を正当化する社会を止めるために動くです」教室のざわめきが今度は別の質を帯びた。「でもそれって結局、誰かを殺すことになるんじゃないのか?」後ろの席から声が飛ぶ。「可能性はあります」生徒はあっさりと認めた。「でも、それを何人目からにするかって考えてる時点で、自分もその社会に加担してると思うんです」沈黙。「百人目でも、千人目でも、その間に死んだ人たちはどうなるんですか?」誰も答えない。「まだ自分の番じゃないからって理由で見過ごしたなら、それはもう選んでるのと同じです」教師はしばらく黙っていたが、やがて黒板に一行だけ書いた。「傍観は選択である」チャイムが鳴る。だが、誰一人すぐには席を立たなかった。その日から、教室の中で「正しい」という言葉の意味が、少しだけ変わった。しかし自分はそういう人と違った意見を言って注目されるのを好む人間が邪魔なので放課後、理科室付近の階段から突き落とした。私の生活において彼のようなイキり学生は嫌いだし、そいつが自分に対して好意を持っているのも非常に気に食わない。嫌いというよりかは気に食わない。どうせ私みたいな人間になら誰も告白しないし「自分みたいな普段から目立たない陰キャな僕でも告白を成功させれて彼女にできる確率が高い」とでも思っていたのだろう。そういう奴がとにかく気に食わない。私は血を流しながら横たわっているそいつを見ながら爪を嚙んでいた。私こそ特に目立ちはしない。この学校の人間とも合わないし最近SNSで流れてきたどこかの入学式で壇上に乗り上げ大暴れした一年生みたいな感じでぶっ壊れることもできない。成績も普通で友達が多いわけでもない。「負けている」と言われれば負けているのかもしれない。だけど唯一他の生徒に勝っている点はある。それは私の持っている「能力」だ。つい最近気付いた能力ではあるが私は「一瞬だけ時間を止められる」本当に一瞬だけ。この前限界を測ってみたのだけれどすごく頑張って「約2秒」くらい。ほとんどの場合「0.5秒~1秒」程度。この能力に気が付いたきっかけは本当にくだらない。夜歩いてたら自転車にぶつかりそうになって、爪を嚙んだら一瞬だけ止まってその隙によけることができたというもの。最初「ゾーン」だとも思ったけど自室でペンを床に落とし、地面に触れそうになった時に爪を嚙んだらペンが空中で止まっており、そのペンを持ち上げてることができこの能力が本物だと確信した。その日はとにかく色々なことに使ってみた。とても楽しかったことを覚えている。その日のことを思い出しながら自宅へと帰っていると警察に呼び止められた。どうやらスカートに血が着いていたため引き止めたという。私は怪我と噓をつきその場をやり過ごした。普段から私は愛想が無いため理不尽に嫌われたりすることが多いが、私自身大したことではないと思っている。好かれるという行為は己の弱さに言い訳するための愚行だと思ってるし、男なら尚更でイケメンに媚びを売る女はみんな死ねと思っている。私の髪型もぼさぼさの髪を適当に後ろで結んだヘアスタイルなのもその考えを反映したもの。恋愛とか本当に興味ない。しねよ。私達の高校は「聖フィーリス学園」とかいう都会にあるウチとは桁違いの偏差値と規模を誇る化け物みたいな高校と姉妹校だ。年に一回向こうとウチの新一年生代表らが交流する。なんと私は何故かそれに選ばれた。理由は簡単。誰もやりたがらないから。その交流会とやらは明後日に行われる。場所は向こうの学校らしく明日東京に向かわなきゃいけない。最近の東京は治安が悪いのでかなり不安だ。宿泊場所は聖フィーリス学園内にある都市部の中にあるホテルらしい。そんなに楽しみではないけど一応学校の代表なので気を引き締めてはいこうと思っている。自宅に着き夜勤の母親が作った晩御飯を食べて明日の準備をして眠りにつく。これが私のつまらない一日のルーティン。退屈な朝を迎えてスーツケースを転がしながら新幹線の駅へと向かう。私が最後の一人だったらしくかなり焦ったのは秘密。新幹線に乗り込み2時間程度で聖フィーリス学園内の駅に到着することができる。周りの学生達は向かいの席に座っている生徒と話している。