それぞれが迎えた結末を、少しだけ
それぞれが迎えた結末を、少しだけお話ししておきましょう。
栄えある記念式典の場を荒らしたという三人の翼人達。
彼らは裁きのために捕らえられて地下牢へ入れられた。
そしてその日の夜、人々は想像もしていなかった結末を目の当たりにする。
別々の場所に収監されていた三人の牢から同時刻、おぞましい絶叫が響き渡ったのだ。
あわてて牢番が駆け付けると、痛みにのたうち回る罪人の姿があった。
そして牢の床には、腐り落ちたと思しき何かが残されていたという。
ところどころに羽根のような残骸をまとわりつかせた何かが、彼らの翼であることが判明したのは、治療がひと段落した一週間後のこと。
背中の痛みで、おかしくなりかけている彼らからなんとか聞き出したところ、背に激しい痛みを感じた彼らは、皮膚が焼けるような熱と、異物を吐き出したいという欲求にかられて羽を出したという。
すると何もしていないのに、突然、羽が根元から一気に腐り落ちた。
そして、さらに衝撃的だったのは彼らの背に残った傷跡だ。
『爪でついた深い傷跡による引き攣れと毒で爛れた一度見たら忘れられないような醜い傷』
『まるで天罰、神の怒りを受けたような』
症状が落ち着いたあとも、式典で語った父親の言葉そのままの醜い傷跡だけは治らず背に残されたという。
そして床に腐り落ちたはずの羽はどうなったのか?
後日、後片付けをするために牢番が牢へと戻ったときにはもう跡形もなく消え去っていたらしい。
まるで凄惨な出来事など何一つ起きなかったかのように綺麗さっぱりなくなっていた。
あまりにも不可解な出来事に王城の人々は、これこそ神の怒りの現れではないかと恐怖したという。
そして翼人達は背の傷以外に異常は見られなかったため、厄介払いの意味合いもあって早々に刑罰が確定した。
父親は強制労働に、娘と母親は戒律の厳しい修道院へ。
特に娘はまだ若い身でありながら背中にひどい傷を負ったことがよほど耐えがたかったらしく、別人のように塞ぎ込んでいるという。
壁に向かってぶつぶつと『私は悪くない』と繰り返しつぶやいているとか。
父親と母親も、愛する娘の背中に残された傷跡が、かつて自分の疎んでいた娘の背中にあったものとそっくり同じだったことから娘の呪いだと慄いているらしい。
白精霊師により暴かれたのは、実の娘による姉に対する仕打ち。
それを真実と思う誰もが彼らの羽が腐り落ちたのは天罰であり、情状酌量の余地なしと判断、減刑されることもなく速やかに刑は執行されたという。
そしてもう一人、白精霊師を『王国史上最悪の悪女』と罵った公爵家子息。
彼は今回の一件で『王国史上最悪の勘違い男』と社交界で嘲笑されるようになった。
そのうえ公爵は彼のせいで爵位を落とし伯爵位となり、罰として恵み豊かな土地も奪われ、困窮に喘ぐこととになってしまったという。
そのため少しでも出費を減らしたい伯爵家は元凶である子息を除籍し、放逐することに決めたそうだ。
身の回りのことすらできない貴族階級の人間がなんの苦もなく暮らせるほど庶民の暮らしは甘くない。
わずかな手切金もあっという間に使い果たし、落ちぶれたあとの行方ははっきりとしないという。
ちなみに彼と公爵家への厳しい処分の裏には、辺境伯家子息に『勘違いであれば全責任を負う』と言ったことを国が重く受け止めたというのもあったそうだ。
白精霊師は国を守るために遣わされた神の愛し子、その彼女を侮辱したということになる。
国によって処罰を知らされた誰もが自業自得だと納得する結末になった。
最後に翼人の国を失い、辺境伯領に住むことを許された翼人達について。
最高潮に盛り上がった式典が終わったあと、ハンナはアレクと共に無事王都の屋敷へと戻ってきていた。
そして今後のことを話し合うとしてタンガの父であるタイランとルオも同行している。
ハンナの隣にはアレクが、そしてタイランの隣には笑顔のルオがいた。
