第96話 王にならない理由
王都から正式な使者が来たのは、その一ヶ月後だった。
内容は予想外で、でもどこかで来ると思っていた話でもある。
「……王都再建協議会の代表就任、だと?」
俺は文書を見て顔をしかめる。
「要するに、“あなたが中心になってください”ってことね」
フィリアが呆れたように言う。
王族の権威は大きく傷ついた。
宰相派も崩れた。
その中で、王国の禁術を止め、王都崩壊時に民を救った俺たちは、嫌でも象徴になっていたらしい。
「先輩、もしかして王になるやつです?」
玲奈が半分面白がるように聞く。
「ならない」
俺は即答した。
大雅が笑う。
「早っ」
「迷う理由がない」
もちろん、責任から逃げたいわけじゃない。
でも、俺が王になる筋書きだけは違う。
「俺は王国を救うために戦ったんじゃない」
文書を机に置いて言う。
「王国の嘘を止めて、壊れたものを戻したかっただけだ」
「でも、求められてる」
美咲さんが静かに言う。
「分かってる。でも、俺が王になったら結局また“誰か一人の理屈で世界を回す”話になる」
俺は首を振る。
「そういうの、もううんざりだ」
ルナがこくりと頷いた。
「コーイチ、王っぽくない」
「だろ」
「うん。無職っぽい」
「褒めてないな?」
でも、その通りだった。
俺は王にならない。
上に立って支配するためにここまで来たわけじゃない。
必要なのは、誰かが全部を握ることじゃなく、勝手に握られない仕組みを残すことだ。
「断る」
俺ははっきり言った。
「協力はする。でも王にはならない」
それが、俺なりの答えだった。