私の向かいには誰もいない。大体6~7人くらいの生徒と校長と4人の教師で行く。向こうもそのくらいの人数なんだと。噂によると巨乳の生徒会長もいるらしい。ちょっと見てみたい。窓の景色を何の理由も無く眺めながら2時間を過ごした。段々と変わる景色にも特に何の感情も湧かなかった。他の生徒はワイワイはしゃいでいた。そういえば教師達は執拗に私の様子を見てくる。そんなに一人なのが心配なのだろうか。なら対面に誰かを座らせろよ。そんな愚直を心の中で吐きながら気がつくと学園内に入っていた。写真で見たことはあるが想像の何百倍もでかいし駅も空中にある。内心結構びっくりしてた。ここからホテルに向かい一日自由行動をする。ホテルに向かうまでの道のりで私は一度も口を開かなかった。周りの生徒たちは相変わらず騒がしい。見たこともないような規模の校舎、整備されすぎた街路、無駄に洗練された制服の生徒たち。全部が気に食わない「……はしゃぎすぎでしょ」誰にも聞こえないように呟いた。聖フィーリス学園は「上の人間」が集まる場所だと聞いていたけど、実際に見るとその意味がよく分かる。設備も生徒も空気すら違う。ここにあいつみたいな人間が何人いるんだろう。ふと階段から落ちたあの生徒の顔が頭に浮かぶ。すぐに爪を噛んだ。一瞬だけ世界が止まる。その静寂の中で、私はゆっくりと息を吐いた。大体0.8秒くらい止めた。やっぱり大した時間じゃない。でも今の心を落ち着けるにはそれで十分だ。何事もなかったように世界が再開する「おい、大丈夫か?」急に声をかけられて少しだけ肩が跳ねた。振り向くと見慣れない制服の男子生徒が立っていた。聖フィーリスの生徒だろう。背は高く、整った顔立ち。いかにも上側の人間「さっきからぼーっとしてたけど」「別に」短く返す。男は少しだけ苦笑した。「交流会の人だよな?門松乃丘の」面倒くさい「だから何」「いや、案内係。迷ってるなら」「迷ってない」被せるように言った。男は一瞬だけ言葉を止めたがすぐに肩をすくめた「そっか。じゃあ好きにすればいい」あっさり引いた。都会人間は意外とあっさりしてる。そのまま去ろうとする背中を無意識に目で追ってしまった。ああいうやつ嫌いだ。余裕があって押し付けてこないくせにどこかで全部見下してる感じ。しかし強い違和感を覚えそいつに語りかけた。「ねぇあんたあの学園の生徒なの?」「そうだけど」「あの学園は女子校よ」男は大きく微笑むと自分に近付いてきたが、時間を少し止め何とか逃げることに成功した。かなり人が多い場所に向かいトボトボと歩いていると、目の前の女性がユラユラと揺れたのち倒れた。「っ……!?」周囲が一気にざわつく。倒れたのは聖フィーリスの女子生徒。胸を押さえて苦しそうにしている。でもそれだけじゃなくその倒れ方が不自然だった。「……は?」思わず爪を噛む。世界が止まり静止した世界の中で私はその女子生徒に近づいた。そして気付く。「……何これ」彼女の制服は胸元だけがわずかに焼けている。まるで内側から燃えたかのように。時間が戻ると悲鳴が上がる。誰かが「救急車!」と叫ぶ。でも私はそれどころじゃなかった。今の私と同じだ。一瞬だけ世界を歪めたようなあの感覚。違うのは規模と方向。「……面倒な場所に来たかも」聖フィーリス学園。ここには私と同じ「何かを持った人間」がいる。しかも一人じゃない。そう確信した瞬間胸の奥がわずかにざわついた。退屈だったはずの世界が少しだけ面白くなり始めていた。夜。自由行動とはいえやることもない私は適当に都市部を歩いていた。ネオンが鬱陶しい。人も多い。どいつもこいつも楽しそうでやっぱり気に食わない。「……帰ればよかった」そう呟いた瞬間だった。背筋をなぞるような違和感。反射的に爪を噛む。世界が止まる。「0.7秒」その静止の中で私はそれを見た。「……っ!?」自分のいた場所。ほんの数センチ後ろの空間が歪んでいる。まるで何かが通過した跡みたいに。時間が戻る次の瞬間、地面が抉れた。「は……?」遅れて轟音が鳴り響きコンクリートがえぐれ粉塵が舞い上がる。周囲の人間が悲鳴を上げて逃げ出す。「避けたかぁ」声がする方向を振り向くとそこに立っていたのは黒いフードを被った男。