さて始まるみたいだね
ハンナは馬車の窓から外を眺めていた。
前回この道を通ったのが、ずいぶんと昔のように思える。
辺境伯領と王都を繋ぐこの道は、以前通ったときよりも整備されて人々の往来が着実に増えていた。
ハンナの白精霊師としての力で少しずつ辺境伯領は小麦以外も育つ実り豊かな土地へと姿を変えており、それに伴い他領の住人が新たな可能性を求めて辺境伯領を目指すようになったのだという。
この豊かさが当然のものだと思わないようにしないといけないよね。
翼人の国の衰退は、恵みを当たり前のものと思い上がったことから始まったのだ。
隣に座るアレク様が、そっとハンナの髪をなでる。
『私にとって、ハンナは美しく輝く明けの星だ。いかなるときも鮮烈で、だからこそ見失うことはない』
そんな彼の言葉が脳裏に浮かんで頬を染める。
愛を隠さなくなった彼は、タガがはずれたように人前でも甘い言葉を囁いた。
恥ずかしいこと、この上ないのよね。
実家の母の前でそれをやられるけれど母がそれはもう喜ぶから父も苦笑いを浮かべるだけで止めてもくれない。
しかもご領主様としては私の覚悟が決まるまで様子見をする予定だったのに、誰彼かまわずアレク様が外堀を埋めまくるから早めに認めざるを得ないと頭を抱えている。
二人揃って面会した日なんか、強面に涙をうっすら浮かべて『すまない、ちょっともう止められないかも』と遠い目をしておっしゃられていた。
『いろいろお察しします』と答える以外に気の利いた返しはあるだろうか?
奥様のほうは、すでに受け入れ体制は完璧だそうで、少しずつ領主夫人としての仕事を教えてくれるとおっしゃってくださった。
そして、その背後には最強の侍女長と侍女軍団がキラキラした眼差しで控えている。
美容液の威力は絶大だ、憎きシミが薄くなるにつれて援護が手厚くなっていく。
そして奥様からは『アレクのそういうところは私に似たみたいなの、許してあげて』と無邪気な笑顔で言われた。
もはやこの期に及んでは、どうあがいても無駄なのでしょうね。
ダメ押しとばかりに、焦がれるような表情を浮かべたアレク様が囁いた。
「ハンナ以外を妻とは呼びたくない、だからお願いだ」
「…………わかりました、今後は何事もほどほどにお願いしますね」
この顔に弱いとわかっていて、わざとやっているのだろうな。
悔しいけれど、心はすでに決まっている。
そう、決まっているけれども……!
お付き合いするうえで程よい距離を保つことと、やり過ぎないようにだけは釘を刺しておきたい。
こうして紆余曲折の末にアレク様と婚約が整った。
高位貴族の婚約は王による許可が必要だそうで、許可書は王女殿下とのあれこれを持ち出したアレク様が最速で決裁させた……いえ、決裁いただいたそうです。
連絡係の文官の皆様が連絡用の呪具のまえで真っ白に燃え尽きているだろう姿が目に浮かびます。
ちゃんと届くかわからないが、ハンナは風を祝福して疲労回復の効果を付与しておいた。
そして今、私とアレク様は王都へ向かっている。
三年に一度行われるワムシャリア王国建国記念の式典に参加するためだ。
これは辺境伯領として出席しなくてはならない数少ない式典の一つ。
国境の守りがあるため、最近はアレク様かご領主様のどちらかが交代で出席されていたが、今回は私を婚約者として披露するためアレク様が出席することになった。
準備は万端、できる限りのことはしてきたが緊張しないわけではない。
「今から緊張していたら身がもたないよ?」
「わかります?」
「挙動不審だし、顔色があまりよくないね」
アレク様の伸ばした手が頬に触れる。
触れ方が優しくて、甘えるように少しだけ目をとじる。
「休憩が必要かい?」
「いいえ、ですがご配慮いただきありがとうございます」
「……ハンナ、その話し方」
「っと、ごめんなさい」
二人きりのときは敬語を使うのをやめてと言われていたっけ。
短い期間でも習慣になったものは、なかなか抜けないらしい。
するとアレク様が面白くなさそうな表情で、ふいと顔を横に向けた。
「タンガと話すときは普通なのに……」
「えっ、ですが……っだからそれは幼なじみだからで」
するとアレク様がニヤリと笑う。
あれ、これって危険な流れでは?
