電波妨害
返事を聞いたKはヘッドセットのマイクを手で覆った。
「……死角のどこかに佐東さんがいるかと言われると、怪しいところだよね」
「うん……」
Yもキーボードを操作してマイクをオフにする。
「それは皆わかっていると思う。問題は、そこに何があるのか、だね」
Kは険しい表情のままキーボードを叩き出した。
「引っかかったか?」
「まんまと」
パソコンを操作するデネブの側にベクルックスが立っている。何分割にもされたパソコンの画面には、誰もいない廊下や人影が横切っていく様子が映っている。
「下の会社もオレ達の傘下だと、流石の渡部でも気づかなかったか」
ベクルックスは意地の悪い笑みを浮かべた。
「別れたところを見ると、死角の防犯カメラが別回線になっているのにも気づいてないらしいな」
「……気づかれたら、どうするつもり」
「その時はその時だ。迎え撃ってやるよ」
吐き捨てたベクルックスは部屋を出ていった。残されたデネブは画面の薄明かりに照らされた口元をそっと歪ませた。
「……違うみたいだな」
Xは十五階にいた。片っ端から扉を開けていくものの、実鈴達がいる様子はない。
「僕は空振りだったよ。皆は?」
『…………』
通信機に呼びかけるも、返答がない。
「ん?」
眉をひそめたXはポケットからスマホを取り出した。ホーム画面に表示されているアイコンを見て、嫌な予感がする。
「圏外……か」
小さく呟いたXは階段に向かおうと踵を返した。そして即座に飛び退く。今までXが立っていた場所には拳が突き出されていた。
「……気づかなかったよ」
頬に一筋の汗が流れたXは不敵な笑みを浮かべた。そこには、アルタイルが立っていた。
(……だから、死角になっていた場所は全部階段から遠かったのか)
Xは静かに構えを取った。その瞬間にアルタイルが飛びかかってくる。
飛び蹴りを身を翻して避けたXは着地するアルタイルに催眠弾を三発放った。それを手でなぎ払ったアルタイルが目を見開くXに回し蹴りを繰り出す。
(マジか……)
回し蹴りをギリギリで避けたXはクッと奥歯を噛み締めた。
(前より強くなってる。これ、僕が保つかな……)
いや、考えている暇はない。やるしかない。
ズレた仮面を直したXは構えを取り直した。
「クソッ、やっぱり罠か!」
二十階にいたAはベガの放つゴム弾の嵐を避けながら叫んだ。
(皆と連絡も取れない! また電波妨害か……!)
早く降りたいところだが、ゴム弾が厄介すぎる。
(弾倉の装填が早すぎる! そういう加工がしてあったとしても尋常じゃない!)
実弾ではないとはいえ、当たれば痛い。
(どうすれば……距離を取られたままだと厄介だ……かと言って、強引に突っ込むのもリスクが高い……せめて皆の様子が分かれば対処も考えられるのに……)
しかし、今のAは何もできない。
(……やるしかないか)
バク転をしたAはゴム弾の隙間を縫ってベガに突進した。




