第95話 戦後処理
終わった後に来るのは、いつだって地味で面倒な現実だった。
「書類が多い……」
玲奈が机に突っ伏す。
「戦後処理ってそういうものよ」
フィリアが平然と言う。
「むしろここからが本番」
王国は諸国へ正式な謝罪と説明を出すことになった。
宰相派の失脚、禁術施設の全面調査、被害者救済の枠組みづくり。
どれも一朝一夕には終わらない。
アストラでも、無職の旗に集まる仕事はむしろ増えた。
保護対象の移送。
証言の仲介。
壊れた商路の再編。
獣人や孤児の受け入れ先調整。
「戦いより忙しくないか?」
大雅が本気で嫌そうな顔をする。
「お前、こういうの苦手そうだもんな」
俺が言うと、
「剣で解決できるなら得意なんだけどな……」
と返ってきた。
少しだけ笑う。
美咲さんは診療と支援の中心に立ち、
玲奈は伝令と護衛を兼ね、
ルナは保護対象の見張りや案内を自然にこなしていた。
俺は俺で、各地の術的不調の確認や、フィリアの補助に回ることが増えた。
「もう完全に何でも屋ね」
美咲さんが言う。
「無職だからな」
俺が返すと、玲奈が吹き出す。
戦後処理。
地味で、面倒で、でも必要なこと。
王国を暴いて終わりじゃない。
その先に残ったものをどう繋ぐかまでやって、ようやく意味がある。
そういう意味では、今の仕事は案外嫌いじゃなかった。




