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職業なしの俺、実は“触れるだけで全職業を奪える”最強のバグ持ちでした ~ 召喚された王国に見捨てられたので、自由に生きてたら世界の勢力図が変わってた~  作者: 天音天成
第8章 王都潜入

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第63話 偽りの勇者譚

 王国の反撃は、予想通り正面から来た。


 ただし剣でも兵でもなく、“物語”として。


「……うわ、最悪」

 玲奈が冊子を読んで顔をしかめる。


 アストラにまで流れてきた王国発行の広報冊子には、こう書かれていた。


 異世界より召喚された四人の勇者候補。


 王国に救われ、災厄と戦う英雄たち。


 その中でただ一人、恩義を忘れて裏切った危険な異端者――相沢恒一。


「俺だけ悪役かよ」

「ええ。しかもかなり丁寧に」

 美咲さんが苦い顔をする。


 冊子には俺のことが、“勇者候補に嫉妬し、禁術へ手を染め、聖女候補二名を脅迫して連れ去った人物”として描かれていた。


 さらに、大雅は王国を守る剣聖、神崎は知略の賢王参謀として持ち上げられている。


「完全に勇者譚だな」

 俺が吐き捨てるように言う。

「しかも偽物の」


 王国は理解しているのだ。


 証拠だけでは人は動かない。


 分かりやすい物語の方が広まりやすい。


「召喚された勇者たちが国を救う」

 フィリアが淡々と読む。

「確かに、一般受けはいいわね。事実かどうかは別として」


 サニアは鼻で笑った。


「商売でも同じさ。真実より、分かりやすい看板の方が売れる」


 腹が立つ。


 でも、それだけじゃない。


 この冊子は、美咲さんと玲奈まで“王国に囚われた被害者”として描いていた。


「ほんと、勝手ですね」

 玲奈の声が低い。

「自分たちで囲って使ってたくせに」


「……でも、だから逆に使えるかもしれない」

 美咲さんが静かに言う。


「どういうことですか」

「王国はまだ、“私たちは王国側の人間だ”って建前を捨てていない。ならその建前を壊せば、向こうの物語は崩れる」


 つまり、本人の口から否定する。


 それが一番効く。


 俺は少し考え、頷いた。


「証言の場を作るか」

「ええ」

 美咲さんが答える。

「王国が作った偽りの勇者譚を、当事者の言葉で否定する」


 玲奈も強く頷く。


「やります。今度は逃げません」


 王国が物語を使うなら、こっちも真実の言葉を使うしかない。


 勇者譚なんて綺麗な話じゃない。


 召喚は拉致で、職業は管理で、俺たちはただの駒だった。


 それを暴く時が来ていた。

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