初対面である四人は他愛ない事柄を談笑しながら応接室に入ると、部屋の扉が閉まった。
……途端にハンナの表情は一変し、ルオを睨みつける。
タイランですら、思わずビクリと肩を震わすど迫力だ。
ちなみに胸ぐらを掴もうと伸ばした手は、おっかない侍女長にはたき落とされたので仕方なく諦めている。
「……さて、予定にない行動をとった言い訳を聞きましょうか!」
「敵を騙すにはまず味方から、というでしょう」
ルオは悪びれもせずヘラリと笑った。
ハンナのこめかみに太い青筋が立つ。
「命がけの芝居というのはね、腹に隠した思惑までさらけ出して、はじめて成立するものなのよ? ぶっつけ本番で打ち合わせにない行動を取るための事前打ち合わせではなかったはずなのよね。ああ、もちろん思惑の意味も当然ご存知のはずですわよね、賢いはずの賢者候補様?」
「知ってるよ、だからこそあえて打ち合わせにない行動をとったのさ。二人が知らなかったという表情を、より本物らしく見せるために」
ルオの敬語が外れている。
つまりこれが本心ということか。
ちなみに当初の予定はこうだ。
豊穣と慈愛の神にもらった力を行使すれば、間違いなく褒賞がもらえる。
その褒賞として辺境伯領で保護した流民……翼人も含まれる、に国籍を与えてくれるよう願い出るつもりだったのだ。
もちろん一定期間は領地の開墾などの就労を義務付けるし、犯罪を犯すような人物は認めない。
そのうえで審査に通った人間を辺境伯領で雇うのだ。
領地の開墾は進み、周辺国から流れてくる優秀な人材や労働力も手に入る。
当然隣国の間諜も流れてくるだろうが、アレク様がいうには『仕事を任せてみれば一目で判断がつく』そうだから、ふるいにかければある程度の排除は可能だ。
この方法によって流民の保護という課題と人材の確保という領の課題が一気に解決できる。
ついでに翼人は国籍を得られるし、税収が上がれば国も潤う。
会場で三者幸せな結末を思い描いていたところ、この人達が予定外の行動をとって、ノコノコと献上品とやらと共に姿を現したのだ。
驚くなっていうことが無理なのよ!
アレク様は見極めるような眼差しを彼らに向けた。
「それで、君達にはどういう意図があったというのかい?」
「我々は翼人であることを明かした上で、国籍を認めてもらいたかった」
ルオに代わって答えたタイランの重い言葉にハンナは呆然とした。
さんざん話し合ったでしょう!
だって、そのやり方では……!
「翼人の身に危険がおよぶと言ったではないですか!」
この世界にいる人間は善人ばかりではない。
犯罪まがいの手を使い、人をコレクションのひとつとして蒐集するような悪人が存在する。
翼人は、人にはない翼を持つ。
稀有な存在である彼らを、悪人共が見逃してくれるとは思えない。
すると彼が、ふっと微笑んだ。
「相変わらず、優しいな」
「……タイランおじさん」
「今もその呼び方で呼んでくれるのか、うれしいよ」
タンガと仲の良かったころは、いつもこんなふうに呼んでいた。
これから先もずっと変わらないと思っていたのが、ずいぶんと遠い昔のように思える。
タイランは過去を懐かしむように、窓の外を見上げた。
「私はずっと、君の優しさが弱さからくるものだと思っていた」
「……」
「かつてタンガが君を伴侶にしたいと願ったとき、あの子は君の弱さに惹かれたのだと私は思った。そして羽の種類に重きを置いていた愚かな私は、あの子が君の境遇を哀れに思い、同情から婚約を願い出たのだと思っていたのだ。同情だけで愛情を維持するのは難しい、結婚したとしてもいつか夢は破れて破綻するだろう。苦しむあの子の姿を見たくない、その一心から私は親心のつもりで手のひらを返した」
「そうだったのですね」
「でも、真実は違った。今なら理解できるよ、あの子は君の弱さではなく強さに憧れたのだと」
あの日の夕闇が、ぐんと近くなる。
もしあのときタンガが私の強さを求めていたと知っていたら、今とは何かが変わっていただろうか?
