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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第10章 無職は王にならない

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第90話 職業の海

 王都を離れた後、俺たちは一度アストラへ戻ることになった。


 王国は崩れきってはいないが、少なくとも今すぐこちらへ追撃をかける余裕はない。

 諸国対応、王都復旧、内部責任追及、それだけで手一杯のはずだ。


 帰路の途中、俺は妙な感覚に襲われていた。


 世界の見え方が、少し変わっている。


 通り過ぎる兵士。

 荷を引く商人。

 道端で祈る老婆。


 その一人一人から、以前よりずっと濃く“職業の気配”が見える気がする。


「……海みたいだな」

 思わず漏らす。


「何が?」

 玲奈が聞く。


「職業」

 俺は遠くを見る。

「前は断片だった。でも今は、人の中にそれぞれの役割が流れてる感じがする」


 美咲さんが少し目を細めた。


「中枢に触れた影響?」

「たぶん」


 職業は、この世界の基盤なんだろう。

 剣士も、聖女も、商人も、農民も。

 全部が小さな流れになって、巨大な海みたいに世界を満たしている。


 俺はその外にいると思っていた。


 でも違う。


 空位の器は、その海の外にあるんじゃない。

 海そのものを別の角度から受け止める器なんだ。


「気持ち悪い?」

 ルナが聞く。


「少し」

 俺は正直に言う。

「でも、嫌じゃない」


 大雅が歩きながら笑う。


「相沢、どんどん人間やめてんな」

「お前に言われたくない」

「剣聖だしな、俺」

「それを言うなら俺も無職だ」

「説得力がすごいな」


 少しだけ笑いが起きる。


 王国との戦いは、一つの決着を見た。

 でも俺自身の変化は、まだ終わっていない。


 職業の海。

 その広がりを感じながら、俺はこれから先に待つものを思う。


 壊れた理をどうするのか。

 王国の次に、世界そのものとどう向き合うのか。


 たぶん、そこからが本当の意味での終盤なんだろう。

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