幕間 この扉が閉じるとき(後編)
扉の閉まる固い音が背後から響く。
祠の中はこんなにも広かったなんて思いもしなかったわ。
これも精霊術だろうか?
空間を拡張する術式なんて、今のハンナでは構造を思い描くことすらできない。
アレク様と二人、扉の前でひざをついた。
そして深く頭を下げる。
真っ黒な空間に火が灯った。
そして奥から迫るようにあふれ出る神のものと思わしき力。
本当に、降臨されたわ。
思わずアレク様の手を握り返した。
無言で握り返される手の温もりだけが、平静さを保つ支えのように思える。
『また会えたわね、私の愛おしい子。長居させるつもりはありません、人の子には負荷がかかりすぎるもの』
はっと気がついて身を固くする。
天から降り注ぐような優しい声には記憶があった。
私に青い空を示してくれた、軽やかな笑い声の持ち主。
『愛おしい我が娘、そして娘を守護する金の獅子よ。これから太古の神々による話し合いの結果を伝えます。持ち帰り、あなた達が必要と思う人の子らへと伝えなさい』
この祠の扉を閉じる。
厳かに告げられた言葉は、この扉を使い人間の住む領域へと顕現することはないという訣別でもあった。
『この扉を翼人達に守らせていたのは、時が満ちたときに天と地をつなぐため。それは翼人にとって果てしなく遠い未来の出来事でしたが、そこまで国が保たなかったということになります。ですから扉の役目を終え、ここに留める神の力をなかったことにするつもりです。祠の外観は残りますが、神のいない、ただの空洞となるでしょう。……さて、ここまでで質問はありますか?』
「祠そのものはいかがいたしましょう?」
『人の子の望むままに。残しても、打ちこわしてもかまいません』
「遠い未来、時が満ちたときには何が起きるのですか?」
『それは人の子が知る必要のないことです』
雲を掴むような話だ。
だが話はこれで終わりではなかった。
『翼人の翼は、ふさわしい方法で失われていくでしょう。我々は二度と人に翼を与えることはありません』
国がなくなったのだから、当然。
タンガによると翼人と人間とが結婚し生まれた子供には、翼はなかったという。
それと同様に、人と混じり血が薄まると翼は失われるということなのだろう。
必要な応答を二言、三言会話を交わしたところで、急に口調が親しげなものに変わる。
『たしかに伝えましたよ……じゃあ、これで助言はおしまいね」
「はい、承りました」
『それから私の愛おしい子、ひとつおつかいを頼まれてくれないかしら?』
「おつかい、ですか?」
優しい声は弾むように言葉を紡ぐ。
おつかいの内容はワムシャリア王国の建国記念で王にお祝いを届けつつ、神の威光を知らしめること。
王国でも身分に重きをおく風潮が年々強くなるため、能力の比重は身分によらないことを理解させたいのだとか。
とっておきという力を授けられる。
それにしても王を私に試させるなんて、無茶振りが過ぎるというものです。
いろんな意味で辺境伯領に生きて帰れたらいいな、切実にそう思う。
『それから、この方が二人に会いたいと言っているの」
隣に並ぶ、別の影が動いた。
存在には気がついていたのだけれど、とにかく穏便にすませたい相手でもあるのでハンナは気がつかないふりをしていたのだ。
「……うちの愛し子が世話になったな」
初対面でありながらジロリと睨まれる。
はい確定。
脳裏にタンガの顔が浮かぶ。
二人がかりでボコボコにしましたものね!
それに彼の体からあふれる力と同質だというのは、直接戦った者ならすぐにわかるもの。
ちらりとアレク様の様子をうかがえば、若干遠い目をしていた。
その気持ち、わかりますよ!
太古の神々のなかでも最高峰と名高く、力が強いとされる二柱が目の前に並んでいるのだ。
なぜ一度に……?
