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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第8章 王都潜入

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第69話 聖女の帰還

 王都潜入の二日目。


 俺たちは次の一手として、大胆すぎる案を実行に移した。


「本当にやるのね」

 美咲さんが白い外套を羽織りながら言う。


「やるしかない」

 俺は答える。

「王城下層へ入るには、正面の権威を一度使う」


 それが彼女だった。


 朝倉美咲。


 王国が“聖導姫”として抱え込み、今もなお被害者として扱おうとしている存在。


 その本人が、帰還したように見せる。


「危険です」

 玲奈が言う。

「かなり」

「分かってる」

 美咲さんは静かに頷く。

「でも、ここは私の役目よ」


 王都の一角、神殿区近く。


 俺たちは影に隠れ、美咲さんだけが表へ出る。


 白い外套を脱げば、その姿は王都の誰もが知る“聖女候補”そのものだった。


 通りの人間がざわつく。


「聖導姫様……?」

「戻られたのか?」

「王国へ……?」


 兵も当然気づく。


 だがその反応は警戒より先に動揺だった。


「朝倉殿!?」

 神殿騎士の一人が駆け寄る。

「ご無事だったのですか」

「ええ」

 美咲さんは静かに答える。

「陛下へ直接、お話があります」


 声に迷いがない。


 王都にいた頃の“聖導姫”の顔だ。


 でも俺には分かる。


 あれは演技だけじゃない。


 彼女自身が、この場で自分の役目を引き受けている。


「私は戻ってきました」

 彼女は言う。

「王国が、何をしていたのか確かめるために」


 もちろん、その本心までは兵には伝わらない。


 彼らには“聖女の帰還”にしか見えない。


 それでいい。


 混乱が広がる。


 神殿騎士が王城側へ急報を走らせる。


 その隙に、裏手の導線が緩む。


「今だ」

 俺が低く言う。


 ルナと玲奈が即座に動いた。


 美咲さんが正面で作った衝撃は、王都全体の目をそちらへ向けさせる。


 その一瞬を切り取るための、聖女の帰還だった。

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