我にかえるとハンナは彼の膝の上にいた。
それはもう飼い猫並みに、するっと膝に抱えられていたのだ。
「はっ、いつのまに!」
「気を抜いているからだよ。こんな簡単に捕まるようじゃ、膝に乗せてとねだっているようなものだ」
おねだりしてないし!
真っ赤な顔をしたハンナの耳元で、とろけるように甘い声が物騒な言葉を囁く。
そしてアレク様は膝に乗せたハンナの首筋に優しく口づけを落とした。
ちらりとのぞいた舌先が首筋に触れる。
「……!」
「ちゃんと身に染みて反省してる? 今度敬語を使ったら、その無防備な唇を塞ぐからね」
「ええっ!」
「ああ、そのためにわざと使うというのなら大歓迎だよ?」
獅子のような鋭い眼光がゆるんで、ふわりと幸せそうに笑う。
ねえ、本当にほどほどの意味ってわかっている⁉︎
ガッチリと膝のうえに縫い止められて、もはや私には逃げる隙などないというのに……。
もしや、このまま頭から喰われてしまうのではないかしら?
うろたえるハンナの様子が面白かったようで、アレク様が吹き出すように小さな笑い声を立てた。
「どう緊張は解けた?」
緊張なんてとうに解けたわ、解けたけれど!
別の意味で、もたないような気がしてきた。
アレク様との新しい関係は、ほどほどというのがどの程度かを理解させることからはじめようと心に決めたのだった。
ーーーーーー
そしていよいよ建国記念式典当日。
「おねえしゃまあ〜、いってらっしゃい!」
愛らしいマイラの声に送り出されて王城へと向かう。
マイラの隣にはネイサンがいて、さらにその隣にはマイラとネイサンの義両親も並んで頭を下げている。
辺境伯領から王都へ向かう一行には、マイラ達も同行していた。
そしてこのまま家族揃って領館に住むことが決まっている。
居住区に住む雀の羽を持つ者達の中にマイラの元家族がいることがわかり、マイラを彼らからどう引き離すか決めかねていたところ、なんと元両親が居住区を抜け出して突撃してきたのだ。
捨てた娘に価値があることがわかり、元両親はあわよくば娘を取り戻して甘い汁を吸おうと画策したのだろうが、現実はそんなに甘くなかった。
監視の目をかいくぐり、木の影からいきなり飛び出して誰も知らなかったマイラの翼人としての名前を呼び、劇的に縋りついたところまでは元両親の思惑どおりだっただろう。
だが抱きつかれたマイラは不思議そうな顔で首をかしげた。
『だれ?』
元両親はそのまま固まった。
『なまえもちがうよ、あたしはマイラ』
『……』
『そんななまえのこ、しらないわ』
翼人にありがちなのだが、必要最低限のときにしか蝶の翅を持つ者の名前を呼ばない。
その代わりに、役立たずとかアレとか呼ぶのよ。
マイラの両親もどうやらそうだったらしい。
そのせいでマイラの記憶から自分の記憶と共に名前も消え去っていたのね。
ようやく再起動した二人は自分達が本当の父と母であると告げ、迎えにきたと言ったのだそうだが、ネイサンに呼ばれて駆けつけた義両親を見たマイラは彼らの腕をするっと抜け出し、弾けるような笑顔で言ったそうだ。
『あたしのおとうしゃんとおかあしゃんは、あしょこにいるの!』
ハンナはその場にいなかったことをたいそう悔やんだ。
もちろんマイラの元両親の突撃を防げなかったという後悔もある。
それよりも無邪気という鎧で欲深き翼人を退けた、小さな勇者の初陣を見逃したことが悔しい!