もう無理ですお腹いっぱいです。
『ちょっと、うちの子を怯えさせているじゃない! 何してくれるのよ!」
『軽くお礼参りだ』
『だから挨拶がわりに威嚇するのはやめなさいっ! 話が進まないじゃないのよ! あなただって今後のことを考えて、こうして姿を現したのでしょう?』
「……今後のことをですか?」
思わず疑問が口からポロッと出てしまったが、不敬は問われなかったらしい。
ジロリと睨まれたが、それだけだった。
代わりに柔く優しい声が降ってくる。
『ええ、今後生まれてくる精霊師のことよ』
要約するとこういうことだ。
白精霊師と黒精霊師は相反するもの、互いを牽制しつつ道を踏み外さないよう守護する関係にあるという。
タンガの暴走を私が止めたように、もし私が道を踏み外せばタンガがそれを矯正する、と。
だから黒精霊師の特性は術式の破棄なのね。
万能型である白精霊師が生み出した危険な術式を強制的に破棄できるから。
そのため白と黒は必ず同じ時代に存在すべきと神々によって定められているそうだ。
つまり黒精霊師がいない時代に白精霊師が生み出されることはない。
「ところが能力は高いのに、黒精霊師がとにかく疎まれやすいのよね」
悪意の有無に関わらず、精霊術式を破棄してしまう能力。
コントロールできるならともかく、さすがに生まれたばかりの赤子に手加減しろというのも難しい。
記録に残らないほど古い時代には、黒精霊師の資質を持つ者が何人も不幸な目にあってきたのだという。
神託を使ってまで黒精霊師が神の愛し子であると公言されているのは、これが原因でもあったのだとか。
愛し子であれば少なくとも命を奪われることはないからね。
それなのに、ここまでしても黒精霊師を巡る負の連鎖は終わらない。
『だから我々は黒精霊師となれる資質を持つ者を生み出すのをやめてしまったの』
「なんと……」
『白精霊師が稀であるのもここに理由があるわ。黒がいなければ、白を生み出すことは許されない』
「ではタンガがいたから、私は白精霊師となる資格を得たと?」
『いいえ、あなたの対となる子は別にいる』
神々が作った頃よりも翼人の国はずいぶんと大きくなった。
結界と加護、食糧となる小型の動物や農作物を育てる土壌を維持していくには、銀や青の含有量ではもう足りない。
これ以上蝶の翅を持つ者を増やせば、翼人の国に許した人数の許容範囲を超えてしまう。
そこでとうとう白の資質を持つ者を下ろすこととした……それがハンナだ。
「タンガのことは、別に目的があったの』
タンガの罰は実験でもあったのだという。
翼人は人でありながら背には翼という神からの恩恵を持つ。
後付けで能力を与えるに都合の良い翼という媒体を持っていた。
『実験の結果は大成功! タンガは黒精霊師となった。そして黒印という術式を編み出し、黒精霊師の存在意義を高めて生存率を上げてくれたわ。正直なところ、愚かだった翼人にしては期待以上の働きね』
罰、実験、期待以上の。
優しい声が残酷な言葉を吐き出し続ける。
それだけ失望と怒りは深いということだろうか。
『タンガのおかげで黒精霊師を送り込むための土壌は整いつつある。そろそろ我々としては実績が欲しいわ』
『何をお求めでしょうか?』
『愛し子を神の意志を反映させる依代として使わせてもらうわ。特に今の世界はバランスが微妙に偏っている。具体的には黒と白が欠けているせいで、精霊師の連鎖の頂点が失われたままなの』
愛し子がいれば、愛し子を通じて神の意志を具現化しやすい。
精霊師を神の意志に基づいて動かすこともできる。
でも不在だから、仕方なく神託という助言で人々を導いていた。
『でももう大丈夫ね、あなた達がいるから』
声には喜びが滲んでいた。
なんだか相当ハードルが高いような……内心でハンナは冷や汗をかいていた。
満足そうな優しい声のあとに、不機嫌そうな声がさらに続く。
『我の愛し子だって、がんばったのだ。その結果でもあるのだぞ?』
『ふふ、存外タンガが気に入ったのね! いいのではないかしら、彼の働き次第ではあなたがもっともっと愛し子の数を増やせるもの』
『……おまえたち、これから生まれるだろう我の愛し子達を頼んだぞ』
「承知しました」
アレク様と二人で、首を垂れる。
すると突然、不機嫌そうな声の持ち主はギロリとこちらを睨んだ。
『それにしてもずいぶんと容赦なく我が愛し子を叩きのめしてくれたな。いいか、一度は許すが次は許さん』
『なに寝ぼけたことを言ってるの、黒が暴走したときは白が止めるのよ! 次もあるに決まってるでしょう! うちの子に無駄な精神疲労を与えるなら私こそ容赦しないわよ!』
『さすがにアレは容赦なさすぎだろう! いくらなんでもかわいそうではないか!』
『それを言われるうちの子がかわいそうだわ!』
アレク様と顔を見合わせる。
フタを開けてみれば、お二人共にすがすがしいほどの親バカだった。
そして親バカが暴走すると、たいていの場合こうなる。
『うちの子が一番かわいいに決まってるでしょう!』
『……うちの子が断然かわいいに決まっている!』
神力がぶつかり合い、炸裂する。
うわ空間歪んでるよ、さすが親バカでも神様。
祠、大丈夫だろうか?
