第87話 王族の罪
暴走が収まり、王都全体の崩落も次第に鎮まっていく。
だが、それで全部終わるわけじゃない。
王城上層ではすでに混乱が広がり、兵たちは命令系統を失い始めていた。
「今なら行ける」
美咲さんが言う。
「王族に直接、責任を認めさせるなら」
「やるのか?」
大雅が聞く。
「やる」
俺は即答した。
「ここまで来て、全部バルディスか神崎の独断でしたで終わらせるわけにはいかない」
王国の禁術は、宰相だけじゃ回らない。
召喚中枢を王城地下に置き、国家事業として動かしていた以上、王族が無関係なはずがない。
玉座の間へ向かうと、そこには王太子と重臣数名が残っていた。
以前、美咲さんが昼餐に呼ばれた時の穏やかな顔はもうない。
「……貴様ら」
王太子の声が震える。
「何をした」
「そっちが何をしてたか、聞きに来たんだよ」
俺が返す。
資料を投げる。
召喚記録、適合試験、精神補正、第二召喚計画。
その場の誰もが顔色を失った。
「知らぬ」
老臣の一人が言い張る。
「それは宰相の独断――」
「無理があるだろ」
俺は冷たく言った。
「王城の地下にあれだけの設備を置いて、王族が知らないわけない」
沈黙。
それが答えだった。
美咲さんが前へ出る。
「あなたたちは、私たちを神託だの救国だの言って迎え入れた」
「それは……国のためだ」
王太子が苦しげに言う。
「そう」
美咲さんの声は静かだった。
「でもその“国のため”で、何人壊したの?」
玲奈も続ける。
「私たちだけじゃない。廃鉱区の人たちも、消えた子供たちも、全部ですよ」
王太子は何も言えない。
責任を取る気がないわけじゃないのかもしれない。
でも、それで許される段階はとっくに過ぎている。
「王族の罪だ」
俺ははっきり言った。
「宰相だけでも、神崎だけでもない。王国そのものの罪だ」
その言葉は、玉座の間に重く落ちた。