単純に幼すぎて本当の両親の記憶が残っていなかっただけということもありえるが、三歳児にしてすでに真実を見抜く目を備えているとも思える。
……さすが含有量が金を示す者だけあるわね。
そう、体内に満ちる力を計測した結果、マイラは金精霊師になれる資質を示した。
隣国と国境を接する辺境伯領で喉から手が出るほど欲しい人材がマイラだったのだ。
測定値が金を示したときのアレク様の安堵したような顔は今でも忘れられない。
「やはり最後に選ぶのは育ての親なのね」
「マイラのこと?」
「そう。義両親もネイサンも、マイラのためならとあっさり王都に移住することを決めた。彼らはもうとっくに本当の家族になっていたのね」
家族と他人を区別する、その差が愛なのだろう。
複雑な事情を抱えていると気付きながら、娘にと申し出てくれたハンナの義両親と同じだ。
翼人の国で過ごした十七年よりも、この国で過ごした三年のほうがハンナには濃厚で色鮮やかに見える。
厳しい環境でも楽しいほうが記憶に残りやすいもの!
そして四年目が終わろうという今、愛情の塊のような人が隣に座っているのだから、人生はどう転がるかわからないものだ。
「幸せ者ね、私は」
「これからもそう言ってもらえるように努力するよ」
「ふふ、よろしくお願いします!」
アレク様は真剣な表情をして真摯な眼差しを私に注ぐ。
ハンナは微笑んだ。
誰よりも強くて苛烈な顔の裏で、私の知るアレク様はこんなにも優しい。
だからこそ私ももっと強く優しくなろうと努力できるのだ。
与えた愛情に量に比例して愛は返されるもの、マイラの両親は与えなかったのだから返されずとも当然。
騒動を起こしたあと、捕獲された彼らは激怒したアレク様により住居を追い出され、ルオによって領館からかなり離れた場所にある別の居住地へと転居させられたと聞いている。
言いつけを破ったにしては甘い処置と思われそうだが、あれでも翼人の子の親。
マイラには兄が二人がいるから、彼らに配慮したのだろう。
私としては、彼らが二度とマイラの前に姿を現すことがなければそれでいい。
話しているうちに時間が過ぎて、窓の外を見たアレク様が眼光鋭く視界に入ったものを見据える。
「さて、そろそろ王城につく」
「あれが王城……膨大な量の体内に満ちる力があふれている。さすが精霊師にとっての聖地と呼ばれる場所ね」
「そうだね、精霊術による守護と恩恵をあまねく享受する場所だ」
アレク様がハンナに射抜くような視線を向ける。
彼の澄み切った瞳の色に、澱みや不安は欠片もない。
「覚悟はできている?」
「はい、もちろん」
「誰がなんと言おうが、君は辺境伯領所属白精霊師ハンナだ。辺境伯領と私の矜持にかけて、揺らぐことも、私以外の誰かにおもねることも許さない」
「承知しております」
決然としたアレク様の目は強大な敵に挑むときのものだ。
そしてハンナが憧れて、手に入れたかったもの。
ようやく手に入れた眼差しを、決して曇らせはしない。
「王家は愚鈍ではなく、そして誰にでも寛容というわけでもない。剣を捧げる相手として不満があるわけではないが、彼らから見て理と利があるほうにつくだろう。辺境伯領として打てる手は尽くしたが絶対ではない。隣国に対するのと同様、隙を見せたら喰われる」
「ご教示、感謝いたします」
「王家は君の白精霊師としての価値を知っていて、隙あらば私から奪おうと狙っている。王家にとって私を切り捨ててでも手に入れたい、君はそれだけの価値がある。裏を返せば、その価値が君にとって最大の武器だ。私も手を貸すし、存分に使うといい」
「ご期待に添えるよう、手を尽くすことをお約束します」
口調を白精霊師のものに変えてハンナは首を垂れる。