外側からの衝撃には耐えられよう保護をかけているが、内側から破壊される未来は想定していない。
アレク様は完全に頭を抱えている。
いいですか、他人事にせずちゃんと学んでくださいよ?
戦闘狂モードに突入しているアレク様に割って入る部下の悲壮な気持ちを察して、今後は控えてくださいね?
とっとと帰りたいし、仕方ないので私が止めることにした。
「ご助言と情報提供をありがとうございます。最後にひとつだけいいですか?」
ぴたりと二柱の神が停止する。
相反する属性であっても呼吸は合っているようだし、たぶん仲はいいのだろう。
私は顔を上げて瞳を閉じると、優しい声のするほうへと体を向けた。
「お祝いのお花をありがとうございます。いただいた花の数に負けないくらい幸せを積み上げて、幸せになりますね!」
小さな贈り物のお礼だけは必ず言おうと思っていた。
見たことのない春の花に、ハンナだけでなく領民たちの心も癒されたのだ。
『ふふ、気に入ってくれてよかったわ! その言葉どおり、幸せになるのよ?』
「はい!」
『……それから、そこのおまえ。今回は許してやるけれど次はないわ。この子が死に至るような怪我をさせたら承知しないからね!」
「肝に銘じます」
アレク様が胸に手を当てて首を垂れた。
最後の台詞が一番怖いけれど、二人でいれば大丈夫。
彼と繋いだ手の温もりが、そう伝えてくる。
『では帰りなさい。もう会うことはないだろうけれど、元気でね!』
『……いいか、貢物以外の理由で二度とくるな!』
『その言い方! はあ、もういいわ。……さ、あなたも帰りますよ?』
優しい声が導くように手を差し出すと、いつの間にか手のひらには見覚えのある白い玉が浮かび上がっていた。
淡い黄色にも見える、蝶の卵のようなもの。
タンガの羽を包んだ結界がパリッとかすかに音をたてて割れた。
え、せっかく祝福したのに割っちゃっていいの⁉︎
固まった私の眼前で卵の殻は少しずつ内側から割られていく。
まるで内側にいる何かが卵の殻を食べているみたい。
少しずつ殻は姿を消し、やがて何もなくなった空間から突然黒い羽を持った蝶が飛び出したのだ。
その蝶は、鴉のように黒く美しい翅を持つ。
優しい声に導かれるように蝶は闇の奥にある光さすほうへ、ひらりと舞い上がった。
あの先にあるのが、おそらく天上世界。
罪の証は、こんなふうに浄化されて天へと還っていくのか。
蝶は鱗粉をまきながら、楽しそうにふわりふわりと風に乗る。
かつての自分の姿と重なって、胸が締め付けられるように痛んだ。
大嫌いだった蝶の翅。
背に生えたそれを憎んで恨み続けて、それなのに。
「蝶の翅は、とても美しいな」
「はい……」
久方ぶりに見る翅はどうして、どうしてこんなにも美しいのだろうか?
