第78話 暴かれた禁忌
神崎が崩れたことで、召喚中枢の制御卓は完全にこちらの手に入った。
「記録、全部抜けます!」
玲奈が水晶媒体を抱えながら叫ぶ。
「こっちも! 第二召喚対象の選定記録!」
俺も机を漁る。
そこにあったのは、想像以上にひどい内容だった。
対象年齢。
適合率。
従属性予測。
精神耐久。
職業候補との相性。
人間の履歴書じゃない。
家畜の選別表だ。
「……最低」
玲奈の声が震える。
さらに、別の記録にはこうあった。
外界接続による職業座補完試験
界外存在の流入可能性に留意
代替素材として現地人員の使用を許可
「代替素材……」
美咲さんが青ざめる。
「人を使って、穴を埋めるつもりだったの」
フィリアの推測は当たっていた。
第二召喚計画は単なる“二度目の異世界召喚”じゃない。
世界の外から無理やり接続を開き、その代償を現地の人間で支払おうとしている。
禁忌だ。
いや、禁忌なんて言葉でも軽い。
「これ、国がやっていいことじゃない」
俺が言う。
「最初からやってよくない」
ルナが短く返す。
その通りだ。
奥でバルディスがなお叫ぶ。
「王国を守るためだ!」
「守れてねえよ!」
思わず俺も怒鳴り返した。
「こんなの、王国ごと壊すやり方だろうが!」
その時だった。
中枢の中心陣が低く唸り始めた。
「え?」
玲奈が振り向く。
「まずい」
フィリアがここにいたらたぶんそう言っただろう、と直感で分かる。
「記録移送と術式崩壊が連動してる……!」
王国は最悪の場合、中枢そのものを暴走させる設計にしていたのだ。
証拠が外へ出るなら、全部ごと消す気だった。
暴かれた禁忌は、最後に牙を剥く。




