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勇者の召喚と魔王討伐の時代は終わった。CEOの俺が女神から課された試練は異世界創業だった ~だけど世界の全ては“魔王”に繋がっていた~  作者: スアップ
1章

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第11話 Regulatory Hack(リーガル・ハック)

騎士たちの抜いた剣が、冷たくオフィスの空気を切り裂く。

差し押さえ令状を突きつけるバルトロメウスの目は、完全に俺たちを「駆除すべき害虫」として捉えていた。


【バルトロメウス】

「神崎創真。往期往時、どれほど画期的な技術であろうとも、王都物流統括令という『法』の前には無力。お前たちの不法な配送網は、今この瞬間をもって全面停止だ」


だが、創真は怯むどころか、デスクに深く腰掛け、不敵に足を組んだ。


【創真(CEO)】

「『未登録の個人による有償配送行為の禁止』……。なるほど、いかにも商業ギルドが好みそうなガチガチの規制だ。だがバルトロメウスさん、あんたたちのその古い法律ルール、最後にアップデートされたのはいつだ?」


【バルトロメウス】

「……何だと?」


創真が手元の通信水晶を叩く。ホログラムとして空中へ展開されたのは、差し押さえ令状ではなく、一枚の【業務提携契約書】だった。


そこに刻まれていた署名は――『王都公共郵便局・総監 御堂紫臣』。


【バルトロメウス】

「なっ……! 御堂!? なぜ王都の最高評価投資家が、落ちぶれた国の公共郵便の総監名義を出してくる……!」


オフィスの通信スピーカーから、あの低く冷徹な声が響き渡る。


【御堂(通信)】

「久しぶりだな、バルトロメウス。私が15年前に魔法馬車事業を売却した際、王都の物流インフラ維持を条件に、国から『公共郵便の無期限運行権ライセンス』を買い取っていたのを忘れたか?」


テラス席で冷めたハーブティーを飲んでいた男は、ただ隠居していたわけではない。王都の物流法をねじ伏せるための「最強の免責資格ライセンス」を握ったまま、牙を研いでいたのだ。


【氷華(CFO)】

「(眼鏡を押し上げ、冷酷に微笑む)王都物流統括令・第3条の例外規定。国の認可を受けた『公共郵便の委託業務』に関しては、ギルドの登録審査を免除し、最優先の通行権を付与する。――私たちは昨日、御堂さんの持つ公共ライセンスの『公式委託パートナー』として登記を完了させたわ」


【レイ(CTO)】

「……つまり、僕たちのプラットフォームで動いている1,000人以上の個人運び屋は、現在、全員が『王都公認の臨時郵便官』という扱い。……差し押さえるなら、国家インフラの破壊罪で騎士団ごと逆告訴リーガル・カウンターする」


「くっ……!!」

バルトロメウスの顔が屈辱で歪む。

商業ギルドが敷いた完璧なはずの法規制リーガル・ブロックが、御堂の持つ隠しライセンスと、ネクサスフラットのスピード感によって、完全に裏をかかれたのだ。


【創真(CEO)】

「御堂先輩から毟り取った2,000万ゴールド。あれはただの軍資金じゃない。あんたたちの既得権益の壁をブチ破るための、合法的な『特権パスポート』の代金だ! ――さあ、公務執行妨害で捕まりたくなければ、その錆びた剣を収めて帰ってくれ」


バルトロメウスは激しく歯噛みし、令状をクシャクシャに握り潰した。


【バルトロメウス】

「……舐めるなよ、泥船の起業家ども。法をハックした程度で、この王都の富を独占する商業ギルドに勝ったと思うな。――次はお前たちの『心臓』を直接叩き潰す」


監査騎士団が、足早にオフィスから退いていく。

その瞬間、張り詰めていた空気が抜け、氷華がドサリと椅子に座り込んだ。


【氷華(CFO)】

「……勝った、わね。これで商業ギルドは、私たちの配送網を法律で止める手段を失ったわ」


【レイ(CTO)】

「(キーボードを叩きながら)……ダッシュボード、規制解除を感知。……注文数が再加速リバウンドしてる。……【2,800】……【2,950】……【3,010件】。目標、達成」


画面に大きく『TARGET ACHIEVED(目標達成)』の文字が浮かび上がる。

2,000万のキャッシュ投下、そして既存権益とのリーガルバトルを制したことで、ネクサスフラットは名実ともに王都の「新たなインフラ」へと成り上がった。


だが、創真の目はまだ笑っていなかった。バルトロメウスが最後に残した「心臓を叩き潰す」という言葉が、不気味に耳に残っていたからだ。


その時、オフィスの魔導通信機が、悲鳴のようなアラート音を鳴り響かせた。

画面に映し出されたのは、ネクサスフラットの最大の決済基盤(財布)である『中央魔導銀行』からの緊急通知だった。


【レイ(CTO)】

「……創真、大変。……ネクサスフラットの全口座が『一時凍結』された。……商業ギルドが圧力をかけて、僕たちの資金移動をすべてロックした……!」


【氷華(CFO)】

「なっ……!? 手元資金の1,240万ゴールドが……動かせない!? 明日、1,000人の運び屋たちに支払うボーナスが出せないわ!」


スタートアップの血流である「キャッシュ」が、根元から止められた。

明日、報酬が支払われなければ、あの荒くれ者たちは一瞬で離反し、ネクサスフラットの信用はゼロになる。


生存デッドラインまで、残り7日。

商業ギルドの、文字通り「資金調達を絞め殺す」真の総攻撃が始まった。


(第11話・了)


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【現在のネクサスフラット・ステータス】

━━━━━━━━━━━━━━━━━━

・手元資金:12,400,000 Gold(口座凍結により使用不可:実質0)

・現在のトラクション:3,010 件 / 日(王都最大の配送量)

・生存デッドライン:残り7日

・次なる絶望:明日までに現金を用意できなければ「黒字倒産」

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