心中を察したように、哀愁を含んだ柔らかい声が響く。
『だって私が一番好きなものだからよ。私は大好きなあなた達を自分の好きなもので飾りたかっただけなの』
はじまりは、愛だったのだ。
歪められてしまったけれど、でもそこにはたしかに愛はあった。
だからずっと、失った過去を忘れられない。
視界が涙でにじむ。
ごめんなさい、私こそあなた達を憎んでしまって。
悪いのは翅ではなく、歪んでしまった翼人の価値観だというのに。
余裕のなかった私は何もかもを一緒くたにして恨んでしまった。
『翅のせいで、あなた達が不幸になるなんて思いもしなかったのよ。だから私の愛する蝶の翅を持つ子達に伝えて。たくさん幸せになってねって!』
……これからは春の訪れごとに、あなた達へ祝福を贈るわ。
軽やかな笑い声とともに、声が遠くなっていく。
屋内を照らす火が消えた途端、はじまりと同じように軋む音を立てて背面の扉が開いた。
いつもと変わらぬ風の匂いと共に、陽の光が差し込む。
アレク様が日差しに目を細めながら手を引き私を抱き寄せた。
安堵したように深く息を吐いた彼の吐息が首筋にかかる。
「よかったね、こちら側へ帰って来られたみたいだ」
「ふふ、緊張しましたね!」
「何よりも君を失わずにすんだ。それが一番の収穫だよ」
「大袈裟ですね、さらうような意図はなかったと思いますよ?」
「どうかな? 私が君の伴侶にふさわしくないと判断されたら、たぶんそうなっていただろう』
神とは恐ろしいな。
そう呟いてアレク様が私の瞳の奥を覗き込んだ。
「この星を失ってしまったら、私は道に迷ってしまうよ」
「嘘よ、だって私のことをいつも迷わず見つけてくれるじゃない」
「それは相手が君だからだよ、わかっているくせに」
うれしそうに微笑んでアレク様が唇を寄せた。
そっと目を閉じて、温もりを待つ。
「いや〜〜! 仲良きことは幸い多し、ですね!」
能天気な声が響いてアレク様と固まった。
二人顔を見合わせて、声のする方向の状況を把握した私は頬を赤らめる。
扉が開いたことで外から丸見えなわけね、失敗したわ。
咳払いで誤魔化したあと、アレク様のエスコートでニヨニヨしている人々のまえで扉をくぐった。
足を一歩踏み出したところで、二人は固まる。
「……ねえ、ルオ。なんで縄で縛られているの? って、ご領主様⁉︎」
「これは……もしや新たな趣味にでも目覚めましたか、父上?」
縛られているルオの縄の先に、縛られたご領主様が繋がっている。
いかつい顔の凶悪度がさらに増していて、ふるふると震えながら今にも暴れ出しそうだった。
「こんの……バカ息子が! たった一人しかいない跡取りのくせに、あとはよろしくとか言い置いていなくなるやつがどこにいる!」
「それはここに」
「アレク様っ、積極的に火に油! 言い方、言い方大事ですよ!」
鬼の形相をしたご領主様に詰め寄られながら、アレク様は笑顔で軽やかに受け流す。
きっと心配してくれたのだから、そう言い返すのもどうかと……。
「……ハンナさん?」
「全く止めませんでした! 申し訳ありません、奥様!」
ガバリと平伏する。
すごいな、私もとうとう脊髄で謝罪する相手がわかるようになったよ。
平伏する私の隣でルオがこの状況を説明してくれた。
「私が縛られているのは、いざとなったときに逃げ出さないようにという拘束的な意味合いなのですが、お二人がここにいる理由は別にあるのですよ」
「別ですか?」
「命を捧げてでも若い二人を取り戻そうとなさったからなのです」
アレク様の表情が変わり、私もハッと胸を突かれる。
場に沈黙が落ちた。
「父上、母上も……配慮が足りずに申し訳ありませんでした」
「申し訳ありません」
謝罪の姿勢をとるアレク様の表情が歪む。