忘れるなとばかりに、アレク様が手を握る。
ええ今更よね、わかっているわ。
私は夕闇を振り払うように、ゆるく首を振った。
「では聞き方を変えますね。どうしてそんな危険を冒してまで、翼人であることにこだわるのですか?」
国は失われた。
神々によって翼が与えられない未来も決まっている。
ふと、トウカと両親の末路が脳裏をよぎった。
彼らもいつかは、神々が思い描くふさわしい方法で翼を奪われていくのだろう。
それでも、彼らが翼を望む理由は何か。
そう尋ねるとタイランは破顔した。
その顔が、かつて見た賢者様の表情と重なる。
「なあに、至極単純な理由さ。空があれば飛びたい、ただそれだけだよ」
「そ、それだけですか?」
「そうだ。ルオ達と手分けして全員の意思を確認したよ。話ができるなら子供にまで意見を聞いた。我々は翼がある限り、空を飛びたい。その欲求には逆らえない以上、翼があることを隠すのはあとからリスクになるだろう。未来ある二人に、その責任を負わせるのはしのびないからね」
翼ある人。
かつてそう呼ばれていた種族がいたことを意外にも王族はよく知っていた。
翼を使って空を飛ぶ人間がいると彼らが聞いたときに、結びつけることは彼らにとって容易い。
調べて、彼らが辺境伯領に移民として登録されていると知ったら、王家や連なる上位貴族達はどう思うだろうか?
物事が悪いほうへと流されやすいのは世の常。
可能性の一つではあるけれど、それを聞いたアレク様が難しい顔をしている。
「ですから、ああいう手を使いました。堂々と姿を晒して献上品と交換に権利を勝ち取れば文句はないでしょう? それにあなた方にとっても利はあったはずです」
居住地の選定に迷う王へ、辺境伯家が土地の提供を申し出た。
王家と他領の領主に、わずかばかりの貸しと辺境伯家の慈悲深さを与えることができる。
これから家を盛り立てようとする若い二人に、少なくとも悪い印象を持つことはないだろう。
それにね、とルオはいたずらが成功した子供のような表情を浮かべた。
「我々が別の手段を講じたことにより、あなたが振り当てようとした褒賞が浮いた。結果、ハンナさんは自身への褒賞としてアレク様の隣に立つ権利を手に入れたのです。素晴らしい戦果ではありませんか!」
権利と義務は正しく行使されなくてはならない。
誰かの権利を奪って幸せになることを、今の彼らの考え方では良しとはしないということか。
翼人の価値観も変わりつつあるということであれば嬉しい。
「でも実際に住み始めたのは一年くらい前のことよ? 無防備に飛んでいる姿も目撃されているし、調べられたら許可がおりる以前から辺境伯領に住みついていたことはすぐにバレるわ」
「我々が移住を認められるよりも先に、辺境伯領に居住地ができていた。だからなんです? 許可の降りた時期と実際に住み始めた時期とのズレくらい、いくらでも理由はつきます。その程度の知恵と知識なら、我々でも持ち合わせているのですよ」
ルオがトントンと、指先で軽くこめかみを叩く。
見た目の軽さと違って、清濁併せ呑むことのできる人なのよね。
振り回された側からすると非常に納得がいかないものはある。
けれどルオは軽口で矛先をかわしながら人々を煙に巻くけれど、やり方は意外に計画的で手堅い。
そして高確率で望んだ結果を手に入れている。
タンガが彼を頼りにしていたのがなんとなく理解できてしまった。
それでも、とハンナは目元を覆ってため息をつく。
「やっぱり命がけじゃないの。状況によっては話を聞いてもらえず不敬罪に問われて処刑されることだってあり得た」
「ええ、そうですね。でもそこまでしなければ、今後あなたの手助けはできませんから」
ルオの視線がアレク様に向く。
アレク様の皮肉げに歪んだ唇の端がわずかに弧を描いた。
「ほう、そうくるか」
「はい。返せないほどの借りができてしまうまえに、少しずつ返していこうかと?」
「殊勝な心がけだ。それ自体は悪いことじゃない」
状況の読めない会話が続く。
うーん、もしかしてルオとアレク様の間に何かあったのかしら?
