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貞操観念逆転世界で100分の1の出会い(年上女性と年の差恋愛)  作者: くろのわーる
第一章

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22話:膨らむ期待



 朝のオフィスは、いつも通り忙しく、人々の足音やキーボードのカタカタという音、電話の呼び出し音であふれていた。


 淡い日差しが窓から差し込み、書類の隅を照らす中、社員たちはそれぞれのタスクに集中している。



 すずは自分のデスクに腰を下ろし、整然と並べられた資料の山を前に、目を細めながら昨日のキャンプ予行練習を思い返す。


 思い出すたびに自然と口元が緩むが、表情筋で無理矢理に抑え、外に漏れないようにする。


「おはようございます!社長!最近、なんだか楽しそうですね!」


 声をかけてきたのは、いつも明るく、オフィスの雰囲気を和ませる部下の森田だった。


 元気いっぱいの声が、静かなデスク周りに軽やかに響く。


 私は顔を上げ、仕事用のきちんとした笑顔と、プライベートの楽しさが滲む半々の笑みを合わせ、にっこりと微笑む。


「おはよう。ええ……ちょっと、最近が充実してたからかもしれないわね」


「えー!何か良いことでもあったんですか!教えて下さい!」


 森田の瞳は爛々と輝き、興味津々でこちらを見つめる。


 その真剣な視線に、思わず頬が熱くなる。私は焦ったように視線を資料に戻した。


「……プライベートのことだから、まだ教えないわ」


「え〜、良いことを共有すれば、嬉しさは2倍ですよ!社長」


 その言葉で、スマホに保存されている昨日の写真の数々を思い出す。


 テントを丁寧に組み立てる智也君の笑顔。


 荷物を整然と整理し、段取りよく動く姿。


 細やかに教えてくれる口調。


 目に浮かぶだけで、自然と頬が緩む。


(智也君に任せれば大丈夫。私も安心できる)


 昼休み。休憩室の片隅でコーヒーを手に取り、窓の外の青空を見上げる。


 ビルの隙間から差し込む光が、白い雲を柔らかく照らしていた。


「来週も天気、晴れるといいな……」


 小さくつぶやき、思わず指でカップの縁を触る。


 仕事中も、休憩中も、頭の片隅にあるのは昨日の楽しい記憶と、来週への期待だった。


 ぼんやりと外の空を眺めていると、隣に部下の小林が座る。


「最近ほんとに楽しそうですよね。何か良いことでもあったんですか?」


 朝に続き、同じ質問を受け、思わず微笑みがこぼれる。


 私は少し肩をすくめ、軽く笑いながら答えた。


「うーん……まあ、ちょっとした楽しい予定があるだけよ」


 小林は眉を上げ、ニヤリと意味深に笑った。


「なるほどね、秘密の楽しみってやつですか」


 私も微笑を返す。


 男性は希少な存在で、本音を言えば自慢したくなる。


 しかし、智也君を危険に晒すわけにはいかないと、胸の内をそっとしまう。


 午後は書類の整理や来客対応に追われ、小さなトラブルもいくつかあった。


 だけど、私は落ち着いて一つひとつ処理していく。


 部下たちが「さすがですね」と褒めると、軽く手を振って受け流す。


(こうして落ち着いていられるのも、智也君と過ごした休日のおかげだわ……)


 帰宅の時間。雑踏のオフィスを抜けると、夕暮れの柔らかい光が街を包み込んでいた。


 歩道の街灯はまだ点灯していないが、空の色は茜色から紫に変わりかけている。


 私はカバンを肩にかけ、歩きながら来週のキャンプのことを考える。


 少し不安を口にするが、思い浮かべるのは自然に笑みの浮かぶ未来の光景だ。


(智也君と一緒なら、何があっても大丈夫)


 この言葉を、昨日から何度も心の中で反芻している。


 玄関のドアを開けると、キャンプに持っていくリュックが目に入った。


 荷物を軽く確認しながら、昨日の準備の光景を思い出し、胸が温かくなる。


 今日のオフィスも、いつも通りの日常のはずだった。


 でも私の心には、昨日と今日をつなぐ小さな幸福と、来週への期待が静かに積み上がっていた。


 帰宅した私はカバンを置き、窓の外を見やる。


 空はもう帳が降り夜色で、わずかに冷たい空気が室内に入り込む。


「来週……いよいよ、本番ね。どうか晴れますように……」


 小さくつぶやき、昨日の予行練習のことを思い出す。


 テントの組み立て、荷物整理、バーナーでの簡単な料理……すべてが順調に進み、二人で過ごす時間は自然で、心地よく、安心感に満ちていた。


(智也君と一緒なら、きっと来週もうまくいく。楽しみだな……)


 心の中でそう思うだけで、胸が少し高鳴る。


 不安だった感情は、徐々に期待で満たされていく。


 まだ現実は何も始まっていないのに、ワクワクとした気持ちが心を温める。


 来週のキャンプは、二人にとって特別な時間になるだろうと、私は確信していた。


 だって、それは出会いのきっかけでもあり、二人で築きたい目標でもあるのだから。


 小さな笑みを浮かべながら、私はリュックの中身を何度目か整える。


 心の中の安心と期待が、静かに、しかし確かに積み上がっていく――。



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