これからのことを考えると、ここから先は敵地と同じ。
経験も知識も上のアレク様に付き従うほうが理にかなっている。
婚約者であると認知されるまでは、辺境伯領主代行と白精霊師として振る舞おう。
アレク様と事前に打ち合わせて役割分担も決めておいた。
そしていよいよ馬車が敷地内へ入る。
停車場に馬車を停め、アレク様のエスコートを受けながら降り立って白いローブを翻す。
私のローブの色が白であることに気がついた人々の波がざわりと揺れた。
このローブは精霊師の正装。
ローブの下に着ているドレスもアレク様の指示で新調した。
ドレスや小物はアレク様の瞳の色である青、髪はアップにして装飾品は定番になりつつある金の地金にアクアマリンの石を添えたものを選んだ。
「今日のハンナは朝露に濡れる花の妖精だね、とてもきれいだ」
「ありがとうございます。アレク様も一段と凛々しくて素敵です」
「そのうえ健気で愛らしい。輝く一粒の宝石みたいな君を人に見せるのはなかなか勇気がいるね。私の隣にいて、決して離れないように」
彼は微笑んで、引き寄せる私の指先に軽く口付けた。
王子様で、しかも甘々だ。
女性達の声にならない悲鳴が聞こえた気がする。
今日のアレク様は黒に近い濃紺の正装に同じ色合いのローブをまとっていた。
ローブの留め金はアレク様の希望で金の星の意匠を、縁取りも金糸にして金精霊師であることを示している。
光の当たり具合により、背に辺境伯家の紋章が浮かび上がるという独特の織りをした生地は私のお手製だ。
織り込んだ術式は定番である守護、それに修復と清浄、その他に術式をいくつか追加して魔改造しておいた。
これで死角はあるまい。
二人揃ったところで受付をおこない、城の使用人から銀の腕輪を渡されて彼らの目の前で装着する。
キンというわずかな音が響いて術式が展開した。
この腕輪を装着した状態で精霊術を使用すると記録が残る。
不正使用の防止と、貴人の身の安全を確保するための措置なのだそうだ。
会場に入るのは爵位順だそうで順番待ちの列に並び、いよいよ入場する。
「ブンデンベルク辺境伯家当主代行アレク=ブンデンベルク様、辺境伯領所属白精霊師ハンナ様!」
呼び声に応じて、深く礼の姿勢をとった。
一斉にさまざまな種類の視線が突き刺さる。
顔をあげて微笑みを浮かべると、まっすぐ前を向いてただ歩みを進めた。
背中に翅があったときのことを想像すれば手足の先が軽やかに動く。
一瞬だけ横をむくと、アレク様と視線が交わった。
……そうその調子、上出来だ。
彼の心の声が聞こえてくるかのような眼差しに微笑みを返す。
するとなぜか、ざわりと場の空気が揺れた。
赤い絨毯を踏み締めて王家の方々のまえまでたどり着くと、首を垂れてひざまづく。
「遠路はるばるよくぞ参った」
「ワムシャリア王国国王陛下にご挨拶申し上げます。ブンデンベルク辺境伯家当主代行アレク=ブンデンベルク、本日は栄えある建国記念の式典にお招きいただき、心より感謝申し上げます」
「先日あった隣国との諍いをおさめた手腕、見事であった。それでそなたの隣に並ぶのが荒れ狂う黒精霊師を鎮めたと評判の白精霊師か?」
「さようでございます。辺境伯領所属白精霊師であり、私の婚約者でもあります」
「直答を許そう、名はなんと申す?」
「ワムシャリア王国国王陛下にご挨拶申し上げます。ブンデンベルク辺境伯領所属白精霊師ハンナと申します」
「ほう、家名がないというのは本当なのだな」
「はい、平民にございますゆえ」
アレク様の婚約者、しかも平民という言葉に人々がざわめく。
胸元に片手を添えてさらに深く首を垂れた。