「そういえば、君にはちゃんとお礼を言っていなかったな。あのときは、タンガを助けてくれてありがとう」
タイランが、ハンナに頭を下げた。
黒精霊師として目覚めたタンガを正気に戻したときのことかな?
手加減せず殴った記憶のある私はゆるく首を振った。
「いいえ、あのときは私だけではタンガを救えませんでした。アレク様が羽を切り落としてくださったこと、そして稀なる黒精霊師となった彼自身が残されたわずかな理性で自分の命を救ったのです。私は介入するきっかけとなったに過ぎません。ですがもし、そう思われるのなら私の代わりに真面目で優秀な彼をいっぱい褒めてあげてくださいね」
彼とはもう二度と会わないから。
わかったよ、とタイランが寂しそうに微笑んだ。
「国籍を得たら、しばらくはこの地で暮らして……そのうえで、許可がおりたらタンガと一緒に暮らしたい。妻とも、そう話しているんだ」
「それは素敵ですね!」
家族で再び暮らすという夢が叶うかどうかはわからない。
でも未来に希望があるということ自体はとても幸せなことだと思う。
そしてもう一度やり直したいと望む家族がいることもまた、幸せなのかもしれない。
「奥様の……ルイゼおばさんにも、元気でとお伝えください」
「ありがとう、ハンナも元気で」
これで完全にレンカという存在が失われた。
視線を感じて隣を向くと、心配そうな表情をにじませたアレク様と視線がぶつかる。
私は、心配いらないとばかりに微笑む。
たしかに私は家族を失った。
……でも今の私には別に大切な家族がいるもの、十分幸せだわ。
小さく笑う私とアレク様を満足そうに眺めてから、タイランは席を立った。
「お疲れのところ時間を割いていただき、ありがとうございました。これで我々は失礼いたします」
「では私も。次に会うときはハンナさんの結婚式ですね!」
「ちょっと、ルオ! あなたを結婚式に呼ぶなんて一言もいっていないわよ⁉︎」
「はは、まあいいじゃないですか! 呼んでもらえれば、聞かれたときに教えられますし。そのくらいは許してくださいますよね?」
誰にとはいわないけれど、いわないからこそわかってしまう。
別に隠すことでもない。
幸せであることが伝われば、それでいい。
「たぶん、聞かれないとは思うけれど」
「全く……あなた達はよく似ている」
二人そろっていじっぱりだ。
何かを思い出した様子で、ルオがふっと笑う。
訝しげな表情を浮かべた私に、ただ首を振るだけでタイランに続いて部屋を出て行った。
そのうしろには茶器を携えたテレジアさんが、そしてその背中をクライドさんが追いかける。
「……本当に空気の読める使用人達だな」
「え?」
気がつくと部屋にはアレク様と二人きりだった。
定位置になりつつある彼の膝の上に、いつのまにかするりと抱えられる。
そして目のまえには美しい青空があった。
何事かと口を開く余裕はなくて、ただ深く侵食するように口づけられる。
その合間に、アレク様は過去をたどるような言葉を選んで口にした。
「私はハンナをきれいだと言ったかな?」
「はい、聞きました」
「力に驕ることなく努力する姿を尊敬していると言ったことは?」
「あります」
「君の弱さも強気な態度も、その裏にある優しさも全部愛らしいと思っていることは?」
「ちゃんと聞いたことはありませんが、なんとなく気がついていますよ」
これはなんの前振りだろう?
