第二話:星九天玉とギルドと出会い⑴
翌日、星九は拠点にいた。
「しかし、ギルドも本当に多いなぁ……」
街中を見渡す限り、誰もかれもギルドに所属している……所属していない人との割合は8:2だと思う。
そう星九が考えているとミカさんから聞いていたギルド案内所まで辿り着いた。
「いらっしゃいませ、どう言うご用件で?」
「あの……ギルドを設立したいのですけど。」
「はい、設立の方ですね……では、十万ゴールドになります。」
「ギルドの設立に必要レベルとか必要人数とか無いのでしょうか?」
星九がそう尋ねると受付嬢はキョトンとした表情でこちらに顔を向けた。
「いえ、ありませんよ? 必要なのは先程渡されたゴールドだけなので……」
「そうなのですか!ありがとうございます。」
「いえいえ、ギルドの名前は何にします?」
「うーん、紅葉の木でお願いします。」
「かしこまりました、では、楽しんでください。」
ギルド案内所を後にして、星九は拠点の階段に腰を掛け、募集をすることにした。
「まったり系ギルド、紅葉の木メンバー募集中〜!」
街中を行き交う人が視線を一瞬だけ星九天玉に向き、再びガヤガヤいいながらその場を去って行く。
(まぁ、分かっていた事だけどね……)
星九天玉は自分のステータス画面の一点を眺める。
レベル15と表示されてる一点を。
サービス開始から20時間余りが経過しただろうか?
最高レベルは40や50と騒がれている中、星九のレベルは低い。
その上、ギルドが多々ある状況で誰が低レベルのギルドマスターに着いて来るだろうか?
いや、一人いたな……そう思い、フレンド画面に目をやる。
偶然Michaelさんがログインに変わり、目の前に現れる。
「あ、ミカさん。こんにちは!」
「こんちゃ……って何してるん?」
「見てのとおり、ギルド勧誘ですよ!」
「……あぁ、そういえば昨日言っていたな。」
「と言う訳でギルド入りませんか?」
「ええよ!」
「ありがとうございます!」
………………
……………
………
ミカエルさんが無事ギルドに入り、二人で勧誘をすることにした。
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
「今ならギルドマスターを殴る権利が付いて来るよ〜」
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
「今ならギルドマスターを乗っ取れるよ!」
「いや、ないから!」
………………
…………
……
「しかし、集まりませんね……ってミカさんは何してるの?」
「うん?街にいるプレイヤーにフレンドチャットで勧誘してる。」
「……そんなこと出来るの?」
「せやで、一人来たいって人がいたわ!」
「え、何処?」
「マスター、あそこ。」
ミカエルさんが指を刺した場所には一人の初心者さんがいた。
「あの……、ギルドに入りたい方ですか?」
「はい、見てのとおり初心者ですが……」
「マスター、どうする?」
「初心者なのはこちらもですし、それに入りたい方を無下にはね……」
「じゃあ!」
「はい、よろしくお願いします。シルティアさん!」
「はい、よろしくお願いします!」
「シルティアさんはこの後、どうします?」
「狩りに行って来ます!」
シルティアさんは杖を振り上げ、自身を回復してみせた。
「アコライトですね!」
「はい、アコライトのステータス振り分けってどうやれば良いのでしょう?」
「アコは知能多め体力か体力多め知能になる。」
「ミカさん、詳しいね。」
「そう聞いた事があるだけよ。」
「じゃあ、知能多めにします!」
「はい、狩り頑張って!」
「シルティアさん、ファイト!」
………………
…………
……
シルティアさんを見送り、再び二人は勧誘に戻った。
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
「今ならサブマスターの座が貰えるって!」
「いや、あげませんから!」
「あのギルドに入れて貰えませんか?」
「サブマスターが遂に決まるの!?」
「いや、ミカさん……しかし、ウチで大丈夫ですか?」
「はい!漫才ギルドですよね。」
「いや、違うから……」
………………
…………
………
紅葉の木設立から1週間が経ち、星九は狩りの合間に拠点で勧誘を続けていた。
ギルドメンバーは20名が入れる中8名まで増えていた。
ワイワイしながら狩りをしたり、ギルドで遊びたいと言う星九の考えで引き続き募集をしていた。
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
今日はミカさんは不在と言う事で星九とシルティアさんが募集をしていた。
シルティアさんはたまたま狩りが終わって手が空いたので勧誘に来ただけでだった。
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
