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星守シオンは帰りたいっ!~ギャル、異世界転移した。と思ってたらタイムトラベルだったらしい。未来が魔法の世界ってマジですか!?~  作者: 日華てまり
第3章 九龍寨城 陽華商虎編

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85話 燃えるような赤髪の

 


「ねっ、ジンガ! 私、マジで元の世界に帰れるかもっ!」


 今後の行動を決める為に別室にいたジンガを連れ戻したシオンは、開口一番、満面の笑みでそう告げた。


「……っ、! そうか……、良かった……。ずっと、君が求めていたことだ」

「うんっ! 考えないようにしてたけど、絶対に帰れるって保証はなかったからさ……、ずっと、怖かった。だけど、方法があるって分かって、目の前がパーッと晴れたみたいな感じ? 今なら私、なんだって出来そうな気がする!」


 シオンと対称的にジンガは顔を曇らせた。が、すぐに取り繕ってポーカーフェイスを(つらぬ)いた。


 (……なぁ。……それって……、元の世界に戻るってことはさ、もう二度とこの世界の住人()とは会えないってことなんじゃないのか……?)


 その喜びで、今はその事実に気づいていないであろうシオンに、ジンガは何も告げなかった。


「さっきも話したけれど、イオン()とシオンでこの世界にやって来た時期が違うんだ。それはこの世界での僕の役割が審判の飴の特効薬を作る為、しいてはシオンよりも先にこの世界と魔法の知識を得て、シオンが運命を動かし始めたこのタイミングで特効薬を用意出来るように仕組まれていたんだと納得していたんだけど……。フジ、貴方はいつからこっちの世界に来たんですか?」

「確か、七年前だったかな」


「七年前……っ!?」


 シオンが声を上げた。


「そんなにも前からですか……」

「イオンの言う、その役割ってやつ。それでいやぁ俺の役割はこの国で集めた審判の飴の情報を、アンタ達に伝える役ってところかねぇ」

「そうでしょうね」

「こっちに来てから、自分の意思で動いてたつもりだったが……、見事にシオンをサポートする情報を集めさせられてたってわけだ。全く、予言のお姫様ってのは全てを見透かしてるのか……、怖いったらないねぇ」


 そう言って、手に持っていた煙草をふかすと、へらりと笑ってみせた。


「俺が買われたのは、この情報収集の能力と……、裏社会で(つちか)った戦闘能力……。ていのいい汚れ役ってところかねぇ……」

「ん? フジ、今何か言った?」

「いいや、何も」


 ぼそり、と聞こえないくらいの声でフジが呟く。なんでもないさ、と首を振るフジに、シオンは「そう?」と言ってイオンとの会話に戻っていった。


「シオン達がこの国にやって来た目的は、審判の飴に関わる組織の情報集めと、審判の飴の流通の阻止……ね。本当に、俺も歯車の一つってわけか……。よし。それなら、アンタ達に会わせたい奴がいる」

「会わせたいやつ?」

「あぁ、目的はアンタ達と同じさ。俺はこの国で出会ったそいつと、この国の腐敗の元凶……、藍焔(ランシェン)とその組織を潰す為に動いていたんだからねぇ」



 ◇ ◇ ◇



 会わせたい人がいる、と告げられたシオン達は、フジに連れられて赤い提灯の連なった賑わいのある通りを歩いていた。


「それで、私達に合わせたい人って、どんな人なの?」

「商会のリーダーってところかねぇ」

「商会? って、物を売ってる人ってこと?」

「まぁ、そんなところさ。表では商会のリーダーとして手広く商売をして、裏では情報を売ってる。情報源は俺ともう一人、そいつの部下が集めているわけだが……、人数が少なくても俺の腕は分かるだろう?」


 そう言うと、フジは得意げにニヤリと不敵な笑みを浮かべた。そして、赤い提灯と外壁に刻まれた虎の紋章を指さして言った。


「この辺は向こうの大通りに比べても随分狭いだろう。いいとこ広めの路地って程度だ。それなのにも関わらず、どの店にも赤い提灯と虎の紋章が刻まれているのは、何故だか分かるかい?」

「んーと、人気なお店が多いから……とか?」

「ははっ、別の時代の人間らしい答えだねぇ。あれらはここら一帯、王家の目が光ってるいるぞ、という警告であり、王家の象徴であり、善良な民への庇護だ」

「んー、多分や わかった! と、思う。子ども110番とか警察が巡回するお店、みたいなことなんだよね、きっと」

「あー、なんだ。シオンが言ってるのが何なのか俺には分からないが……、つまり、王家の象徴なんてもんをこんな路地の店が掲げられているってことが、若様の功績ってところだな」


「なるほど……。つまり、その若様って人が立ち上げた商会に所属している店は王家の庇護下にあって、その若様が王家の庇護を()してスラムと変わらなかったこの路地をここまで成長させた……ということですね」

「イオン、正解だ。どうして、ここが元は貧困層だと分かったんだい?」

「この路地を歩いてきて分かったよ。大通りに比べてどの店も洗練されきっていなかったからね。よく言えば、昔ながらに助け合って、細々と続けてきているような馴染みやすさを感じたよ。だから、ここはきっと昔から商売の利益よりも人情味のある場所だったんじゃないかなってね」


 シオンが周りを見てみると、確かに隣り合った店同士で会話があったり、荷物を運ぶのを手伝っているのを見るのも珍しくない。


「それを束ねてる人って……」


 シオンは脳内に強面の厳つい大男を想像して身震いした。


「ねぇ、マジで今からそんな怖い人に会いに行くの……? ヤバ、めっちゃ緊張してきたんだけど」

「ははっ、シオンが想像してるような奴じゃないと思うけどねぇ。確か、シオンと同じくらいの年齢だったはずさ」

「嘘っ!? そんなに若いの!? 何歳!?」

「あー、確か……、俺が出会った時が十一歳だったはずだから……、十八歳だったかねぇ」

「マジで……? 私の一個上じゃん……」


 王家とのなんやかんやを実現したやり手な商会のリーダーで、一個年上で……。受け入れ難い情報の数々に、シオンは余計に想像がつかなくなって、悶々と頭を悩ませた。


「やぁ、フジさん。久しぶりだねぇ。アンタ、最近姿を見なかったけど、どこに行ってたんだい?」

「ちょいと野暮用でね。若様はいるかい?」

「若様なら奥にいるよ。アンタが帰ってこなくて寂しがってたよ」

「ははっ、そりゃあ、嬉しいねぇ」


 路地の突き当たりに(たたず)む大きな屋敷。

 勝手知ったる人の家、とでもいうようにフジは躊躇うことなく門をくぐった。門の前で掃除をしていたおばさんと親しげな会話を交わすと、フジはシオン達にも入ってくるようにと手招きをした。


 中華感漂う調度品で統一された屋敷の奥へと進んでいくと、一目でこの屋敷の主の部屋だと分かる、洗練された部屋に辿り着いた。


「若様、戻りましたよ、っと」


 フジが扉を開けると、燃えるような真っ赤な髪を束ね、腰より下まで三つ編みをした青年が、自信に満ちた表情でいかにもな椅子にどっかりと腰掛けていた。


 青年は長い足を組み替えて片足の上に乗せると、ほおずえをついてフジに声をかけた。


「ははっ、久しぶりに見る顔だ。それで、俺に連絡の一つも寄越さないで、何をしてたんだ?」


 そう言った青年の堂々とした振る舞いは、まさに一代でここまでの商会を築き上げた人物としての風格を感じさせた。

 

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