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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第8章 王都潜入

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第70話 精霊弓姫の矢

 美咲さんが正面で王都の視線を集めている間、俺たちは王城外周の裏通路へ入った。


 だが当然、完全に無警戒なわけじゃない。


「上、二人」

 ルナが囁く。


 見張り台だ。


 玲奈は無言で弓を構えた。


 王都の空気の中で、その横顔は以前よりずっと鋭く見えた。


「いけるか?」

 俺が小さく聞く。


「いけます」


 短い返事。


 次の瞬間、風を裂く音が二つ連なった。


 一射目は見張りの手元の警鐘を弾き飛ばし、二射目はもう一人の足元へ突き立つ。悲鳴は上がるが、警報にはならない。


「すご」

 思わず漏れる。


「今さらです?」

 玲奈は少しだけ笑った。

「私、王国で散々訓練されたので」


 皮肉な話だった。


 王国が育てた精霊弓姫の力が、今は王国の裏をかくために使われている。


 さらに通路奥から巡回兵が来る。


 玲奈は今度は三連射。


 石壁、灯り、足元。


 直接人を射抜かず、動線だけを完璧に奪う。


「うまいな」

 俺が言うと、玲奈は矢を番えたまま答えた。


「私、もう“王国の弓”じゃないですから」


 その言葉が、妙に強かった。


 ルナが前へ出て巡回兵を無力化する。


 俺も後ろへ回り込み、一人の腕に触れて通行鍵を奪う。


 王城外周の裏門が開く。


「行ける」

 俺が言う。


 その時、玲奈が最後にもう一本放った。


 高く、高く、城壁の上へ。


 矢は旗竿の縄を切り、王国旗を半ば崩れさせた。


 ばさり、と布が落ちる。


「玲奈!?」

 俺が思わず振り向く。


「景気づけです」

 本人は真顔だった。


 でもその目は、少しだけ笑っていた。


 精霊弓姫の矢。


 かつて王国に称えられたその力は、今や王国の象徴を切り裂くために使われている。


 王都潜入は、もう後戻りできないところまで来ていた。

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