「初心者さん、歓迎です!」
この一週間で分かった事が2つあり、1つ目は大手ギルドは常に満員状態になっている事なので、紅葉の木設立時と比較したらギルド未加入者が増えてる点があり、2つ目は上級者、中級者募集中はよく見るが初心者さんを募集中しているギルドが紅葉の木以外ない点である。
幸か不幸かシルティアさんからのメンバーさんは全員初心者さんであり、上級者さんはミカエルさんくらいしか居なかった。
そう言う理由があって初心者さんも入りやすいのかな?と内心星九は考えていた。
「まったり系ギルド紅葉の木、メンバー募集中〜」
「あ、星九さん、1人来たいって人が来ましたよ。」
シルティアさんもミカさん同様にフレンド追加しながら勧誘していくと言うスタイルでやっていた。
星九はずっとシャウト(叫び)を街中でやっていたが、成果は乏しかった。
………………
…………
……
「始めまして、星九と言います。」
「始めまして、FenRirと言います。」
「えぇっと、どう呼べば良いのでしょう?」
「フェンリルで大丈夫ですよ!」
「では、フェンリルさん、よろしくお願いします!」
「はい、よろしくお願いします。」
……………
…………
……
「メンバーが増えたね!」
ギルド画面を見ながらミカさんは言った。
「そうですね……しかし、これからどうするかな?」
ギルド画面を見ながら星九はメンバーのレベルを眺めた。
ギルド内での最高レベルが40のフェンリルさん、ミカエルさん、次にレベル35の星九とシルティアさん。
他のメンバーさんはレベル10から30台前半だった。
「狩りに行くにしてもレベルがバラバラですし、どうしましょうか?」
「うーん、レクレーションでもやってみいひん?」
「レクレーションとか昔、別ゲームでマップ鬼ごっこをさしたっきりなので何だか懐かしいです!」
「しかし、何をしようかな…」
ミカさんと星九は頭を悩ませ、考え始める事にした。
「そうや、無制限に行って見いへん?」
「無制限?何ですか、それ。」
「 PvPやで、拠点の中央にあるワープから行けるわ!」
「 PvP……苦手ですが。」
「かまへんかまへん、ギルドイベントのキッカケになるかも知れへんし。」
「了解です、では行きましょう!」
「じゃあ、無制限2で会おう!」
………………
…………
……
無制限2は木で出来た吊り橋が外観を円状で囲っており、中央に小さな円状の吊り橋がかけられていた。
中央には3.4人プレイヤーがいて、こちらを見るなりいきなり襲いかかって来た。
「ヒャッハー、初心者か!狩るぜ」
「おう、オリ(ウォーリア)なんてただの的だと教えてやる!」
「……確かに無法地帯ですね。」
星九は頭を悩ませ、片手剣を構えてみせた。
…………
………
……
「ヒャッハーじゃなかった……覚えてろよッ!」
「オリなのに硬い……チクショー。」
(だって、HP10万ちょっとあるからね……)
星九は周囲を見渡し、ミカさんを探し始めた。
「炎よ、行け!」何処からか声が聞こえて、ファイアボールに直撃した。
「さっきの戦いを見ていたけど、精神は上げてないみたいだから結構ダメージが出たんじゃない?」
「そうですね……と言うかどこの世界に魔法耐性の為だけに精神をあげるウォーリアがいるんですか!」
「そりゃそうだ!」
そう言い、ミカさんは姿を見せ、正面に向き合った。
「では、ヨーイドンで戦うで良い?」
「はい、よろしくお願いします。」
「よーい!」
「ドン。」
ミカエルさんは、次々と魔法を繰り出し、星九は持ち前の体力を物を言わせて、接近戦に持ち込んだ。
遠距離職と戦う場合は、ウォーリアはどうしても分が悪く、たまたまHPに多く振っていたのが幸いした。
接近戦に持ち込んだらウォーリアが有利になり、ショックスタンプを筆頭としたスキルでミカエルさんを押していた。
ミカエルさんは星九から距離を取り、何やら唱え始めていた。
「もう少し……」
唱え終わるまでに倒さないと……そう直感が告げ、星九は再び接近戦に持ち込む。
しかし、後1メートルと言うところでミカエルさんは唱え終わり、雷を身に纏い接近して来た。
………………
…………
……
「いや、しぶとすぎやろ……」
「そうでしょうか?」
結局、最後のケラベノス(雷を身に纏うスキル)で星九は全HPを持って行かれ、地に伏した。
「星はHP幾らくらいあるん?」
「大体11万近くですね。」
「……どんだけ防御に振り分けてるねん、自分。」
ミカエルさんは呆れた。
「レベル15までは初期化出来るからそこま様々な振り分けをしていて遊んでたからね。」
「そうなん?まぁ、何かギルドイベントは閃いた?」
「うーん、無制限でワチャワチャするかしりとりくらいしか……」
「じゃあ、ギルドチャットで聞いてみたら?」
「そうしますか!」
………………
…………
……
「第一回、ギルドイベントを近々開催します。」
「ギルドイベント?」
「何それ?」
「ギルド内で交流を広めようと思い、開催するにあたりました。」