身分の差と礼儀を重んじるこの国では平民が公の場で王族に顔をさらすのは失礼にあたる。
最大級の敬意をはらうという私の意思表示だ。
値踏みするように突き刺さる視線。
それを顔に出さないようハンナは必死に受け流した。
「ふむ、それだけ深くうつむいていては顔がよく見えぬな。許すゆえに、面を上げよ」
そっと横目でアレク様を見ると軽く顎を引いた。
どうやら良いという合図らしい。
顔を上げ、王家の方々と視線が合うと彼らは息を飲んだように黙り込んだ。
「噂には聞いておったが、たしかに美しい。辺境伯領のしかも平民階級の出身と聞いているが間違いはないのか?」
「はい。領地には未開拓や開拓途中の土地がいくつかあり、彼女とはそういった場所のひとつで出会いました」
「なるほど、開拓途中の土地か」
このやりとりのどこに地雷が隠されているのか、私には見当もつかない。
邪魔にならぬよう、再び視線を下げて固く口を閉じる。
その後は表面上和やかに会話は弾み、最後はアレク様に促されて御前を辞した。
「おつかれさま、第一関門はくぐり抜けたね」
人々の視線を避けて十分に距離を取ったところでアレク様が耳元で囁いた。
思わずほっと息を吐く。
そしてようやく筆頭公爵家による挨拶が終わった。
酒の満たされたグラスが配られて王が杯を掲げた。
この祝杯を打ち鳴らせばようやく、建国記念の式典が始まるのだ。
満を持して王が高らかに開会を宣言しようとした、そのとき。
「お待ちください!」
誰かが叫び声をあげて、進行を妨げたのだ。
流れと違う展開に、ざわめく貴族達。
そして王家の人間は誰もが不愉快そうに眉をひそめた。
王の言葉をさえぎるなどこの上もなく無礼なこと、近衛が動き出して声の主を捕らえようと駆け寄る。
すると声の主を守るようにして、明らかに貴族と思われる男性が立ちはだかった。
若く見目麗しい男性は胸の前で手を交差させ、深々と頭を下げて恭順の姿勢をとったのだ。
「賢明で公正なる偉大な王よ、どうか無垢なる少女の声をお聞き届けください! 彼女の話を聞いていただければ、このような礼を失した行為をとらざるを得なかったことに、ご納得していただけるでしょう」
どのような理由があろうと、礼を失したのはたしか。
それでも捕らえようとした近衛を王が手の仕草でとどまらせる。
「ほう、理由があるか。ならば一応、聞いておこうか」
「ありがとうございます! 彼女がいうには、この場に栄誉ある式典にはふさわしくないものが紛れ込んでいるということなのです!」
一瞬静まり返った場が、何倍にもなって喧騒を取り戻す。
全員が王城から招待状を受け取るような身分の明らかな者ばかり。
不審者が紛れ込むような余地はないはずなのに。
警備の不備をとがめられたと思ったのか、近衛と思われる兵士の一人が声をあげる。
「では、どこにいるというのだ!」
真剣な表情でうなずいた若い男は、背後にかばった少女の背に優しく手を添える。
前に歩み出た少女は勇気を振り絞ったような仕草をして、ぐるりと会場を見渡した。
一見すると、無垢で愛らしく庇護欲をそそる容姿をした少女は必死に誰かを探していた。
「さて始まるみたいだね」
「そのようです」
ハンナは口角をあげた。
邪魔が何ひとつ入らないということは、いつかどこかで私達はこうなる運命だったということ。
無垢なる少女の視線が、ハンナをとらえた。
「あの女です!」
彼女の指先には、当然のようにハンナの姿がある。
先ほどとは違う意味で、人々がざわりと揺れた。
さあ、始まるわ。
若い男が少女の代わりにハンナを睨みつける。
「偉大なる王よ、この会場には恥ずかしげもなく罪人が紛れ込んでいるのです!」
お楽しみいただけると嬉しいです




