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поездка:長旅

【ソビエト連邦 モスクワ ヤロスラフスキー駅】

 

 朝、ニーナとポーリナ大尉は不思議な形をしたヤロスラフスキー駅にいた、

二人とも徹夜で、夜通しお話ししていたようには思えないほど目は()えていた、ニーナもポーリナも、それぞれこれから始まる新しい人生に、心から向き合う準備が整っていた、ニーナはポーリナに司令部の自分の部屋の鍵を渡した。


「…ポーリナ大尉、これからよろしく頼むわね。」


「はい、ニーナ大尉も、必ず戻ってきてください!」


「ふふふ、お互いに"大尉"って呼ぶのも、なんか変ね、」


「そうですね」


「それじゃ、いってきます。」


「行ってらっしゃい。」


別れを済ますと、ニーナは緑色の四角い、赤い星のついたシベリア鉄道に乗り込んだ、これから1週間ちょっとの長い旅になる。

だがニーナの目はこれまでのニーナの目と違った、やる気と、決意に満ちた強い目だった。


ニーナはまず、寝台車両の個室に向かった、嬉しいことに1等車、しかも相席がいなかった。シベリア鉄道の寝台車は大きく3つある、

2人用個室の1等車、4人用個室2等車、そして解放寝台車の3等車、

ニーナは左遷の身ということもあり、3等車を覚悟していたが、一応大尉、女の子ということで1等車の貸し切りだった。


ニーナはスーツケースをベッドの下に置き、ベッドに座った、

幅は50cmほどだろうか…寝台車としては普通のサイズだが…普段寝ていたベッドに比べると…悲しい。

だが、大きな窓もあり、防音性もある扉、壁に少し安心した。


〔プォォン! ガトンっ! ギギギギギッキーーーーッ〕


ものすごい音と共に、ゆっくりと、列車が動き出した。


「ハァ…始まるのね…」


ーーーーー【2日後】ーー


「うぁぁぁぁぁぁ、寂しいよぉぉぉぉぉベッド2つの場所に1人ボッチ、食事の時も1人…ポーリナぁぁぁぁぁ、ポーリナに会いたいよぉぉぉぁぁぁ、何日たったんだろう、時間の感覚がぁぁぁ」


まだ2日、これから少なくとも1週間は乗っていないといけない、


ーーーー【4日後】ーー

「…あ…あぁ…うっ、うっ、」


涙が枯れた。


ーーーー【1週間後】ーー

「…」


やっと一週間、ニーナはカーテンすらも閉じたまま、何もしなくなった。


ーーーー【10日後】ーー

「あーあーあーあー」


ニーナは精神が一周回って宇宙と交信し始めた。


ーーーー【12日目】ーー

「次の停車駅は、クラスノヤルスク~」


「はっ!!」


ニーナは我に帰った。


~~~~


「ーーーーッフアァァァァ、生き返ったぁ~」


列車から降りると、とても立派な駅だった、それからクラスノヤルスク国立工科大学(シベリア連邦大学)へ向かった、


「…ここがこれから数ヵ月住むことになる家…まあ、でかくて悪くはないじゃない。」


「…お前は、フルシチョワか?」


「!?」


建物の影から氷のような冷たい声がした、

見ると薄汚れた白衣を着た女性が立っていた、声の割には若そうに見えるが…

第一印象は怖そうだ。


「誰?」


「…私はエリザベータ・キリール・エリツィーナ、ラスプーチン教授の助手だ。

お前を出迎え、研究室へ連れてくるよう言われた。」


「…そう…ありがとうエリザベータ、」


〔チャキーン!!〕

エリザベータはいきなりニーナの背後に回るとメスを3本、(ふところ)から取り出しニーナの首元に当てた、


「!!?」

、は、はやい、現役の軍人である私でも首を一瞬にしてとられた…


「お前、気安く名前で呼ぶな。」


「…お前も、私をお前と呼ぶな。」


ニーナも負けじとエリザベータの腕をつかみ、力尽(ちからず)くで首から放した。エリザベータも、現役の軍人に腕力ではかなわないらしい。


「…フン、ついてこい、フルシチョワ」


「…」


〔ギィィィィッ〕


「入れ。」


「…」


ニーナは目を凝らした、扉を開けるとすぐ、10段ほど下向きの階段があり、

その先には薄暗く広い部屋が広がっていた、床や高い天井には大小様々なパイプが張り巡らされている、部屋の奥は見えず、ザ、マッドサイエンティストの研究室、みたいなヤバい色に発光するカプセルやら変な機械やら、足の踏み場はなくとてもゴチャゴチャしていた。


「…」


〔ドン〕

(エリザベータはわざとらしくニーナの肩にぶつかり階段を降りていった)


「ちょっ」


「教授、フルシチョワを連れてきました。おい、お前もはやく来い!」


「…」


…なにここ、薄暗くて危ないわね、足の踏み場もないじゃない…

それに「教授」とやらはどこにいるの?一寸先も見えないわ…


そう思った瞬間、暗闇からヌゥっと、これまた薄汚れ端っこの方は破れかかった白衣を着た老人が現れた。


「おぉ、これはこれは、君がアンナだね?…いや、アリスだったか、失礼、

いやはいやモスクワから、よくまあこんな遠い所にいらした!」


「…??」


「彼女は"ニーナ"です教授。」


「あ~あ、そうだったかそうだったか、ニーナ…はっはっは!!、これは失礼、

ホッホッホ!それにしても、遅かったじゃないかアリス!、軍事司令部から電話がきたのはちょうど1週間前じゃぞ?どこでなにしとったんじゃ?」


「…いや、移動…」


「…教授、ニーナはモスクワからここまで鉄道で来たのです、遠いですので1週間はかかります、そして、彼女の名前は"ニーナ"です。」


「…ありがと…」


「…」


「そーうか、そーうか!!、1週間も鉄道に乗ってピアノを弾いていたんじゃな!それは大変じゃったっはっは!!、ま、それじゃ、こっちにおいで、まずはお茶でも!!」


そう言うと"教授"は暗闇に消えていった。


「…」


「大丈夫か、貴様、こんな調子ではここでやっていけないぞ。」


「…"お前"って言ったり"ニーナ"って言ったり"貴様"って言ったり…忙しいわね…」


「貴様が「"お前"って呼ぶな」っと言ったから"貴様"にしてやった、ありがたく思え、」


「…」


「とにかく、教授は何度でも名前を間違える、私がそのたびになおしてやってもいいが、それでは永遠に貴様の名前は覚えられないぞ、何でも、自分で、自分から行動しなきゃな、」


そう言うとエリザベータは床の機械の山をお構いなしに踏みつけながら暗闇へと消えていった。


「…自分から行動しなきゃ…」


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