当然のように私も並んで頭を下げた。
お二人は深く息を吐いて、表情をゆるめた。
「二人共、こういうことはこれきりにしておくれよ? 心臓に悪い」
「ハンナさんもよ? アレクの身を心配してくれるのはうれしいけれど、自分自身も大切にしてね? あなたの身代わりなんて誰でも務まるものではないのだから」
「え、あ、あの奥様。もしかして奥様は私の代わりにと?」
「ええそうよ。それ以外にどんな理由があるというのよ?」
きょとんとした表情で、当たり前のことのような顔で奥様は首をかしげた。
だって私は本当の娘ではないのに。
「稀なる白精霊師で、アレクの大切な人で、私のかわいい義理の娘になる人よ。理由ならそれで十分でしょう?」
「!」
「辺境伯領で領主夫人になる人間には、こういう覚悟も必要と覚えておきなさい」
厳しいけれど、期待されているともとれる言葉。
なぜ私には血の繋がりのない人のほうが優しいのだろう。
堪えきれずに涙をこぼした私の頭をアレク様がなでながら、父親である領主様に視線を移した。
「で、そろそろなんで縛られているのか聞いてもいい?」
それについては本人が黙秘するので、代わりにクライドさんが緊張をにじませながら口を開いた。
「実は先ほどから祠に特攻をかけようとするので、奥様が邪魔だから縛って転がしておくようにと」
「……そうか、母上の指示なら仕方ないね」
アレク様が微妙な表情を浮かべて天を仰いだ。
そして関係が浅いはずの私にも力関係がハッキリとわかってしまった。
ボソリとアレク様が『できればハンナはそのままでいて』というけれど、未来のお義母様がかっこいい。
そして未来のお義父様は縛られたまま、真面目な表情でアレク様に尋ねた。
「それで、祠の中には誰がいた?」
「豊穣と慈愛の神と、破壊と暴虐の神が揃っていました」
「なんと! ……ご無事でホントよかった。さすがに我々でもどうにかなりませんでしたよ」
「ちょっと、ルオ! あなたどうにかするってかっこよく言ってたじゃないの!」
「いやいや、さすがに無理ですよ! 最高峰の二柱を人身でどうにかできるわけないじゃないですか!」
ルオが縛られたまま遠い目をしている。
この人、ホントいい加減なんだから!
反省させるために、しばらくは縛られたままで放置してやろうと心に決めた。
そして私達の背後に、縄から解放されたご領主様がぬっと顔を出した。
「で、ハンナは何を言われた?」
「えっと、いろいろ言われました」
「喧嘩は売られなかったか、ん?」
どこまでも優しい眼差しと声音。
ふと気が抜けて、思わずスルッと言葉が出た。
『軽くお礼参りだ』
領主様がカッと目を見開く。
アレ?
「……皆、武器を持て」
「おう!」
「は、はい?」
「かわいくない息子とかわいい嫁をさらった恨み……殴り込みだーーーー!」
うおーーーー!
野郎どもの掛け声が響いた。
アレク様があわててご領主様の体を止めている。
そして奥様、そのか弱い細腕が握りしめた拳はなんですか?
「ハンナ! 君は状況的に言っていいことかどうかの判断をつけろ!」
「わわわわ!」
いやだって相手は神ですよ!
誰が積極的に手を出すなんて思いますか⁉︎
「平和でいいですね!」
「ルオ、この場所を選んだのはあなたでしょう! 責任持ちなさいな!」
「はは、縛られているから手も足も出ません!」
「ああもう! ああああああ、奥様それはさすがにっ可哀想……!」
すると危機を察したのか私の背後で空気が動いた。
……キイ、パタン。
「あ」
扉が閉まった。
当然、押しても引いても開かない。
無理やりこじ開けたとしても、もぬけのカラだろう。
扉は二度と開くことはなかった。
いかがでしたでしょうか?
もう少し続きます。引き続きお楽しみいただけると嬉しいです。




