第83話 支える手
「一人でやる気でしょう」
美咲さんがはっきり言った。
俺は少し黙ってから、頷くしかなかった。
「一番近づけるのは俺だ」
「でも、一人でやる必要はない」
玲奈がすぐ返す。
「いや、危険が」
「危険なのは分かってます!」
珍しく食い気味だった。
「分かってるけど、だからって全部先輩一人に背負わせるのは違うでしょう」
大雅も腕を組んだまま低く言う。
「相沢、お前の悪い癖だな」
「何が」
「自分が一番適任だと思った瞬間、勝手に全部引き取ろうとする」
ぐうの音も出ない。
「……そんなつもりは」
「ある」
ルナが即答した。
「いつもある」
ひどい。だが否定しきれない。
美咲さんが一歩近づく。
「あなたが中心なのは事実。でも、中心が一人で全部やる必要はないわ」
「支えるってことですね」
玲奈が続ける。
「私たちはそのためにいるんです」
その言葉が、妙に胸に沁みた。
追放された時は一人だった。
銀貨十枚で放り出されて、誰もいない異世界で、ただ生き延びることしか考えられなかった。
でも今は違う。
「……分かった」
俺は息を吐く。
「じゃあ、支えてくれ」
玲奈が少しだけ笑う。
「やっと言いましたね」
「うるさい」
「でも嬉しいです」
「そうかよ」
ルナは小さく頷いた。
「うん。支える」
短い言葉。
大雅は剣を肩に担ぎ直す。
「前は俺が切り開く。お前は余計な敵に集中すんな」
「助かる」
美咲さんは、静かに俺の手を取った。
「あなたが器なら、私はその器が壊れないように支える」
「美咲さん……」
「聖導姫の力、今度こそそう使うわ」
王都の空はまだ歪んだままだ。
時間はない。
それでも、ほんの少しだけ心が軽くなった。
支える手がある。
その事実は、今の俺にとって何より大きかった。