顔は見えないけどでも分かる。こいつの能力だ。「……あんた、何」「質問に答える義理はないな」男がゆっくりと手を上げる。その瞬間、空気が軋んだ。「っ……!」直感でまた爪を噛む。世界が止まる。今度は1秒近く。男の周囲の空間が渦を巻くように歪んでいるのが見える。これさっきのやつと同じだ。違うのは規模。全力で横へと身体を転がし逃げた。時間が戻る。ドンッ!!さっきまでいた場所がまるで爆発したみたいに抉れる。「……チッ」男が舌打ちする。「面倒だな。お前止めてるだろ」心臓が跳ねた。バレてる。「……だから何」強がる。でも状況は最悪だ。距離はあるけど向こうの攻撃は見えないし速い。私の停止はせいぜい1秒。「逃げ続けられると思うなよ」男が一歩踏み出すと空気が歪むと爪を噛む。止める。動く。戻る。破壊。それの繰り返し。流れた時間は「数十秒」でも体感はもっと長い。「っ、は……!」息が上がり限界が近い。「もう終わりだ」男が手をこちらに向けた。今までで一番強い歪み。恐らくこいつの能力は音波か何かだ。空気の歪みも波の形だろう。街中で倒れた女子生徒もこいつにやられたのだろう。予想だけど胸ポケットに入れていたスマートフォンを音波で破裂させ殺したんだ。しかし今更理解したところで無駄だ。避けきれない。そう思ったその瞬間。「そこまでです!」軽い声。次の瞬間、視界がぶれ気付けば私は数メートル後方に移動していた。「……は?」目の前に誰かが立っている。モデルみたいなシルエット。月明かりに照らされて黒色の手入れされた髪が揺れる。「大丈夫ですか?」振り返ったその人物は大人しく清楚な雰囲気を纏っていた「ここは私に任せて逃げてください!」その名前を私は知らないはずだった。でもなぜかしっくり来る。「私は金糸雀ケ原と申します!」男がわずかに構えを変える。「……増えたか」「貴方はもう勝てません!大人しく降参しなさい!」金糸雀ケ原は男をしっかりと見つめていた。そして彼女の背中から大きく美しく羽が生えたのだ。「……綺麗」思わず口に出る。「とりあえず私の後ろにいてください!」一歩前に出る。その瞬間金糸雀ケ原の手から光る矢のようなものが出てきた「浄化します!」バンッ!!空気が弾ける音が夜に響くと男の身体が数メートル吹き飛ぶ。「殺しはしませんが…気絶はしてもらいます」振り返り黒色の髪が揺れる。「大丈夫ですか?」太陽のような微笑みに私は口を開きあっけに取られてしまっていた「大丈夫ですか?立てますか?」胸の奥がドクンと鳴ったのは初めてだった。自分と同じ側の人間を見て少しだけ悔しいと思ったのは初めてだった。そこにギターケースを背負ったイケイケな女子も走ってきた「おーい!急に走ってどうしたんだよぉ!」「あぁこの方が襲われていたので助けてたんです」そのイケイケ女子は私を見るなり大爆笑した「ぷっ…何この田舎臭い小娘!お下げとか笑えるんですけど~!」「あぁ…いやその…」金糸雀ケ原はそのイケイケな女子を静止し頭を下げ深々とお詫びをした「すみません!大変な失礼を!」「あぁ…いやいいんです」スカートに着いた砂ぼこりを払ってホテルへ帰ろうとしたところ再び呼び止められた「貴方その制服もしかして門松乃丘高校の方ですか?」「はい…そうですけど」「なら先生方にご挨拶と報告をさせてください。ほら貴方足首を切ってますし」足首を見ると確かにがっつりと切れており新品の靴下から血が滲み出ていた。「あぁ…」「歩けないのは切っていたからなんですね気が付かず申し訳ございません。私が送っていきますので肩に掴まってください」「ありがとうございます…」そのままホテルへ向かい医務室へ向かい治療をされ金糸雀ケ原さんと先生方に男と起こった出来事を報告した。教師は不思議そうな顔をせず普通の顔をして話を聞いていた。たまに金糸雀ケ原さんの胸をチラ見する教師もいた。そうして20分ほどの報告を終えて部屋に戻り天井を見上げすぐに眠ってしまった。頭の中では今日の出来事が頭の中で駆け巡り続けよく寝れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