第86話 決着
中枢核との接続は限界に近かった。
流れ込んでくる情報は多すぎる。
界外の圧は強すぎる。
空位の器が受け止めているのか、むしろ裂けているのかすら分からない。
「コーイチ!」
ルナの声が遠く聞こえる。
でも、やることは見えていた。
王国の召喚術は、世界の外へ穴を開けた。
なら閉じるには、その接続座標を切らなきゃいけない。
人を呼ぶための道じゃない。
“役割を引きずり込むための座”そのものを空に戻す。
「……空位に、返す」
自分でも何を言ってるのか曖昧だった。
でも感覚としては正しかった。
俺は中枢に流れ込んでいる職業定着の理屈を、逆にほどいていく。
固定を外す。
接続を切る。
執着を空へ返す。
空位の器が、そこに応じる。
器は奪わない。
器は受け入れ、戻す。
最初からそういうものだったのかもしれない。
裂け目が軋む。
上空で白黒混じりの光が収束し始める。
「閉じてる……!」
玲奈の叫び。
だが同時に、反動も来た。
「っ、ぁ……!」
全身が焼けるみたいに痛い。
器の容量だとか限界だとか、そんな言葉がどうでもよくなるくらい、全部がきつい。
「相沢さん!」
美咲さんの光が背中に流れ込む。
「支える! だから離さないで!」
ルナも、大雅も、玲奈も、誰も止まらない。
前を守り、周囲を止め、俺が落ちないように支える。
「……終われぇぇっ!」
最後に、核の最深部へ意識を差し込んだ。
ばきん、と世界のどこかで音がした気がした。
次の瞬間、上空の裂け目が一気に縮む。
白い閃光。
衝撃。
沈黙。
気づけば、王城下層から異様な圧は消えていた。
「……閉じた?」
玲奈が呟く。
「たぶん、な」
大雅が息を切らしながら言う。
俺はその場に崩れ落ちた。
中枢暴走、停止。
界外接続、遮断。
第二召喚計画、中断。
決着だった。