降り注ぐような口づけに息も絶え絶え、ただ恥ずかしくて呼吸も止まりそうだ。
「奪われないように手を尽くすと言ったこともあったよね?」
「はい」
「それなら、これは覚えている? ……私という存在を刻みつけておきたい、と言ったことは?」
そういわれたことがあったと、冷静に思う自分がいた。
その一方で熱で浮かされたように、喜びに身を震わせる私もたしかに存在する。
「誰にも奪うことができないように、私のものになってくれないか?」
覗き込んだ天色に浮かぶのは、翼人の国では誰にも必要とされなかった私への執着。
彼と、彼以外の他人を隔てるものだ。
これを愛と呼ぶものなのか、愛を知らない私にはわからない。
けれどもしこの思いが愛へと成長していくのだとすれば、それを見守るのもまた楽しみだ。
アレク様は体を離して私の両手を掴んだ。
いつものように翻弄するものではなく、どこまでも真摯で、乞い願うような緊張感に満ちた手つき。
「王城で君は衆目に晒された。稀有な能力に美貌。邪な感情を抱いた誰かが、君を私から奪おうとするかもしれない」
「でも私は白精霊師としての誇りをかけてアレク様のそばにいることを選びます」
「武人として、精霊師としてなら受けて立つし負ける気はない。だけど正々堂々と君を奪いにくる人間ばかりとは限らないだろう? 傷ついた君を、もう見たくはないんだ」
こういう余裕のないときは金の獅子と呼ばれているような彼でも可愛らしく思えてしまう。
私は微笑み、彼の手を握り返した。
彼の傷ついた姿を見たくないのは、私も同じだ。
「ふつつか者ですが、よろしくお願いします。何事も節度と節制をもってお願いいたしますね」
言葉にすることは大事。
するとアレク様は艶やかな笑みを浮かべて私の頬に口づけるとそのまま横抱きにした。
隣室への扉を開いたあと、急に思い出した様子で口を開く。
「そういえば、結婚式は最短で三ヶ月後にあげることができるけど、どうする?」
「は? いくらなんでも短すぎないですか⁉︎」
「そんなことはないよ? だって準備期間は三年もあったのだから」
「三年、それって……え、婚約期間は?」
「これ以上必要?」
ハンナは呆然とした。
出会ったころから結婚を夢見ていたなんて、乙女ですか?
いやたしかに三年もあったら心残りなく準備はできるでしょうけど、それって本当に普通ですか?
「ちょっと待ってください、節度と節制はどこへいったのですか⁉︎」
「ああ、ドレスの選定と式場を飾る装飾品の準備は残しているよ? 君の得意分野だし、好みや意見もあるだろうしね。これこそ適材適所だ」
「ありがとうございます、って問題はそこではありません!」
「愛し子だし、古式に則って領内にあつらえた祭壇で太古の神々に神前で婚姻を報告、そのあとの人前式の会場はこの城の大広間にしようと思う。規模に合わせた料理と返礼品の手配は済んでいるし、招待状は日付さえ決まれば発送できる準備はすでにできているよ。招待客の誰もが君の美しい花嫁姿を見るためなら、いくらでも予定を開けてくださると言ってくれているし、ありがたい話だ。さて、ここまでで要望や問題点はあるかい?」
だから最短で三ヶ月後か!
微妙に期間があると思ったら、ドレスと式場の装飾が決まれば三ヶ月以内に完成できるということね!
そして要望や問題点を洗い出せば修正も余裕で間に合うと……。
いやもう、いっそ清々しいくらいの手際の良さだ。
そこでハンナはハッとした。
違うそうじゃない、これは彼だけでなく周囲が一丸となって外堀を埋めてきた結果ではないのか?
「誰に気兼ねすることなく君を妻と呼ぶことのできる日が早々にきそうで、うれしいよ」
「もしかして以前アレク様が後戻りはできないって言ったのは、まさか」
「ああ、よく覚えていたね。あのときはこうなったらいいなと思って、多方面にいろいろ手を回していたから」
キラキラとした微笑みが眩しい。
そうだよ、こういう人だった!
早まったかも、と思った次の瞬間には彼に溶かされていて……。
こうして翅を失った私は愛する人と共に歩むため、人として生きることを決めたのだ。
タイトルで、少しだけ、とか言いながら一話が長いと思った皆様の感覚は正しいです。
書いてる本人が思うくらいなので…ですが、タイトルは元から決めていたので軽く流していただけると幸いです。
今回で翼人達の未来が決まりました。ざまあはほんのりくらいなので、定番の末路ではありますが物足りない方もいるかもしれません。それに全力でぼかしていますが、大人の階段を登るようなシュチュエーションもありますので、賛否ありそうだと覚悟しています(お手柔らかにお願いします)。
途中で改修したりといろいろ波乱のあった本作もあともう少しで完結です。
最後までお楽しみいただけると嬉しいです。




