第98話 手を取る者たち
無職の旗は、戦いが終わっても消えなかった。
むしろ形を変えて残り始めていた。
「王国に戻れない人、結構いるね」
玲奈が名簿を見ながら言う。
「戻りたくない人もね」
サニアが補足する。
禁術被害者。
王国に居場所を奪われた商人。
亜人差別から流れてきた者。
王都崩壊で家を失った者。
そういう人たちのために、アストラの外れに小さな共同区画が作られ始めていた。
「手を取る者たち、って感じだな」
俺が呟くと、美咲さんが頷いた。
「ええ。一人じゃ立てない人でも、誰かとなら歩ける」
俺も最初はそうだった。
追放された直後の俺は、銀貨十枚だけの一人ぼっちだった。
でもルナに会って、ガレスに拾われて、玲奈や美咲さん、大雅、サニア、フィリア、いろんな人と繋がった。
手を取ってもらったから、ここまで来られた。
「コーイチ」
ルナが隣に立つ。
「今度は、こっちが取る」
「そうだな」
子供に食事を配る玲奈。
怪我人を見る美咲さん。
新しい護衛仕事の話をまとめる大雅。
ぶつぶつ言いながら術具を直すフィリア。
どれも派手じゃない。
でも、こういう積み重ねの方がたぶん世界を変える。
無職の旗は、戦うためだけの旗じゃなくなっていた。
行き場のない者が、誰かと手を取るための旗へ。




