第60話 反撃の狼煙
廃鉱区から奪った証拠、救出した人々の証言、旧神殿の記録、召喚改造式の断片。
それらを並べた時、ようやく見えた。
王国の禁術はもう、隠しきれる段階を過ぎている。
「出すなら今ね」
フィリアが言う。
「これ以上寝かせると、向こうが先に手を打つ」
サニアも同意した。
「商会連合、ギルド連盟、学術評議会、亜人居留区。全部に別ルートで流すべきだよ。どこか一つだと潰される」
「証言者の保護は私がやる」
美咲さんが言う。
「玲奈は?」
「私は公開用の記録整理と、必要なら現場証言に立ちます」
玲奈は迷いなく答えた。
ルナは短く言う。
「ルナは守る」
それで十分だ。
俺は机の中央に置かれた資料束を見た。
最初は銀貨十枚で追い出された無職だった。
それが今、王国の禁術を暴く証拠の中心に立っている。
皮肉だ。だが悪くない。
「やるか」
俺が言うと、全員の視線が集まった。
「これはまだ勝ちじゃない。でも、王国に好き勝手やらせないための一手にはなる」
「ええ」
「はい」
「うん」
倉庫の外では、無職の旗に集まった連中が慌ただしく動き始めている。伝令、輸送、護衛、証言整理。小さな拠点全体が一つの方向へ動き出していた。
「コーイチ」
ルナが俺を見る。
「これ、始まり?」
「……ああ」
俺は頷く。
「反撃の始まりだ」
王国は俺を無能と呼んだ。
職業なしと笑い、切り捨て、危険物として追った。
なら今度は、その王国自身が積み上げた嘘を崩してやる。
無職の旗が翻る。
その最初の狼煙が、静かに、だが確かに上がった。