「第一回目と言う事でアンケートを取りたいと思います。」
「 PvPとしりとりのどちらが良いでしょうか?」
「 PvPってレベルがバラバラなんですが……」
「大丈夫です、レベルが高い方は装備なしで武器も初期のみで戦う……と言うのはどうでしょう?」
「え、マジかいな……」
「じゃないと不平等ですからね。」
「じゃあ、 PvPをしてみよう!」
………………
…………
……
「と言う事でPvPが多数になりましたね!」
「しりとりが良かったのに……」
「じゃあ、次回はしりとりにしましょうか!」
「はーい!」
ギルドチャットでのやり取りが終わり、星九とミカさんは拠点に戻った。
拠点に変えるとシルティアさんがいたので声をかけてみた。
「ギルドイベントって景品が出たらいいと思う。」とシルティアさんが言い、ギルドイベントの賞品を考える羽目に。
………………
…………
……
ギルドイベントに向けて、星九は転職を考えていた。
ウォーリアのままだとスキルが4つしかない為、ワンパターンになりがちと思い、少し前に実装された上位職を見てみた。
クルセイダーは片手剣を使う守備寄りの上位職。
スキルは空間に斬撃をバツの字に飛ばすクロスブレイド、相手を衝撃波でノックバックさせるプロテクション、自身が一歩下がり、回転しながら攻撃するバックスラストがあった。
グラディエーターは両手剣を使う攻撃寄りの上位職。
両手剣を前後に振り下ろすオーバースイング、両手剣を左右に振りながら移動攻撃するカタクラフト、前後左右に範囲攻撃をするペンデュラム。
………………
…………
……
「クルセイダーは片手剣と盾を装備出来るみたいで、グラディエーターは両手剣で範囲攻撃が魅力的か…うん?両方お試し出来るみたい。」
星九はお試し出来る為、クルセイダーに転職をしてみた。
無制限2でスキルの確認をして見ることにした。
「まずはクロスブレイド!」
バツの字に腕を左右に振り下ろすと斬撃が真っ直ぐに三、四メートル飛んで行き、消える。
「次にバックスラスト!」
スキル名を宣言すると体が一歩後ろに引き、前方に回転攻撃を行った。
「なるほど…こんな感じなのか。」
次にグラディエーターに転職してスキルを確認してみた。
「オーバースイング!」
スキル名を発すると両手剣を前後に勢い良く振り下ろした。
「次はカタクラフト!」
左から右に両手剣を振り、正面で振り抜いた。
(試した感じだとクルセイダーが相性良さそうかな?)
星九は再び、クルセイダーに職を戻した。
………………
…………
……
ギルドイベントまで残り1週間。
「さて、今日も無制限2で練習をしよう。」
狩りの合間に無制限2に籠って練習をするのが日課になっていた。
いつも通り無制限2に入ると先客がいた。
先客はどこからともなく隕石を振り落としていた。
「あら、ここに人が来るのは珍しい。」
「始めまして…魔職の方ですよね?」
「はい、エレメンタラーですよ!」
(ミカさんと同じ職だ!)
「せっかくなので1戦して見ませんか?」
「良いですよ!」
エレメンタラーはそう言い、杖を構えた。
「では、よーい」
「どん!」
2人は合図と共に無制限2を走り始めた。
星九はエレメンタラーに近づく様に、エレメンタラーはなるべく距離を取るように…
「炎よ!」
炎が直線上に星九を目掛けて飛んできた。
星九はギリギリのところでスライディングし、エレメンタラーにバックスラストを当てる。
エレメンタラーのHPが少ししか減らないのを見て、再度、片手剣で攻撃を仕掛ける。
エレメンタラーは片手剣の攻撃をスライディングで避け、再度呪文を唱える。
星九は攻撃が来ない事に違和感を覚え、接近をした。
呪文の詠唱が終わり、空に魔法陣が五箇所発現し、光魔法陣から発射され、星九を襲いかかる。
「……終わったのかな?」エレメンタラーはそう呟き、背を後ろに向けた。
「クロスブレイド!」
斬撃が空中をゆっくり漂い、エレメンタラーの背に襲いかかる。
「嘘!今のを受けて大丈夫なの?」
「……危なかったですが、なんとか無事です。」
星九は頭上のHPバーを見せた。
HPバーが残り1/5になっていた。
「……降参します!」
エレメンタラーはそう告げ、床に座り始めた。
「危なかったですよ…エレメンタラーってみんなこんな感じですか?」
星九も攻撃の意思がないのを確認し、座り雑談をし始めた。
エレメンタラーの名前はLunaさん。
$urvivorsのギルドマスターさん。
最近はやる事がなく、無制限2で塔の練習をしていたらしい。
「塔?」
「そそ、塔!」
「塔ってなんですか?」
「塔ってのは大規模PvPの一種でギルドで挑戦する事が出来るコンテンツね!」
「ほほぉ、そんなのがあるのですね。」
「で、その塔を制したら…」
「制したら?」
「お宝があるらしいよ!」
「お宝……いいですね!」
「あっ…用事で落ちるね、また無制限で会いましょう!」
「はい!」




